ギリシャ神話創世

ギリシャ神話はギリシャ本土北部に位置するオリュムポスから始まります。
先ず、多くの神話がそうであるように渾沌の中から大地母神が生まれました。
ウラーノスは山の頂から大地母神を見ていましたが、あまりにも彼女が綺麗だったので求婚しました。
しばらくして、大地母神は草木や鳥獣を生みました。
そして、雨は河や湖を造りました。
その後、彼女は半神半人の百本の腕を持つ巨人や一つ目で凶暴なキュクロープスたちも生みました。

ギリシャ神話を物語としか見ない説、世界や人類はゼウスが創るまで無かったという説がありますが、 ギリシャ神話が歴史を残しているという説を採るとこの話は単純な創世神話では無いようです。
先に記した創世神話の成立過程は次のようなものだったのかも知れません。

口承によると、ギリシャ北部には先住民族として女神しか創らなかった人々が居ました。
彼らは、月の女神に選ばれた女性だけが子孫を殖やせると信じていた、月の女神の巫女を頂点する集団でした。
そこに、それより北方から男神を崇拝する異民族が侵入してきました。
彼らは女神を崇拝する先住民族と仲良く共存できるように新しい神話を創って広めました。
彼らは先住民族が敬う女神の男性名であるウラーノスを男神として大地母神と結婚させ、 草木や鳥獣を生ませ、河や湖を創ったという創世神話を創り、ウラーノスを創世を成し遂げた男性神とし、 彼らが持ち込んできた巨人やキュクロープスを大地母神に生ませて彼らも先住民族と同じだとしたのです。

巨人神話はギリシャ神話よりはるかに古い紀元前三千年チグリス・ユーフラテス川の下流に興ったバビロニアに現われています。
一つ目の凶暴なキュクロープスというのは、青銅器で武具を作る職人集団だったようです。
後に現われるゼウスの雷霆(自然界で雷、人工物では両刃の斧)を供給するのがキュクロープスたちです。
彼らが一つ目なのは、一つ目が青銅を熔かす炉の火種である太陽を表しているからです。
トラーキア(エーゲ海北部沿岸地方)の職人たちが、ギリシャがマケドニアに負ける紀元前338年までの古典期まで、 額に丸い刺青をしていたことからうかがい知ることが出来ます。