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糖質ダイエットは飢餓状態?

2016年始め、「糖質ダイエット」なるダイエット法があるのを始めて知りました。
米や麦、芋など、糖質の摂取を制限する方法らしいですね。

糖質は体内で分解されてグルコース(ブドウ糖)となって血流に乗ってあらゆる細胞に入り、インシュリンの力を借りてエネルギーとして使われます。
摂取するエネルギーより消費するエネルギーが少なければ、余ったブドウ糖は肝臓で脂肪に変えられ、食べ物を得られなくなったときのために蓄えられます。
しばしば言われる事ですが、人類の100万年以上の歴史の中で飽食の年月は、無いか多くても数十年間なので、人間の体は飢餓に備えて高効率でブドウ糖を脂肪に変えます。

脂肪太りの方は、食事制限や運動をして痩せようとします。
ところが、運動をするときには真っ先に血流中のブドウ糖が使われるので血中のブドウ糖濃度が下がり、その結果、脳が食事を要求します。
こうして、ダイエットは挫折します。
減らしたい脂肪が望んだように減らないのは、上述したように脂肪が食物を得られないときの糧になる仕組みを持っているからです。
運動する余裕があるなら糖質を探して来て食べろ、ということでしょう

米飯やパン、芋などを食べないで甘い菓子(砂糖を多量に含んだもの)を食べた場合は、砂糖だけに限って話を進めれば、砂糖はグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)に分解されます。
グルコースは血流に乗って各部の細胞で消費され、残った分は脂肪に変えられて貯蔵されるのは糖質を摂ったときと同じです。

問題は、フルクトース(果糖)です。
フルクトースを取り入れることが出来る細胞は肝臓だけです。
フルクトースは肝臓によってグルコースに変えられると言われていますが、実験によれば多くは脂肪に変えられています。
ですから、砂糖の摂取は脂肪を増やすことになります。
その上、砂糖を分解するときに出る消化酵素スクラーゼは、αデキストリン(ブドウ糖6個が環状に繋がったもので、オリゴ糖の一種)も分解するので、食物中に含まれるデキストリン、ダイエットや便秘解消でデキストリンを摂取していればこれも砂糖を分解するときにブドウ糖に分解してしまいます。

食物から脂肪を摂った場合、胆汁によって乳化し、消化酵素リパーゼによって、モノグリセリド(脂肪酸を1つ付けたグリセロール)と脂肪酸2つ、グリセロールに分解されます。

*脂肪はグリセロール(旧名グリセリン)に脂肪酸が3つ付いたもの

グリセロール(グリセリン)は化粧水を手作りするときに使われるほど水に溶けるのでそのまま吸収されますが、 モノグリセリドと脂肪酸は分極(電気的に偏っている)ために淡白質と結合させて「カイロミクロン」というリポタンパクにし、 リンパ管から吸収されて全身を廻ります。
小さな脂肪酸(炭素の繋がりが10以下)は肝臓に運ばれますが、摂取した脂肪の殆どはリンパ管に吸収されます。

血流中の脂肪は動脈硬化の原因になるとして目の敵にされますが、脂肪は細胞膜の主要成分です。
細胞膜は親水性部分と疎水性部分を組み合わせて作られていて、細胞の形を維持するだけでなく、選択透過性を持つ重要なものです。
また、病原菌が侵入したときに病原菌を食べて排除する白血球を集めるのに必要な物質(プロスタグランジンやロイコトリエン)も、この細胞膜によって作られます。

米飯やパン、甘い物を制限した場合は、血中濃度が下がるので、ブドウ糖を唯一のエネルギー源にしている脳は機能低下に陥り、 自覚症状として頭がボーっとすることになります。
こうなると、通常は甘い物が欲しくなったり、空腹感を覚えるので何か食べますが、何も食べないで居ると、 生命の危機になるので体内に蓄えていた脂肪をエネルギーに変えようとします。

脂肪は脂肪酸に変えられ、この脂肪酸の酸化を繰り返し(β代謝)て、アセチルCoAを生成し、 これをエネルギーを作り出すクエン酸回路に送ります。

このように、摂取した脂肪からエネルギーを取り出すには糖質からより時間が掛かります。
平時の運動に糖質から得たグルコース(ブドウ糖)を使うのは生物としての進化なのでしょう。

タンパク質を摂取した場合、タンパク質を分解したアミノ酸は新たなタンパク質の合成に使われます
しかし、飢餓状態になったときには筋肉を作っているタンパク質を分解してエネルギーを得るので非常に困ったことになります

糖質ダイエットは、脂肪やタンパク質を口に入れているので空腹感を覚えずに居ながら、直ぐにエネルギーに変えられる糖質の摂取を制限することによって、 半ば飢餓状態にし、生きるために必要という名目で脂肪を分解させているということなのでしょう。

普通体より痩せるダイエット法に健康的なものは無いと思いますが、 糖質ダイエットは生物としての人類が獲得した、効率の良いエネルギー摂取法を制限するものなので、より注意深くする必要があると思います。
余った脂肪を分解している内は良いですが、細胞の維持に必要な脂肪までも使うようになると病気を引き起こすかも知れませんし、 また、心臓が筋肉の塊であることを考えると、心臓に持病がある方も過度な糖質制限は問題があるのではないでしょうか

糖質ダイエットでは無いですが、食が極端に細くなってしまった高齢者、特に脂肪が少ない人は糖質が得られなくなると筋肉の分解にまで進んで歩行困難になる可能性があるでしょう。
元気な高齢者は、通常は高齢者が口にしたがらない肉類をたくさん食べていると報道されますが、肉類が食べられるということは糖質もたくさん食べられるでしょうから、 肉類を食べれば元気に過ごせるのでは無く、肉類を食べられるほど消化器が若いということで、脂肪やタンパク質の摂取は大事ですが、 根本は糖質から日常の運動に使うエネルギーを得ているということでは、と思っています。
食が細くなっても消化剤の助けを借りながらでも糖質を摂り、足らなければブドウ糖の経口投与もよいと思います



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