ルーペの倍率の定義と倍率の計算方法

ルーペは虫眼鏡というように昆虫や植物観察の定番アイテムですが、眼からルーペまでの距離を変えると、若干倍率が変わります。下写真は、百円ショップのダイソーの倍率約2倍というスタンド付きルーペです(2019年7月21日購入)。斜め上方から撮った写真なので方眼がレンズ周辺で歪んでいますが、レンズの真上から覗けば気になるほどで歪んではいません。
ダイソーで購入したスタンド付きルーペの写真

ルーペ・虫眼鏡の倍率の定義

望遠鏡や顕微鏡でも同じですが、光学器械の倍率は、正常の機能を持つ眼で見たときの大きさと、光学系を通して見た大きさの比で表されます。 ですから、望遠鏡や顕微鏡を通して撮った写真を拡大印刷すれば光学系の倍率に印刷したときの拡大率を掛けたものが倍率になります。ただし、望遠鏡や顕微鏡で撮った写真を拡大しても細かい部分まで見える訳ではありません。昔の映画を4Kテレビ用に変換して4Kとして放映されますが、4Kの解像度が無いフィルムから4K解像度の画像が得られないのと同じです。画像が無い部分は近くの画像から推測し埋めますが、細かい部分を見たいと思ったら補完では無くて真の画像でなければ意味がありません。

光学系を通さないで見た大きさは、25cmの距離で見たときを基準にします。 25cmは明視距離と呼ばれ、正常な眼が疲れずに物を見られる最短距離です(近視の方や若い方はもっと近くでも見ることが出来ます)

焦点距離 f のルーペ・虫眼鏡の倍率計算法

ルーペは凸レンズなので、光軸に平行に入射した光は一点に集まります。この点は焦点と呼ばれます。
下の図のように焦点から逆に光の軌跡を辿ると、レンズに入射した光の角度が大きく見えます。これが凸レンズによる拡大の原理です。
凸レンズの拡大原理図
明視距離に置いた長さ2A(cm)の物体は、A÷25 の大きさに見えます。
焦点距離 fの凸レンズを通して長さ2Aの物体を見ると、A÷f の大きさに見えます。
両者の比をとると、(A÷f)÷(A÷25)=25÷f となりますから、
焦点距離 f のルーペの倍率は、25÷f(cm)で表されます。
このように光学器械の倍率は、明視距離という曖昧な数字が基準になっているので人によっては倍率が多少違って見えます。
なお、ルーペなどの倍率は効果を大きく見せようとするためか、面積比になっていることが殆どです。倍率3倍のルーペは、長さの比では3の平方根で、約1.7倍になります。
ダイソーで購入したスタンド付きルーペの倍率を計算してみました。
先ず、太陽光でレンズの焦点距離を測ります。
太陽光でルーペの焦点距離を測っている写真
焦点距離を測る器具を作らないで、左手で物差しとレンズを支えて右手でスマホで写真を撮っているので正確ではありませんが、このレンズの焦点距離に実測値は、約17.5cmでした。
焦点距離fのルーペの倍率は、25÷f(cm)なので、25.0÷17.5は約1.43、面積比で表す倍率が使われているので、1.43を自乗して約2.04
このルーペの倍率は約2倍と表示されていたので合っています。

最近流行のメガネ型ルーペは、見たい物と眼の間隔を短くすることによって大きく見せています。遠くの景色や近くの物でも近づけば大きく見えるのと同じです。見たい物に近づけないから望遠鏡や顕微鏡のお世話になるわけです。