カメラ用望遠レンズの仕組み

望遠レンズと同様の効果を得られる物に長焦点レンズがあります。長焦点レンズとは焦点距離の長いレンズを言い、焦点距離が長いことは望遠レンズと同じです。 両者の違いはカメラレンズ特有のものです。

長焦点レンズとは

先ず、長焦点レンズですが、これは写真を撮る画角に対して焦点距離が長い、唯の凸レンズです。 ただ、焦点距離がどのくらいのレンズから長焦点と呼ぶかはカメラによって異なります。
レンズが結んだ像を電気信号に変えるCCDやCMOS受光面の小さなコンパクトデジタルカメラでは、焦点距離が50mmでも長焦点ですが、 フルサイズのデジタル一眼では50mmでは標準レンズです。長焦点レンズの端的な例は、天体望遠鏡の対物レンズの焦点面で写真を撮るときです。 天体望遠鏡が長焦点カメラに変わった訳です。

望遠レンズとは

見かけ上のレンズの中心がレンズの先の方にある物を望遠レンズと呼びます。たとえば、焦点距離300mmの長焦点レンズを遠景に向けたときでは、 CMOSなどの受光面から300mm先にレンズが位置します。ところが、300mmの望遠レンズでは受光面から300mm先には何もありません。
望遠レンズの筐体は焦点距離よりはるかに短いのです。

望遠レンズの仕組みは簡単です。下図のように凸レンズの焦点位置より凸レンズよりに凹レンズを置くだけです。
もちろん、凸レンズと凹レンズは収差を出来るだけ少なくするために、それぞれが数枚のレンズを組み合わせて作られており、全体で凸レンズや凹レンズになっているものです。
直感的に理解できると思いますが、凸レンズによって焦点に集まる光を凹レンズによって少し拡散しています。
望遠レンズのしくみ
ズームレンズの焦点距離は
(凸レンズの焦点距離×凹レンズの焦点距離)÷(凹レンズの焦点距離-上図のD)

で求められます。
この式から判るように、上図のDを変えれば合成焦点距離が変化するのでズームレンズになります。
また、凹レンズの後にレンズを入れて焦点位置の移動量を少なくしたり、像の補正をすることが多いです。
特に撮影中に焦点距離を変えることがあるムービーカメラでは焦点位置が変動するとピントが合わなくなるので位置の補正は必ず必要です。(ただし、人の眼は動いている物を追う性質があるので、ムービーカメラのズームレンズはピント合わせが甘くても実用になる)

実際に数値を入れて計算してみましょう。
凸レンズの焦点距離を100mm、凹レンズの焦点距離を50mm、Dを30mmとすると、合成焦点距離は250mmとなります。
焦点距離が伸びたので、F値(焦点距離÷口径)は大きくなって焦点面に作られる像は暗くなります。
また、レンズが増えた分だけ収差も増えます。
Dを可変にしてズームレンズにした場合には収差の補正が難しくなり、単焦点レンズより劣ります。

ところで、既存のレンズに後から凹レンズを付けるものが、一眼レフカメラ用のリアコンバージョンレンズと呼ばれるものです。
望遠鏡ではバローレンズと呼ばれ、見やすい焦点距離の長い接眼レンズで倍率を上げられ、また、球面収差が出る反射望遠鏡では凹レンズが球面反射鏡の収差を打ち消すように働くので収差を少なく出来ると重宝がられています。