身近な自然と科学

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氷は なぜ水に浮くか

身近な自然と科学 Vol.52 【氷は なぜ水に浮くか】
「氷はなぜ水に浮くの?」
とお子さんに質問されて、誰でもする答えは
『氷は、水より軽いから』ですが、もうひと押しされて、「どうして軽いの?」と質問されたら、何と答えたら良いでしょうか?

氷は自然界の異端児

氷と水は、酸素原子1個に水素原子2個が、お互いに電子を共有するという形で結合している分子です。
氷以外の天然物質は、液体から固体になると互いの分子か原子同士が強固に結びついて密度も増して硬くなり、同じ体積なら液体の時より重くなります。その結果、固体は沈む訳です。
その意味で、固体になると体積が増し、水に浮く“氷”は自然界の異端児です。氷が異端児に選ばれた理由は、「神のみぞ知る」ですが。

ともかく、 氷が水に浮くという事 実は、同じ容積内に存在する分子の数が水の場合より少ないことを意味しています。
分子数が少ない原因について直ぐに思いつくのは、分子と分子の間が空いているということですが、この考えは間違いです。
実測値に拠れば、水(摂氏 1.5 度)の分子間の距離は、2.90A(オングストローム)ですが、氷のそれは、2.76A となっていて、分子間距離は水の方が長いのです。
分子間の距離が短くて、且つ、同じ容積内に存在する分子数が少ないとすれば・・・・箱に物を入れる時に誰もが経験する「入れ方が悪い」です。
水の分子は、前述した通り、酸素原子1個と水素原子2個の共有結合ですが、酸素原子を挟んで両側に水素原子1個ずつという配置ではなく、 酸素原子を中心に109度を作る位置に水素原子がそれぞれ結合しています。
水分子のイメージ
これだけでも入れ難い形状ですが、水の場合は、水分子同士の結合が弱いので、何とかたくさんの分子が入りそうです。

問題は氷です。
水分子と他の水分子が強く結合したのが固体である氷ですが、水分子がヘンテコな形をしているために適当にくっ付けません。
また、結合するには、何らかの“力”が必要で、水の場合は静電気が重要な意味を持ちます。
水素原子の周りを回っている電子は、マイナスの電気を持っていますがこの電子は酸素原子にも共有されていて、水素原子の周りを回っているより酸素原子の周りを回っている方が多くなっています。
そのため、水素原子には、原子核が持っているプラスの電気が現れるようになります。
ちょっと解り難いと思うので、たとえが悪いのは承知で・・・
酸素部屋と水素部屋が隣同士にあって、水素部屋には夫婦が住んでいるとします。男臭いとか女臭いとか言う表現をすれば、水素部屋は中性で臭いなしでした。
ところが、水素部屋の女性が近所付き合いをしないと結束できないと、ちょくちょく酸素部屋に遊びに行くようになりました。 その結果、水素部屋には男性だけが居る時間が長くなり、水素部屋は男臭くなってしまいました。
こんな感じで水素原子はプラスの電気を帯びています。
水分子全体としては電気的に中性なので、酸素原子はマイナス電気を帯びて釣り合っています。

このように水素原子側はプラス、酸素側はマイナスの電気を帯びている水分子が幾つもあると、 プラスとマイナスは引き合うのが常識の自然界では、プラス電気を帯びた水素側は他の水分子のマイナス電気を帯びた酸素側にくっ付き、 くっ付かれた水分子もマイナス電気を帯びた水素が他の水分子の酸素側にくっ付きます。
このようにして水分子は連鎖的にくっ付き合い固体の氷になります。(電気結合の他にも結合要素はありますが省略しました。)

ところが、水分子は酸素原子を109度で挟んで水素原子2個がくっ付いているヘンテコな形なので、他の水分子と無闇にくっ付く訳には行きません。
この条件で連鎖的に水分子同士がくっ付ける形は、“ 四面体配位 ”と言われるものです。
この四面体配位というのは、他の物とは4面でしか接触しない形です。
テニスボール、ピンポン球、パチンコ球など何でも良いですが、たくさんの球体の物を箱に密に詰めると、その球は、他の球12個と接触します。 これを配位数12と言います。
配位数12
氷は、配位数4なので、球体より密に詰めれない訳です。
水の配位数の実測値は、4.4 ですから、氷は水よりも密に詰められません。その結果、同じ容積に詰められる分子数が少ない氷は水より軽く、水に浮く訳です。
なお、高圧下の氷は、分子間の距離が高圧下の水より縮まって、配位数の効果を帳消しにしてしまうので水には浮きません。 水に浮く氷は、特殊なもので、神様が生き物にくれた贈り物です。






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