空中放電や電気火花が起きる理由,暗電流とグロー放電とアーク放電の易しい説明

電極間に電圧を掛けたときに起きる現象

空気中に2つの電極を対向させて設置し、一方の電極に正(プラス)、もう一方の電極に負(マイナス)の電圧をかけた場合の現象を考えてみましょう。
2つの電極間の距離に比較して電圧が低い場合は何も起きませんが、徐々に電圧を上げて行くと、見た目には何も起きていないのに僅かに電流が流れ始めます。 これは、自然界の放射線などによって空気中の分子が電離されて出来た正イオンがマイナス電極に、負イオンがプラス電極に移動したためです。 静電気を除く方法(静電気の放電除去)で述べた毛先の静電気が近傍の分子を電離出来ない状態と同じです。この時に流れる僅かな電流を暗電流 と呼びます。
空中放電が起きる理由 暗電流が生じる説明図

更に電圧を上げて行くと、強い電界により、近傍空間にある分子が電離されて正と負のイオンが作られ発光します。 これをグロー放電 といいます。 グロー放電が起きると比較的大きな電流が流れます、電流が流れるということは電極間の抵抗値が小さくなったということですから電極間の電位差(電圧)が小さくなり電界が弱くなるので電極近傍だけが発光します。この状態をコロナ放電 ”といいます。

空中放電・電気火花が起きる理由

更に電圧を上げて行くと、コロナ放電の為に電極が熱くなり、マイナス極から電子が出るようになり、 その電子が電極間の電位差(電圧)により加速されて空間中にある分子に衝突しながらプラス極に飛んで行きます。電子に衝突された分子は電離し、電子を生じます。分子から出た電子も近くの分子に衝突してその分子から電子を放出させます。
即ち、陰極から出た1個の電子がその何倍もの数の電子を作る訳です。電子の数が爆発的に増えるので、この現象を電子なだれ といいます。 結果、電極間を流れる電流も爆発的に増加します。
(トランジスターの前に使われていた増幅素子・真空管は、電子なだれが起きると困るので真空にしている)
空中放電が起きる理由 電子なだれの説明図

電子なだれが起きると次に述べるように奇妙な現象が起きます。
  1. 過程A:
    マイナス極から出た電子にぶつけられて電子を出した分子はプラスの電気を帯びます。電子なだれで爆発的に電子が増加すると、プラスの電気を帯びた分子も電子が爆発的に増えるように爆発的に増えます。そして、電極間の空間に溜まることになります。
  2. 過程B:
    やがて、プラス電極より空間に溜まったプラス電気を帯びた分子の方が強くなります。こうなると、電子はプラス極に行かずに空間のプラス電気に引かれるようになります。 電子が電極間のプラス電気と結合すると電極間のプラス電気が減少するため、再び電子はプラス電極に飛んで行き、過程Aの状態に戻ります。
コロナ放電が上記過程A、Bを繰り返すと空気分子が振動します。 空気分子が右往左往動くという事は付近の空気の圧力が高低することで、 このときの空気圧力の変化(振動)が可聴周波数になったときに私たちは音として感じます。 コロナ放電から更に電圧を上げて行くと、火花放電 に移ります。

放電現象にはアーク放電 というものがあります。鉄工所や建築現場などで眩い光を放っているアーク溶接でお馴染みのものです。
これは電極を加熱して電極を作っている物質を溶かして蒸気にし、その蒸気を介して起こす放電です。 他の放電と異なり、電流はアンペアー単位の大きさを必要としますが、電圧は10ボルト程度で放電が起こります。 アーク放電の用途は、今では溶接しか無いと思うのですが、放つ光が強いために照明に使われたことがありました。

ところで、過程Aのときは電極間を流れる電流は多く、過程Bのときは電子が電極間で中和されてしまうので流れる電流は少なくなりを繰り返し、 電流の大きさは周期的に変化するようになります。 電極間に直流電圧をかけても放電現象が周期的に変化する電流を作り出すことから、放電現象を無線送信機に利用した時代がありました。 無線通信は1895年マルコーニの火花送信機により実用化されたのですが、火花放電では無線電話に使える持続的な電波を出せませんでした。 そこで、短期間ですが、アーク放電によって電波を持続的に出せる高周波振動電流を作り、無線電話を実用化していました。