相対性理論:双子のパラドックスとは

相対性理論の話には「双子のパラドックス」という問題がしばしば出てきます。
相対性理論によれば、時間の進む速さは止まっているときより動いているときの方が遅くなります。 ですから、双子の兄が非常に速い宇宙船で宇宙旅行に出発して戻ってきたとき、兄と地球に残っていた弟は、どちらが若いか?という問題を考えてみます。

時間は相対的なもの

先ず、動いているものの時の進みが遅いのは次のような思考実験で理解されます。
時間は相対的であることを説明する図
図1の箱のAからBに向かって光を放ちます。箱が動いていないときには箱の中に居る人から見ても、箱の外に居る人から見ても図1のように光は見えます。
次に、図2のように箱が非常に速い速度で右に動いている場合を考えてみます。
箱の中に居る人にとっては光は箱が止まっているときと同じで図1のように見えますが、箱の外に居る人から見ると、 Aから放たれた光がBに着くことは変わりありませんからBが動いている分だけ光は斜めに動いたように見えます。
結局、箱の外に居る人にとっては、箱が止まっているときより、動いているときの方が光は長い距離を進んだように見える訳です。
ここで、相対性理論の大原則「光の速度は常に変わらない 」を思い出してください。
速度は単位時間当たりに進む距離ですから、動いている箱の外から見ている人にとっては、時の進みを遅くしないとを光の速度が変わってしまいます。

「双子のパラドックス」の話に戻ります。
動いているときは時間が遅くなりますから、非常に速い宇宙船で旅行に出た兄は地球で止まっている弟より若いことになります。しかし、速度というのは相対的なものです。
たとえば、山手線や京浜東北線のように同じ方向に進む電車が並んで停車し、一方の電車の窓から他方の電車だけを眺めているときを思い出してください。 自分が乗っている電車が発車し始めたと思ったら、乗っている電車は止まっていて眺めていた電車が発車していたという経験があるかと思います。
このように、自分が動いても相手が動いても同じなのです。
ですから、兄が非常に速く動いたのでは無く、兄が止まっていて、弟が非常に速く動いても同じです。 ということは、弟の時の進みが遅くなっていて、弟は兄より若いことになります。さっきは、兄の方が若かったのに・・・おかしいですね。
これが、相対性理論における「双子のパラドックス」です。

双子のパラドックスは誤り

ところが、これはパラドックスでは無いのです。
アインシュタインの「 特殊相対性理論 」だけではパラドックスですが、「 一般相対性理論 」によれば、重力によっても時の進みは遅くなります。
E=m×C×C
(エネルギー=質量×光速×光速)
という、有名な式は、質量とエネルギーは相互に変われることを意味しています。
ですから、エネルギー100%の光も質量と同じように重力の影響を受け、重力に逆らうとエネルギーを失うことを意味しています。 光がエネルギーを失うことは、光の波長が長くなることを意味します。(波長の短い光ほどエネルギーをたくさん持っています)
波長の長くなった光を長くなる前と同じ光と見るには、単位時間を長くする必要があります。ということは、重力によっても時の進みが遅くなることを意味します。
重力によって波長が長くなる
ここで、宇宙旅行に出た兄はどんな経験をしたか考えてみます。
地球を出発して非常に速い速度になるまでに非常に大きな加速度を受け、地球に戻るときに進路を変えるのでここでも非常に大きな加速度を受け、 地球に戻るときに非常に大きな加速度を受けています。加速度は重力と同じ働きをしますから時間が遅くなります。
一方、地球に居る弟は人間の感覚では時間が変化しないぐらいしか重力を受けていません。
総合すると、兄は非常に大きな重力を受けた分だけ時の進みが遅く、弟より若いことになります。