カメラ用レンズの構成

眼の構造がカメラ(写真機)に譬えられるようにカメラは眼とよく似ています。
外界からの光を集めて像を結ぶ機能は、人間では水晶体、カメラではレンズ。
外界の光が強すぎるときに光の入射量を少なくする機能は、人間では虹彩、カメラでは絞り。
像を信号に変える機能は、人間では網膜、カメラではCCDやCMOSなどの撮像素子。

では、カメラ用レンズの簡単な解説です。レンズは光が媒質によって進む速度が異なるという性質を利用しています。
ここでは、カメラ用レンズに必要とされるレンズの機能を考えてみましょう。
移動速度の大きい列車や飛行機、動き回る幼児などを鮮明な画像として撮る為には露出時間を短くする必要があります。
その為には、レンズに明るい像を作ってもらう必要があります。 デジタルカメラを高感度に設定すると僅かな光で作られる低い電圧も利用することになるために撮像素子(CCD,CMOS)が元々持っている熱雑音が混じってしまうために画像が荒れてしまうのです。
しかし、レンズの収差のページに記したように、収差を抑えるためには、F値(焦点距離÷レンズの有効直径)を大きくする必要があり、像は暗くなってしまいます。 明るい像を得ることと、収差を抑えることは両立しないのです。
絞りにして1段明るいレンズを作ろうとすると、有効口径を1.4倍にしなければなりません。 収差の中には有効口径の二乗や三乗に比例して大きくなるものがありますから、収差は2倍から3倍近く大きくなってしまいます。 このため、収差補正用のレンズを増やさければならず、ユーザー側からは「たった1段分明るくなっただけなのに高すぎる」ということになるのです。

ガウス型レンズ

一般的なカメラ用レンズの構成を考えてみましょう。
単体では収差を抑えた凸レンズがあると仮定します。
このレンズでは綺麗な写真が撮れますが、被写体が明るすぎるので光量を減らさなければならなくなりました。
レンズに絞りを付けるのは、レンズの被写体側か撮像素子側か?
どちらでも同じように思えますが、光量を制限する絞環の位置によって結ばれる像が変形してしまう非曲収差があったことを思い出してください。
障子の桟のような升目になっているものを写すとはっきり判りますが、レンズの被写体側で絞ると中心から遠くなるに連れて狭まるように変形し、 レンズの撮像素子側で絞ると、中心から遠くなるに連れて広がるように変形します。 ここで、レンズの補正では凸レンズと凹レンズの収差が逆に出ることを利用していることを思い出してください。
絞りの位置によって像が変形するなら、変形した像を逆に変形させればよい訳です。ということで、絞りを挟んで両側に凸レンズを置くことになります。
ガウス型レンズ
これを、ガウス型と呼んでいて最も基本的な構成になります。

広角レンズ

これを標準レンズとすると、広い範囲を写すことが出来る広角レンズはどのような構成になるでしょうか。
広角レンズは焦点距離が短くなりますが、ファインダーに光を導く鏡が入っている一眼レフカメラでは鏡が邪魔になって撮像素子にレンズを近づけることが出来ません。
レンズから撮像素子までの距離を大きくしたままで短い焦点距離を実現する必要があります。
そこで、薄いレンズの公式を思い出してください。
それによると、レンズに近い物の像を結ばせようとすると、レンズから遠いところに像が結びます。ですから、遠い物を光学的に近くに引き寄せれば言い訳です。 その為には、レンズの前に凹レンズを配置します。
カメラ用広角レンズと望遠レンズの構成図
これは近視用メガネと同じです。近視の方は水晶体から網膜までの距離が大きいために近くの物にしかピントが合いません。
なお、広角レンズは画角が大きいので収差が大きくなります。 F値(レンズの焦点距離÷レンズの口径)の小さいレンズになると、更に口径が大きいために生じる収差も加わるのでこれらを補正するためにレンズが増えて高価になります。
望遠レンズはレンズの後ろに凹レンズを置きます。レンズと像が結ぶ所までの距離が焦点距離より短く出来、焦点距離より短い筐体に出来て小型になります。焦点距離が長いだけの交換レンズは長焦点レンズと呼ぶのが一般的です