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鏡の原理・しくみと金属が鏡に利用される理由

子供の頃に読んだ天文の本に、天文学者の ハーシェル (Frederick William Herschel, 1738~1822)の妹は、昼間、兄の天体望遠鏡の反射鏡を磨いたとありました。
子供向けの本だったので、兄妹愛を誇張してあったのかも知れませんが、当時の反射望遠鏡の鏡は表面にコーティングがしてない金属鏡だったので直ぐに曇ってしまったのです。

ところで、天体望遠鏡の鏡に限らず、ご神体とされた古代の鏡から現在に至るまで鏡は金属でつくられています。
日常使っている鏡は、ガラス板の裏側に銀を化学的に付けた物や真空中でアルミを蒸着させたものですし、 天体観測用の反射望遠鏡は放物面に磨いたガラスの表面にアルミを蒸着させたものです。
鏡のしくみ 鏡の構造
100円ショップで売られている鏡にはアルミ板の表面にコーティング?しただけの物が見られますが金属を利用していることに変わりはありません。

鏡が金属を利用している理由

では、どうして、古代から現代に至るまで、鏡は金属 でつくられているのでしょうか?
鏡として使えるためには人間が見える全ての色(可視光の波長)で、鏡に入った当たった光と反射する光がほぼ同じ強さでなければなりません。
私たちは鏡に当たった光の反射を見ているのですから、色によって反射する光の強さが異なると、色の付いた顔を見ることになってしまいます。

ここから、原子の周りにある電子の話になります。
電子は、原子の周りなら何処でも存在出来るわけではありません。水素や酸素といった原子の種類に応じて、電子が存在出来る場所とそこに存在出来る電子の数が決まっています。水星や金星、地球、火星、木星、土星などが各々の軌道上から外れないで太陽の周りを回っているように、電子にも、K殻、L殻、M殻、N殻、O殻と呼ばれている電子が存在出来る場所とその殻の中に入れる電子の数が定められています。ここで、「殻」とは場所と考えた方がイメージしやすいですが、電子が持っているエネルギーの高低によるものです。また、電子は惑星の様に粒として存在している訳ではありません、念のため。

自然はシンプルで美しいものを好むと言いますが、原子でも殻の中に定められた数の電子が過不足無く入っている状態が安定しています。
しかし、現実はそうも行かなくて、電子が1,2個足りない、逆に、電子を多く入れられる殻なのに1,2個しか入っていない原子が多いのです。そこで、殻をいっぱいにするには電子が1,2個足りない原子は他から電子を奪って安定しようとし、殻をいっぱいにするだけの電子を奪うよりは余っている電子を放出した方が容易という原子は電子を放出しようとします。
生き物が生きて行くのに必要な酸素は、K殻は満席でL殻は電子2個分空席なので他から電子を奪って安定になろうとします、これが酸化です。

鏡の話で重要な金属の場合は、他から電子を奪うより電子を出す方が容易な原子の集まりです。原子の束縛から解放された電子(自由電子)は原子が集まった金属内を自由に動き回れます。このために、金属は電気をよく通すわけです。 また、電子を放出しやすい電子1個だけ余っている原子で作られた金属はより電気を通しやすくなります。
ところで、光は電磁波なので自由電子に合うと電子を振動させてよく反射します、それで、金属は鏡として使われているのです。

特有の色を放つ金属がある理由

金や銅のように色があるのは、電子がもう一段高い殻に入るのに必要なエネルギーを可視光の一部から吸収してしまうからです。電子は階段状しかエネルギーの大きさを持てないのでそのエネルギーを満たす波長の光しか吸収できません。(光量と光が持っているエネルギーは違います。)
金の場合、金の電子をエネルギーの高い位置に移動させるエネルギーを持った光が青付近なので青付近の色だけが吸収されてしまいます。 このため、青の補色の黄色を私たちは感じ、かつ、青色付近外の光は自由電子を振動させてよく反射するので、黄色が輝いて見えます。 金かと思ったら、アルミ箔の上に黄色のセロファンが重ねてあるのと同じです。

金属鏡が曇る理由

金属鏡が曇るのは、表面の自由電子が酸素と結びついて自由電子が少なくなるからです。酸素が電子を奪うので酸化です。酸化すれば表面では電気の流れも悪くなります。最初に記したハーシェルの妹は酸化膜を落としていた訳です。