玉虫とシャボン玉の色変化が起きる理由

玉虫は、見る角度や光線の具合で緑や紫色に色が変化することで有名です。法隆寺の玉虫厨子の他、玉虫のように見る角度によって色合いが変化する織物は玉虫織と言われます。クワガタやカナブンも玉虫のように綺麗ではありませんが、光の具合によっては色が変化して見えます。 また、シャボン玉も無色の石鹸水なのに虹のような色が見えます。なぜでしょう?

Cuticula キューティクル(クチクラ)

生物体の表面を層状に覆っているものを総称して Cuticula キューティクル(クチクラ)と言います。
植物の葉の表面は乾燥を防ぐためにロウ質が多く含まれたクチクラです。
玉虫やカブトムシなどの甲虫の表面、エビやカニなどの甲殻類の表面もクチクラです。
また、蝶や蛾の羽根を触ると、指に粉(鱗粉)が付きます。 「鱗」と表されるとおりうろこ状で、低倍率の顕微鏡で観るときれいなので、市販されている学習用顕微鏡セットには付属プレパラートとしてよく付けられています。
蝶の羽根に鱗粉が付いている理由で先ず考えられるのは、雨や露などから羽根を保護するためです。 羽根が濡れてしまうと重くなったり、羽根を畳んだときに羽根同士が水の持つ張力でくっついてしまい、広げようとしても離れなくなることも考えられます。この鱗粉もクチクラです。
蝶の場合、羽根がつくられるときに鱗粉母細胞が整然と並んで成長し、鱗粉母細胞が死んで鱗粉が層状に残ります。

クチクラで最も身近な物は、私たちの髪です。髪はうろこ状のキューティクル(クチクラ)で覆われています。 キューティクルが傷んで剥がれたり立ったりすると、艶が無くなって見えます。

層状のクチクラによる多層膜干渉

玉虫などの色変化は、層状のクチクラによる 多層膜干渉 によって起こります。
レーザーの様に単一波長の光を当てた場合には干渉は単一色の強弱によって出来る縞模様になりますが、太陽光や一般的な人工光源は色々な波長の光が混じっているためにそれぞれの色の光の縞模様が重なって見る角度によって変化する色として見えます。
シャボン玉のように薄い膜が1枚のときは、膜の表面で反射した光と、膜の下の面で反射した光が干渉して色が出ます。
薄膜干渉の説明図
シャボン玉のように薄い膜が1枚のときの薄膜干渉では、膜の表面と下の面で反射した光の経路差は
2×膜の屈折率×膜の厚さ×COS(光の膜中での傾角)
で求められます。
光の膜中での傾角というのは、幕の面に垂直線と膜に進入した光が成す角です。
この薄い膜が何層にも重なると、更に複雑な色が出ます。

このような色は、組織の構造によって出るので 構造色 と呼ばれます。 CDやDVDの記録面に何種もの色が見えるのも構造色です。
DVDの記録面に見える構造色
CDやDVDは、記録面にレーザーを当て、反射して戻って来るレーザーの変化で記録を読み取る構造をしているので、 太陽や照明の光を記録面に当てても光の強度と位相が異なる光が反射して幾つもの干渉を起こします。