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遺産相続の不動産登記を司法書士に頼まないで自分でする方法

土地や建物を所有したときには、通常は法務局に登記をします。
通常は、というのは、登記をしなくても咎められることは無いので、登記しないままの物件が多数あるからです。
たとえば、ちょっと大きな物置、ガレージなどでも、土台・屋根・壁を有していれば不動産です。
順法主義の方は登記するでしょうが、登記には登録免許税が必要なので登記しない方も居ます。

ただ、未登記の不動産を探し回っている市町村の課税課に見つかれば直ちに巻尺を持った担当者がやってきて評価額を決め、固定資産税納付書が送られてきます。
登記した場合は、地方税法の決まりによって、法務局から市町村に評価額と所有者が通知され、固定資産税納付書が送られてきます。

「登記」の意味

登記申請人がその不動産の所有者であることを公的に認めてもらうことの一言に尽きます。
ですから、法的には未登記不動産は問題ですが、所有者であることを公的に認めてもらわなくても不都合が無ければ登記する必要も無いのです。
未登記不動産の所有権はそれを現にトラブル無く占有している者にあり、固定資産税を長期間払っている者になります。未登記建物を壊して更地にした場合は解体業者に証明書を書いてもらって市町村の課税課に出せば現地確認の上で課税対象から削除されます。 ただし、売るときや抵当権を設定するときは所有権トラブルなどを避けるために登記してあることが求められます

相続登記以外の不動産登記は司法書士に頼むのが安全

登記がその物件の所有者であることを公的に認めるものなら登記の仕方も簡単で法律に無知な素人でも簡単に出来ます。
ただし、親子間の売買は問題が起きることは少ないですが、第三者への売買や抵当権の設定の場合は司法書士に登記申請を依頼した方がよいです。 たとえば、購入した土地の登記が受理される前に抵当権が設定されたり、直前に他の人に売られて登記が受理されずにお金だけ取られてしまいます。 このような場合は悪意があって売買前に抵当権を設定したり二重売買しているので、抵当権の抹消や購入代金の取り戻しは難しくなります。 不動産登記に司法書士を挟めば万が一何かあっても責任は司法書士になります。もちろん、司法書士は自らの責任にならないように細心の注意を払います。

不動産登記の要点

不動産登記をするには、要するに、 登記によってその物件に持っている所有権を失う者或いは持っている権利を制限される者が不動産の所有者であることと、その所有者が売買などに同意した証拠を求められます。
  • 当該物件の所有であることを公的に認める証:登記済み証(または、法務局から通知された番号)
  • 戸籍の全部事項証明(または一部事項証明書)
  • 戸籍入りの住民票
  • 登記されている住所と現住所が異なるときは移転が判るもの(戸籍の附表等)
  • その不動産の売買契約書や贈与契約書に押した実印の印鑑証明書
「登記原因」は、相続や売買、贈与になります。

他方、その不動産を買ったり貰う方は簡単で、印鑑証明の無い三文判と住民票ぐらいしか必要ありません。

相続での所有者変更登記申請

所有者を相続人に変更する登記では、
  • 登記済み証(または、法務局から通知された番号)や契約書は必要ありませんが、正当な相続人である証が必要になります。
    具体的には、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍(相続人を特定するために必要)
  • 遺産分割協議書(相続の権利を有する者全員の署名、実印が必要)
  • 相続の権利を有する者全員の戸籍と印鑑登録証明書(遺産分割協議書などの正当性の担保に必要)
  • その不動産を相続する者全員の本籍入り住民票
  • 被相続人の住民票(除票)
  • その不動産の所有者(被相続人)の住所が異なるときは戸籍の附表
等が必要です。

所有者として登記されている住所と最後の住所が異なるときは住所の変遷を記録した戸籍の附表や除票(前の住所だけ記載してある)を添付する訳ですが、 これらは5年間を過ぎると処分されてしまうので使えない場合があります。 このときは、登記されている住所に居住していないことを証する不在証明(市町村で発行)と申述書を添付します。

上記の書類ぐらいは取り寄せ、或いは取り寄せる覚悟をし、ネット上で登記申請書の雛形を探して書き換えます。
申請年月日と申請人の住所氏名欄は空白にしてコンビニでA4紙にプリントします(コンビニでプリントした方が時間が経っても滲まない)
住所氏名は手書きにすることによって他の書類との整合性をとって、申請書が真であることを担保します。
(登記申請書は全て黒ボールペンを使っての手書きでもよいのです)

