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液晶ディスプレイの仕組み

“液晶”は、構造・用途が多いので「カラー液晶ディスプレイ」に絞りました。
先ずは今までの要点・・・
“偏光”→特定の電場の向きだけの光
“直線偏光”→電場の向きが直線上一定で変わらない
“偏光板(フィルター)”→特定の偏光した光だけを通す
“複屈折”→結晶を通過した時に偏光の向きが90度変わる。

これだけの要素でディスプレイの1画素を作ると

a(光を出す物)照明装置か自然光を取り入れる

↓無偏光

b(角度A度の偏光だけを取り出す)偏光板

↓角度A度の直線偏光

c (電気で偏光の向きを90度変えられる物)液晶板

↓角度A度、か、A+90度の直線 偏光

d(角度A+90度の偏光だけを取り出す)偏光板

e (必要によって光色を変える)色付きフィルター


液晶ディスプレイの構成図
“c”の段階で偏光の向きを変えなければ“b”と“d”の偏光板の向きが90度違うので光は通過出来ませんから黒になります。
電気制御で偏光の向きを90度変えられれば、光は通過でき“e”のフィルターの色が私たちの眼に届く訳です。
“c”段階の偏光の向きを電気で制御できるのが『液晶』です。

これで1画素を作り、何万個何十万個並べて1枚の表示板を作ります。
色の三原色「赤・青・緑」の、それぞれの色付きフィルターを付けたもの3個で1画素を作り、それぞれの色の光を電気信号で点滅させればカラーディスプレイが出来ます。
点滅は、もちろん液晶に掛ける電圧を制御して光の偏光方向を変えて、光を通過させたり遮断したりする訳です。
ディスプレイに使う液晶は、電圧を掛けた時に分子の配列が完全に変わること、電圧を掛けてから分子の配列が完全に変わるまでの時間が短いこと、などが重要な要素です。
これらを実現するために、透明電極基板上で分子の配列を90度ひねった“TN液晶”が開発されました。
この液晶は、電圧が掛かっていない状態で、液晶に入射した光線が分子に沿って90度回転し、電圧がかかると、分子の配列のひねりが解け、入射した光線がそのまま出ます。
分子のひねりを180度から270度にしたものは“STN液晶”というものもあります。

電卓など液晶ディスプレイは、光の通過や遮断を制御しているのでなく、 電圧を掛けると透明な液晶が白濁する(注1)現象を利用したり、液晶の2色性(注2)を利用 しています。

液晶の歴史は古く、1888年オーストリアの“植物学者 ライニツア ”によって偶然発見されました。
生物の体内に存在するコレステロール化合物の研究中、化合物が温度により結晶から白濁した液状に変わり、更に温度を上げると透明な液体に変わったのです。
白濁した液状の物は 複屈折 (注3)により虹色に見えました。

  • 液晶の状態・・・液晶は液体のように流れ、結晶のように分子・原子が規則的に並んでる訳ではないが、液体のように全く無秩序の配列ではない。
    結晶に見られる異方性(注4)もある。
    故に、液晶は、固体、液体、気体のいずれにも属さない
  • 液晶の材料
    ほとんど有機化合物(注5)高分子化合物も使われる
液晶は光に対する異方性だけでなく、温度により色が変化する温度計も市販されていますし、光を電気に変える物など、 驚くことに液晶材料によっては、機械的強度・耐熱性が大きい、温度膨張率が小さいなどの性質が作れるので応用範囲は広いらしいです。
注1: 動的散乱効果
注2: 2色性 分子の並ぶ方向によって光の吸収波長や強さが異なる
注3:複屈折によって位相の異なる2つの光が出来てお互いに干渉し合って虹色を出す
注4: 異方性 観察する方向によって性質が異なる
注5:有機化合物 炭素を含む化合物の総称