魔法瓶や鍋のしくみと熱伝導と電子

先日テレビ番組で、炊飯器の内釜に熱伝導率のよい銅を使っているので急速に熱がむらなく伝わって美味しいご飯が炊けるという話をしていました。
美味しいご飯を炊くには米をたくさん入れて炊くことで(大量に炊くことによって最適な炊飯時間になる)、銅で作られた釜だから美味しく炊けるとは思いませんが、 マイクロコンピューターで温度を管理する炊飯器では、熱の伝わりが早い方が楽に美味しく炊けるのでしょうか。

熱を伝えるもの

熱は電磁波の放射を除けば音と同じように伝える物が無ければ伝わりません。
長時間、熱い湯や冷水を保つ魔法瓶は、下図の様に湯や冷水を入れる容器が二重になっていて、その間を真空(真空に近く)して、熱を伝える空気中の分子を除き、熱が伝わるのを少なくしています。
更に、放射によって熱が逃げるのを防ぐためにアルミ蒸着をして鏡の様にしています。太陽光に当たると温かくなるように真空中でも伝わる電磁波(電波)によっても熱が伝わります(私たちが暖かく感じる赤外線も電波)

ガラス製魔法瓶の仕組みのイメージ図

鍋や釜に使われる金属の場合は、金属を構成している原子は動けませんが、熱エネルギーをもらった自由電子が近くの自由電子に衝突してエネルギーを伝え、 衝突された自由電子はエネルギーをもらい、また近くの自由電子に衝突するという過程を繰り返して次々に熱を伝えます。

エネルギーを持った自由電子の動きを邪魔するのは、プラスの電気を帯びた原子(イオン)です。 電子は負の電気を帯びているのでイオンが電子を引き付けるので電子の動きが鈍るのです。 自由電子がどれだけ正イオンから邪魔されずに動けるかで、熱の伝導率が決まります。
電気も自由に動ける電子によって伝わるので、電気をよく流す金属は熱もよく伝えることになります。たとえば、電気の配線に使われる銅は、熱伝導率が高いと謳って鍋や放熱板、熱交換器に使われます。銅は比較的高価なのでアルミも使われます。
逆に、木材やプラスチックは電気が流れ難いので熱も伝わり難くなります。銅やアルミの鍋の持つの部分が木材やプラスチックで作られているのは電子が動き易い動き難い物の組み合わせになります。

熱伝導率は、単位温度勾配につき一秒間に流れる熱量で表されます。単位温度勾配は位置によって温度に差がある物体があるときに、単位長さあたりの温度の変化のことです。