不動産の登記申請は、相続で登記では土地や家屋などが幾つあっても1つの申請書に複数の物件を書いて申請できます。
相続で登記する不動産が多数あり、A4紙1枚に書ききれないときは複数の紙に書き、綴じて、申請に使う印鑑で割り印します。
売買による登記申請では、原則、不動産毎に登記申請をします。

相続の登記では、遺産分割協議書、戸籍、住民票、不動産の評価証明書、印鑑登録証明書は原本を返して貰えます。
返してもらいたい書類のコピーを取り、そのコピーの余白部分に「原本に相違ありません」と住所氏名を書き、申請書に押した印鑑を押します。
戸籍だけは「相続相関図(法務局のHPに登記申請書と相続相関図の見本があるので書き換える)」を提出すればコピーが無くても返して貰えます。
返してもらいたい原本が何枚もあるときは、コピーを綴じて、最初の1枚目に「原本に相違ありません」と住所氏名を書き、申請書に押した印鑑を押し、他のコピーとの間には割り印をすれば足ります。

登記申請書類の割り印の方法

割り印の方法の例、綴じてから一部を折り返して、下図のように折り目に印を押します。
申請書に押す印鑑は何でもよいのですが、割り印をする必要があるなら大きな印鑑を使った方がよいです
登記 割り印の方法

登記申請書を提出するときは、申請書を1枚目にして添付書類を揃えて左端をホッチキスなどで綴じます(申請書がトップページにする以外は順序に決まりはありませんが、見易いように並べてください)
相続登記などで原本還付してもらいたい書類があるときは、登記申請書はコピーの方のトップにして綴じ、返してもらいたい原本はまとめて綴じて提出します。

自信がある方は書類が揃ったら提出しますが、不安な方や判らない事項がある方は登記する不動産がある登記所に電話して、「登記の相談」を予約します。
申請書類などに不備があれば教えてくれます。

被相続人の生まれてから死亡までの戸籍は、被相続人の直系親族なら入手も簡単で、先ず、被相続人の最後の本籍地の役所の市民課の窓口に行き、 「相続のために生まれてから死亡するまでの戸籍が必要」と申請すれば、その役所にある被相続人の全ての戸籍を出してくれます。
その上、前の本籍地を教えてくれるので、取った戸籍を全て持って前の本籍地の役所に行って同じ事を繰り返します。
戸籍の請求人が正当な権利を持っているか確かめられるので、運転免許などの身分証明になるものと、取得した戸籍は全て持って行きます。
全ての戸籍を持参するのは、役所の担当者が被相続人の戸籍を探すのにも役立つこともあります。

遺産分割協議書などを作成する前に、登記事項証明書を取り寄せて登記されている事を調べ、分割協議書には証明書に書かれているように書いて不動産を特定します。
登記済み権利書でも不動産についての事項は書かれていますが、登記済み権利書が古い場合は住所などの表示が異なっている場合があります。
また、登記済みと思っていても未登記の事もありますから、必ず、始めに、登記事項証明書を取り寄せてください
登記事項証明書はインターネットでも取り寄せられますが、登記所の窓口に出向けば、住所が多少異なっていても見つけてもらえます。手数料はネットで取り寄せた方が安いです。

登記申請には登録免許税を納める必要がある

それから、行政による住所表示変更などを除いて、どんな登記にも登録免許税が必要なので、課税評価証明書を添付します(市町村役場の課税課で当該不動産の課税評価額証明書を取る)
登録免許税は、1枚の登記申請書で登記する不動産の評価額を足して、1千円未満を切り捨て、その額に登録免許税の税率を掛け、100円未満を切り捨てます。
登録免許税は、相続は1000分の4、売買と贈与は1000分の20、居住用の住宅を新規に登記する場合はもっと低いので「国税庁の登録免許税」を調べてください。
登録免許税は、税額分の「収入印紙」を登記申請書の空白部分に貼って申請します。(登記申請書を作成するときに、収入印紙を貼る余白を考えておくこと)

登録免許税の計算が不安な方は、登記所に登記申請相談の予約をして、相談時に申請書類の不備を確認してもらうときに登録免許税に付いても確かめてください。