雨について

雨は水蒸気を含んだ空気が上昇気流に乗って昇って行くところから始まります。
上昇気流は低気圧の他、太陽熱によって温められた空気が熱気球のように上昇、或いは暖気と寒気がぶつかったときに暖気が寒気の上に乗り上がって上昇、 風が山に当たって山膚に沿って昇ることによって作られます。

地面から高く離れるに連れて地球の引力が弱くなって行きます。
その結果、質量の小さなものほど地球を離れやすくなり、大気が薄くなります。
同じ体積中に大気を構成する分子が少なくなれば気圧が低くなります。
気圧というのは、分子が飛び回ってぶつかったときの単位面積あたりの力ですから、飛び回ってぶつかる分子が少なくなればその力も小さくなる訳です。

逆に、飛び回っている分子から考えれば飛び回るところが広くなったのでエネルギーを消耗します。
運動量が増せばお腹が減ります。
そこで分子はエネルギーを補充するために外部から熱エネルギーを奪うので、周囲が冷えます。
これを「断熱膨張冷却」と言っています。

上昇した空気が「断熱膨張冷却」によって冷えると、空気中に含むことが出来る水蒸気の量が減ってしまうので、お湯に溶かした砂糖がお湯が冷えると析出するように空気中に含まれていた水蒸気が小さな液体の粒になって出てきます。
この小さな液体の粒が集まって視界を遮ると、私たちは雲が浮かんでいると認知します。

しかし、薄い雲で雨を降らせるようなものではありません。
水分子は水素結合するので他の物質の結合よりは強い訳ですが、液体の粒が小さいということは表面積も小さいので積極的に周囲の水分子を引き付ける力が弱く、周囲の湿度が低いとせっかく結合した水分子が離れてしまうこともあります。
水分子だけで液体の粒を大きくするには湿度が300%要るのだそうです。
そして、1週間とか長時間掛かります。

そこで出番なのが水と親和性のある化学物質です。
直ぐに思いつくのが「塩化ナトリウム」です。
梅雨時、塩をビニールなどで包まないで空気中にさらしておくと湿っぽくなり、酷いときには塩水になってしまいます。

塩化ナトリウムなら海水に含まれていますからしぶきが舞い上げられ、上昇気流に乗って高層大気中にも存在するようになります。
その他、硫酸とか水に結びつきやすくて自然界にある化学物質が対象になります。

これらの化学物質が水の小さな液体の粒に入り込むと粒中の水分子が安定して、周囲の湿度が低くても水分子が離れ難くなります。
そこに、空気中から追い出された水の粒が付くので、湿度が100%を超えていれば急速に水の粒が大きくなります。

ここでまた上昇気流の出番です。
小さな水粒は上昇気流に乗って上に向かいます。
一方ある程度大きくなった水粒は上昇気流より重力の力が勝って落ちます。
そして、押し上げられる小さな水粒と落ちる大きな水粒がぶつかってより大きな水粒になって落ちます。
下に落ちて行くと、気温が高く、湿度も低くいので水が蒸発して水粒が小さくなります。
小さくなると上昇気流に乗れるので再び上方に向かい、今度は落ちてくる水粒とぶつかって大きくなります。
こんな事を繰り返しながら上昇気流に乗れなくなると雲から落ちて、地面に落ちるまでに蒸発しなかった水粒が雨になります。

ところで、高層は気温が低いので、小さな水粒である雲が凍るのでは無いか?
という疑問が湧いてきます。
特に地上が0度以下なら高層が温かい逆転層が出来ない限り、雲のあるところは確実に0度以下で雲が凍るはずです。
雲(水粒)が凍ると、周囲の凍った水粒とくっ付きやすくなって大きくなって行き、ついには上昇気流で支えきれずに落下します。
地上まで凍ったまま落ちれば雪や雹となり、雲が無くなることになりますが、実際はどんなに寒い日でも雲は浮かんでいます。

実は雲は凍り難いのです。
北海道などの極寒地で、真冬、洗面器に水を入れて戸外に置いても凍らないことがあります。
で、手を触れたりするとその振動で一瞬で凍り付きます。
この現象を「過冷却」と言います。
雲を作っている小さな水粒は洗面器の水のように過冷却状態になっているのです。
特に鉱物の微粒子などを含まない水は凍り難く、-35度から-40度以上温度を下げないと凍りません。

このため、非常に高いところまで伸びている雲の上部は氷粒になってもそれより下は過冷却状態の水粒のままです。
ここで出て来るのが、中国から飛んでくる黄砂や世界各地の火山噴出物などの土や鉱物の微粒子です。
これらの微粒子が過冷却状態の水粒に付くと水粒は容易に凍り始め、土や鉱 物の微粒子は氷の核になります。
凍り始めると、周囲の水粒が付着して凍り始めます。
このときの周囲の水粒の付き方の変化で雪の色々な結晶が出来ます。
このまま地上まで落ちれば雪ですが、地上に落ちるまでに他の雪とぶつかって氷の塊になり、また上昇気流で持ち上げられて雪とぶつかったりして大きくなると氷の塊である雹になります。
雨粒と同じように上昇気流で支えきれなくなるまで氷の塊が大きくなると地上まで落ちる訳ですが、地上に近づくに連れて、氷を融かすぐらい気温が上がって来るので殆どは雨となってしまいます。

最初に述べた雨の出来方は空気中の水蒸気が凍りにならないで降ってくる雨なので「温かい雨」 氷になってから雨となるものは「冷たい雨」と呼ばれますが、雨の温度は落ちて来る経路の湿度によって変わります。
湿度が高いと落ちてくるまでに蒸発する量が少ないので雨の温度は気温に左右されますが、湿度が低いと、落ちながら蒸発し、気化熱を奪われるので気温以外に気化熱も考慮しなければなりません。

次に、雨粒の大きさについてです。
通常、直径2.5~3mm以上の雨は降ってきません。
というのは、雨粒の直径が2mm以上になると、落下する雨粒が受ける空気抵 抗は速さの二乗に比例して大きくなります。
その結果、大きな雨粒は扁平上から落下傘のような形に変形し、幾つかの水 滴に分かれて小さくなるからです。
小さい雨粒が受ける空気抵抗は速さの一乗に比例するだけなので分裂の確率は低くなります。
結果的に地上付近で見る雨粒の速度は速くても毎秒9m程度で落ち着きます。
微小な雨粒の場合は、重力と空気抵抗が釣り合って、落下速度は極端に遅くなります。
霧になると浮遊している感じです。