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液晶ディスプレイの修理(圧電トランス)

先ず、つまらない話から。
ある日、突然、液晶デディスプレィーに映る文字の右側に影が現れてしまいました。
パソコンが不具合を起こしたときには電源から切り離しておけば直ることがある(ノートパソコンの場合はバッテリーも外す)、という事を思い出し、一晩、ディスプレーの電源プラグをコンセントから抜いて置きました。
結果、直りました。
内部部品のコンデンサーが悪くなったか、埃などで回路の浮遊容量が増していたのでしょう。

この間まで使っていたBENQのディスプレイから煙が出ました。月に1度ぐらいの間隔で画面が真っ白になってしまい、 その度に内部のフラットケーブル周辺を撫でては使っていたものでした。
ディスプレイの画面が 真っ白になる原因は信号系が怪しいようです。この場合は、部品入手が難しい素人が直せるのは、 ケーブルのコネクター周りの半田浮きや基板の接触不良ぐらいのものです。
特に私の使っていたディスプレイは中古で2千円で購入したものですから、部品を調達するだけでも割に合わないものになってしまいます。
1年以上正常に映り、その後も半年以上、何とか映っていてくれたので良しとしました。そこで、このディスプレイの前に使っていた富士通の液晶ディスプレイを持ち出しました。
これも、中古で2千円で購入し、1年半程度は正常に映っていましたが、電源を入れてから数秒から数十分で画面が真っ黒になってしまいました。ライトで照らすとディスプレイに文字や画像が映っているのが判るので、液晶画面の後ろから照らしているバックライト関係がおかしいようです。
最近の液晶ディスプレイはバックライトにLEDを使っていますが、古い物は蛍光灯のような陰極管が使われています。この液晶ディスプレイも陰極管なので、画面が真っ黒になる原因は、陰極管を光らせるのに必要な高電圧を作るインバータ部と陰極管の破損や劣化があります。陰極管が切れているときには数十分間も再び点灯することはありませんし、 陰極管が劣化するときには画面が赤っぽくなりますから陰極管が故障原因ではないようです。

インバータ部の故障で画面が真っ黒になる症状はよくあるようで、Web上の修理体験では、インバータ回路に使われている電解コンデンサーの不良、 高電圧を発生させる昇圧用トランスの半田の浮きが多く、電解コンデンサーの交換、再半田付けで直ることが多いようでした。
下写真はディスプレイの裏蓋を外したところ。左側の細長い青い部分がインバータ回路です。 ところが、Web上の修理事例にあるような昇圧用トランスや大容量の電解コンデンサーがありません。あったのは昇圧用の圧電トランスでした。
ディスプレイの裏蓋を外したところ
インバータ回路にたった1個使われていた電解コンデンサーを見てみましたが、外見上は異常無しでした。 (電解コンデンサーの上が盛り上がっていたり、周囲の基板が液状のもので汚れていたら明らかな不良です)
外見では判らない不良もあるので、念のやめ手持ちのコンデンサーと交換し、コイル(下写真の丸い黒い物)の接続部分を始め、容易に半田が盛れる部分には再半田をしました。 この甲斐あってか、1時間以上機嫌よく映っていることが多くなりましたが、数秒で真っ暗になってしまうことがしばしばあり、八方塞になりました。
ところが、何回目かに弄った後に電源を入れると、画面が細かくチラツキ、ディスプレイから「ジー」という音が聞こえてきました。 部品を焼いたのかと半ば諦めながら筐体を開けましたが、焦げた後はありません。
筐体を開けたままパソコンと電源を繋ぐと、インバータ回路の一箇所(下写真の赤線で囲ったところ)で青い火花が持続的に出ていました。
圧電トランス
赤線で囲った所の上にある圧電トランス(棒状)と黒いリード線との間で放電が起きていました。
圧電トランスは、ある種のセラミック(圧電セラミック)が交流を機械的振動に変え、逆に、機械的振動を交流に変える作用を利用しています。 一次側では電流を圧電セラミックで機械的な振動に変え、二次側ではその機械的振動の共振を利用して圧電セラミックによって高電圧を得ています。 このため、圧電トランスは一次側の入力周波数によって昇圧比が異なります。
この液晶ディスプレイの圧電トランスは、5箇所、全てが黒い被覆 のリード線と繋がっていました。その内の1箇所がリード線が剥がれて放電していました。 リード線を元通りに昇圧トランスに接続すればバックライトが安定して点灯しそうなのですが、圧電トランスの電極はセラミックに特殊な処理をして付けてあるので、この電極が取れていては半田付けのしようがありません。仕方が無いので、芯を5mmほど出したシャープペンシルの先でリード線を露出部分に押し当てながら、その周囲からゴム系接着剤で固めました。
接着剤が固まってきたところでシャーペンの芯は折りました。
ドライバーで押さえる方が力は入りますが、接着剤がドライバーに付いてしまうので離すときにリード線が浮いてしまう惧れがあります。

これで駄目なら、と諦めて電源を入れると、途中で画面が黒くなることも無く故障は直りました。 圧電トランスは内部で機械的な振動をしているために、圧電トランス全体も振動します。 振動を抑えてしまうと昇圧しなくなるので、圧電トランスは他の部品のように基板上にしっかり固定されていません。 コイルを使った昇圧トランスも振動しやすいために接触不良が起きやすいですが、圧電トランスの場合には振動させているのですから接触不良が起きやすいはずです。 その上、半田付けでの修理が出来ないのは困ったものです。バックライトにLEDを使ったディスプレイは修理しやすいのでしょうか・・・