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アルミ缶とスチール缶のリサイクルの問題点

お茶や清涼飲料、ビールなどの飲み物は缶で売られることが多くなりました。それにつれて、リサイクルの対象もガラス瓶から缶の方が多くなっています。

アルミ缶とスチール缶の違い

どうして、アルミ缶とスチール缶があるのでしょうか?
どちらか片方にしてくれた方がリサイクルにも便利です。
アルミ缶が使われているのは、ビール、サイダーなどの炭酸飲料です。一方、スチール缶はお茶やジュースなどです。中身によって使い分けています。
ビールや炭酸飲料のように開けたら噴出すもの、缶の内圧が高いものがアルミ缶です。 アルミ缶は柔らかい金属ですし、0.1mmほどの薄いアルミ板で胴部分が作られ、内圧が高くないと簡単に潰れてしまうので、 お茶やジュースなどでは使えないのです。
スチール缶は0.2mmほど の鉄板で作られていて、内圧が低くても潰れることはありません
アルミ缶とスチール缶の、このような違いは缶の底を見ると明らかです。
お茶飲料の缶と炭酸飲料の缶の底の写真
左はスチールのお茶の缶、右は炭酸飲料のアルミ缶です。
スチール缶の底は平らですが、アルミ缶の底は窪んで、球体の一部のようになっています。 中から掛かる圧力を分散させ、その圧力が頑丈に作りやすい周囲に逃げるようにするためです。

効率が良いリサイクルはアルミ缶

缶をリサイクルする必要性はアルミ缶の方が顕著です。
アルミニウムは酸化アルミニウムが含まれているボーキサイトから精錬されますが、酸化アルミニウムから酸素を除くためには、酸化アルミニウムを溶かして直接電気分解するしかありません。
酸素はアルミニウムが大好きなので、酸化鉄から鉄をつくるときのように、酸素が鉄より好きな一酸化炭素などが使えないのです。
その上、酸化アルミニウムの融点は約2千度という高温なので高い技術と多くのエネルギーを必要とします。
このため、黄金より貴重な時代がありました。

1886年氷晶石(ヘキサフルオロアルミン酸ナトリウム)を溶かした中に酸化アルミニウムを5%ほど混ぜて酸化アルミニウムを約1千度で溶かす方法が開発されました。(ホール・エルー法)
それでも、かなりのエネルギーを必要とするので、アルミニウムは電気の缶詰と言われます。
アルミニウムを再利用すると、アルミニウムの融点は約660度なので、ボーキサイトから作るエネルギーの3%で済みます。

こう考えると、リサイクルは良いように思えますが、アルミ缶の蓋部分にはアルミニウムとマグネシウムの合金、 胴部分にはアルミニウムとマンガンの合金が使われているために、アルミ缶を溶かすと入り混じってしまい、缶の素材には使えません。
スチール缶も鉄鉱石からつくるときの35%ほどのエネルギーで再生できますが、 錆びないようにスズ鍍金されていたり、一部にアルミ合金が使われているために元の鉄には戻りません。