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蜃気楼が見える理由

蜃気楼というと、ラクダに乗って砂漠を旅する人々が思い浮かびます。突然、彼らの前に泉が湧き出るオアシスが浮かび、 そのオアシスを目指して急ぐと、オアシスは消えてしまい、喉の渇きだけが残るのです。
蜃気楼には地面に見える下方蜃気楼 と、水平線や地平線上に浮かんで見える 上方蜃気楼 がありますが、 どちらも見える理由は同じです。

蜃気楼が見える理由の説明図

蜃気楼が見える条件

蜃気楼は光の全反射によって起こります。
全反射とは屈折率の大きい媒質から小さい媒質に光が入ったときに、その入射角が臨界角より大きくなったときに鏡のように入射した光を全て反射させる現象です。
光の全反射の説明図
全反射は簡単に実験できます。透明な窓ガラスに目を近づけて、視線をガラスと平行にするつもりでガラス面を覗いてみてください。ガラス面に景色が映っているはずです。
窓ガラスで起きる全反射の写真
上写真は、私が過日(2019/06/12)撮ったもので、左側が窓ガラスに写った像で右側が実景色です.
このように入射角が大きくすれば容易に全反射になるのです。蜃気楼で遠くの景色が見えるのは、遠くの景色は最初に挙げた蜃気楼の図で示すように入射角が大きいからです。

大気中で全反射が起こる条件は

空気中で全反射が起きるには屈折率が異なる媒質が必要です。この条件が満たされることが少ないために蜃気楼の見える名所が生まれたりします。
最初に挙げた図で示したように、砂漠の日中は太陽熱で砂が熱くなるために地面近くの空気分子の運動が活発になって分子の密度が低くなります。 その結果、地面近傍の空気の屈折率が小さくなって、遠くの景色からの光は大きな入射角で屈折率の小さい地面近傍の空気層に入射して全反射します。これが砂漠での蜃気楼です。
熱い空気は上に昇りますが、地面が非常に高温のために地面近傍に流れ込んだ冷たい空気は直ぐに温められてしまいます。
そのために、地面近傍の空気は屈折率が低いままになっています。砂漠の蜃気楼と同じ現象は、夏季のアスファルト道路でも起きることがあります。 アスファルトが砂漠と同じように強い陽射で高温になり、その近傍の空気を温め、その屈折率を小さくして遠くから入射した光を全反射します。
コンクリートや石造りの建造物も太陽で高温になるので、その近傍の空気の屈折率は低くなります。
ですから、垂直に建っている壁などでも全反射が起きて蜃気楼が見えることがあります。

遠くの景色が上方に見える上方蜃気楼は、上空に気温が高い層があります。地表付近の気温の方が低いときは陸上なら晴れた夜のように陸上から赤外線が出て地温が下がり、地面付近の気温も下がります。
その結果、上空に気温が高い層、地面付近に気温が低い層が出来ます。 しかし、建物や山などが無い開けた方向で、かつ、全反射が成立する地点に夜間でも明るい物が無いと見えないですから蜃気楼が見える条件は厳しいです。
光では無くて音なら蜃気楼より条件が緩くなるので遠くの音がよく聞こえるという現象は頻繁に起きます。
海上では、水は温まり難いで日中は海面付近の気温が大して上がらず、夜間は水は冷め難いので大して海面付近の気温は下がりません。 海上は見通しがよいというだけで、やはり蜃気楼が見える条件は厳しいです、