ハイゼンベルクの不確定性原理と混同した不確定性原理の間違った説明

不確定性原理とは

不確定性原理とは、原子や電子などの小さな物は、その位置を求めようとすると、その運動量を求められない。運動量を求めようとすると、その位置を求められない。 といったように、電子や原子のように小さい物では一つを求めると他が求められないことを言います。

よく見かける間違った説明

電気回路に例えて

先ず、間違った説明では、電気回路での電圧や電流を測る場合を例にしています。
電圧や電流を測るにはその回路に電圧計や電流計を繋ぎますから、当然、回路を流れている電流の一部が電圧計や電流に流れるので計っても正確な値を求めることができません。 この例と不確定性原理を一緒にする人が、なぜか居ます。
電圧や電流を測るときには確かに計器に電流が流れるので回路内の電流や電圧を乱しますが、計器の内部抵抗を求めておけば補正できますし、 理想的な測定器、電流計なら内部抵抗がゼロ、電圧計なら内部抵抗が無限大の計器があれば計れます。
実際にも電界効果型トランジスターを入力段に使った電圧計には内部抵抗が非常に高いものがあります。 このように計測値の補正が出来ますし、理想的な計測器があれば測ることができますから、不確定性原理の説明には使えません。

ビリヤードに例えて

次に、たとえば、電子や原子の位置を探ろうとして光(電磁波)を当てた場合です。
顕微鏡を想像してください。顕微鏡は拡大したい物に光を当ててそれを透過した光かそれによって反射した光によって出来る像をレンズで拡大して見ています。
ところが、見ようとする物の大きさが人間が見ることが出来る可視光の波長に近づくと回折現象によって見難くなります。 周波数が高い音は物陰に入れば聞こえなくなりますが、周波数の低い音は聞きづらくなっても聞こえるのは音波の回折現象(回り込み)によりますが、光(電磁波)に同じことが起きます。
そこで、より小さい物が見えるように可視光の代わりに電子線(電子の流れ)を使います。これが電子顕微鏡ですが、電子を見ようとして電子顕微鏡を使うと電子線が当たって、玉突き(ビリヤード)のように静止していた電子は動いてしまいます。電子より質量のある原子核を見ようとしても、原子核も少しは動くでしょう。 ですから、原子や電子のように小さな物の位置を測定することは出来ないと、不確定性原理を説明しています。もちろん、この説明も間違っています。 ビリヤードの名手は突かれた玉の行方がわかります。
このような説明は測定限界を示した「ハイゼンベルクの不確定性原理」と本来の不確定性原理を混同したものです。
玉突きに例えた不確定性原理の誤り

不確定性原理の正しい意味

不確定性原理は、電子や原子のように小さな世界では観測していないときや観測できないときには、 これらの物は波動として振る舞い、観測しようとすると途端に波動は1点に収束するという考えから起きるものです。
海面や湖面に立った波を見て、波の位置は判りません。波が1点に収束すれば位置は判りますが、動きは止まってしまうので運動量は判りません。
電子や原子などでは波の時には観測できませんが数学的に考えられた波動関数と呼ばれる式で運動量を求めることが出来ます。しかし、波なのでその位置は判りません。
ただし、湖面や海面に立つ波も、水が無い陸地部分には波は絶対ありませんし、水はあっても風が吹き込まない所にはあまり波が立たないように、電子や原子の世界でも、 これらが波動として存在していそうな所は確率的に求めることは出来ます。