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光や電波を集める反射鏡の作り方

光や電波は、電界と磁界を交互に生成しながら伝播する電磁波です。
光と電波の違いは波長の長さだけで、どちらも同じ方法で一箇所に集められます。
ですから、光が凸レンズや特殊な形をした反射鏡で集められるように、光よりはるかに波長が長い電波も電波が屈折する誘電体をレンズ状の形にした電波レンズや、金属性反射鏡で集めることが出来ます。
ここでは光や電波を一箇所に集める反射鏡を考えてみましょう。

放物面鏡の作成法・計算

反射鏡は立体ですが、中心軸と反射面上の任意の点Pを通る平面で切って、下図のようにX-Y座標上で考えてみます。
光の反射の法則の説明図
そして、反射鏡上のP点に当たる光はY軸に平行に入射するとします。 
光をY軸上のF点に向きを変えるためには、曲線上のP点で 法線 と入射する光が作る角Aと 法線と、P点とF点を結んだ直線が作る角Bが等しいければよい訳です。

接線 がX軸と成す角(傾斜)はP点を含む曲線をxについて微分すれば求められます。
法線は接線と90度を成す直線ですから、 P点での接線の傾斜が a なら接線と90度を成す法線の傾斜a0 は
 a0= -1/a
で求められます。
そして、角Aは内積を使って求めます。
上図の関係(角A=角B)が成立する任意の点Pを通る曲線を、Y軸を中心にして回転させて出来た面が、点Fに光を集める反射面で、放物面として知られています。

放物線は、

放物線の説明図
点F−点Pの長さと、点P−点Qの長さを等しくとった点Pの軌跡なので、a=x*x/4/y  ・・・式1
y=x*x/4/a  ・・・式2
という式が得られます。

放物面鏡の深さが決まっているときには
半径の値を x
深さの値を y にして、式1に入れて a を求め
中心からの距離 x を変化させて式2から y を求めて作図していきます。
この様にして360度回転させていけば放物面が作れます。

望遠鏡用反射望遠鏡の作り方の概略

望遠鏡に使う放物面鏡を自作する場合は面の計算等をしてもあまり役に立ちません(容易に入手出来る3Dプリンターでガラスぐらいの硬度を持つものが作れ、かつ、精密なら役に立つと思いますが)
今は天体望遠鏡用の反射鏡を自作したいと思う方は少ないと思いますが、天文好きな少年少女が多く居た1970年代前後には田舎町の書店にも放物面反射鏡自作を扱った本が置いてありました。
当時(1970年代前後)は3Dプリンターはもちろんですが、個人で使えるコンピューターも無く、技術計算は計算尺という時代です。そして、多くの天文少年少女はお金が無く、その代わりに好奇心だけはいっぱい持っていた時代です。

で、当時の望遠鏡用放物面鏡の自作方法ですが、こんな方法で作っていたと憶えて置いてくだされば幸いです。
用意する物は、反射鏡にする円形の厚板ガラスと同サイズの研磨用ガラス厚板、研磨用ガラス厚板を固定するアスファルトピッチ、研磨剤(紅殻、ガラス研磨剤)
これらを下図の様にして、2枚のガラス板の間に、最初は紅殻(ベンガラ)を研磨剤として入れ、放物面をイメージしながら青円矢印の様に回転させながら磨きます。
反射望遠鏡用放物面鏡の自作イメージ
放物面の形になってきたらガラス研磨剤に変えて磨いていきます。
マイクロメーターで凹面の深さを測りながら磨きますが、簡易な反射望遠鏡として組み立て、遠くの街灯や明るい天体を視ながら磨いていきます。職人技なので、優れた人が磨いた反射鏡は○○の鏡と言われています。

反射鏡用ガラス板は、直径10cm程度なら窓ガラスに使うような材質でもよいのですが、これより大きくなると温度による体積変化が少ない耐熱ガラスを使います。
反射鏡直径が大きくなると、鏡の自重で歪むので更に工夫が要ります。

太陽光利用やアンテナに使う放物柱面反射鏡の作成

360度回転させた放物面を作るのが面倒だったので、放物線をZ軸方向に延ばした「放物柱面反射鏡」を作ってみました。
長さが1m、幅が35cmです。
アルミ板などの金属板で作ればよかったのですが、ダンボールにキッチン用アルミ箔を貼ったものなので、太陽に向けても1分間ぐらいは焦点に手を置ける温度にしかなりませんでした。

パラボラ(放物面)の工作精度は使用波長の16分の1以下が必要とされていますから、反射式天体望遠鏡に使われる放物面鏡は高精度が要求されます。
そのため、廉価な望遠鏡では反射鏡を作るのが簡単な球面鏡が使われています。
球面鏡は軸に平行に入射してきた光でも一点に集まらないのできれいな像が出来ません。(球面収差)
今回自作した放物柱面反射鏡では、飲み物を温めるか、アマチュア無線の2.4GHzのアンテナか、微弱な無線LANの電波を集めるぐらいにしか使えません。
無線LANの場合は自作アンテナを使って通信を行うと電波法違反になります)