身近な自然と科学
  1. 病気の豆知識
  2. 薬が効くしくみ

糖尿病治療薬が効くしくみ

糖尿病に対して薬が効く理由です。
口から摂取した食べ物に含まれる糖質はぶどう糖に分解された後、小腸から吸収されます。
食事直後など、血液中のブドウ糖濃度が高くなりすぎると、脳下垂体からインシュリン(またはインスリン:insulin)と呼ばれるホルモンを産出するように命令する刺激ホルモンが出されます。
この刺激ホルモンは視床下部からの刺激ホルモン放出ホルモンによって制御されています。
ホルモンとは、細胞に命令を与える伝達物質で、細胞の特定の受容体(レセプター)に着いて細胞に特定の機能をさせるものです。
このインシュリンを分泌させる刺激ホルモンは膵臓内にあるランゲルハンス島(islet of Langerhans)のβ細胞を刺激してインシュリンを分泌させます。
インシュリンは血液に乗って各細胞の特定の受容体に着きます。
受容体にインシュリンが着いた細胞は、ブドウ糖輸送担体が細胞質から細胞表面に移動してブドウ糖を細胞内に取り入れ、グリコーゲン(またはグリコゲン:glycogen)として細胞内に蓄えます。
グリコーゲンはブドウ糖が結合(重合)して高分子になったもので、主に肝臓と筋肉に蓄えられます。
この結果、血液中の糖濃度が下がります。
ランゲルハンス島(islet of Langerhans)と呼ばれるのは、細胞の集まりが膵臓内に島状に散らばっているからです。
 
血液中の糖濃度が下がりすぎると、ランゲルハンス島にあるα細胞が刺激を受けてグルカゴン(glucagon)と呼ばれるホルモンが分泌されます。
グルカゴンはインシュリンとは逆の作用を持ち、細胞内に蓄えられているグリコーゲンを分解してブドウ糖に変えて血液中に放出させ、血液中の糖濃度を上げます。
 
糖尿病には、インシュリンが全く生産できないインシュリン依存型と生産機能が低下している非依存型があります。
インシュリンが生産できない依存型糖尿病では人工的に作られたインシュリン製剤を注射するしか病状を改善する方法はありません。
インシュリン製剤には、瞬時に効果が出るもの、早く効果が出るもの、前者二つの中間時間のもの、持続するもの、混合してあるものがあります。
どのタイプを使うにしても血糖値を人為的に下げるものなので、血糖値が上がる時刻(食事など)を考慮して使う必要があります。
 
インシュリン生産機能が低下している非インシュリン依存型糖尿病では、先ず、運動療法や食事療法が行われます。
血液中のブドウ糖は筋肉内にグリコーゲンとして蓄えられていて、筋肉を動かすエネルギー源として使われるので、運動して筋肉内のグリコーゲンを消費させ、血液中の糖を筋肉内に取り込もうというのが運動療法です。
食事療法は、膵臓で生産されるインシュリン量で処理できる糖分だけ摂取しようというものです。
運動療法や食事療法で満足できる効果が得られないとき、ランゲルハンス島のβ細胞を直接刺激してインシュリンを分泌させる薬を服用します。
この経口糖尿病治療薬は食事前か食事後直ぐに服用します。
服用のタイミングや量を間違うと、血液中の糖濃度が下がりすぎて倒れてしまうので、糖濃度を直ぐに上げられる飴やブドウ糖などを持ち歩くのが安心です。
 
単独か、上記の治療法に併用して行われることがあるのが、抹消器官の細胞内への血液中の糖を取り入れを促進し、肝臓からは糖の放出を抑制するものです。
この作用を持った薬を
インシュリン抵抗性改善薬と呼んでいます。
他の治療法と併用したときには血糖値が下がりすぎることがあるので注意が必要です。
 
インシュリン生産機能が低下している非インシュリン依存型糖尿病では、食事療法と併用して、食物の糖質を単糖(ブドウ糖)に変える消化酵素の機能を抑制する
糖質吸収阻害薬を使うことがあります。
糖質吸収阻害薬は消化中に働くので、消化器官内で食物と一緒にあることが必要です。
 
糖尿病に特徴的な合併症である神経障害は、血糖値が高くなるとブドウ糖を還元してソルビトールという糖に変える酵素(アルドース還元酵素)が活性化されるためと考えられています。
神経細胞内にソルビトールが多量に蓄積されると、浸透圧が上がり、細胞内に水分が必要以上に入り込んで浮腫み、神経細胞の機能が障害を受けて痺れや痛みが発生します。
アルドース還元酵素阻害剤が糖尿病による痺れ・痛みの治療薬として使われます。

プライバシーポリシー

連絡先(fnas_web@yahoo.co.jp)