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マジックミラー、カーテンや簾で屋内が見えないように出来る理由・しくみ

刑事ドラマなどで犯行目撃者に容疑者を確認してもらう場面では、目撃者からは容疑者が見えても容疑者からは目撃者が見えないようにマジックミラーが使われていることになっています。(今は隠しカメラが安価で入手出来るのでマジックミラーは使われてい無いと思いますが)
また、防犯やプライバシーを守る目的で屋内から屋外は見えても屋外から屋内は見難いというカーテンが売られています。このようなカーテンを使わなくても、昔から簾を目隠し代わりに使っていました。

ところで、貴方が人物Aを見たときには人物Aが貴方の方を向いていれば人物Aからも貴方が見えています。視線が合ったと感じたら間違いなく、向こうからも貴方が見えています。これは、貴方と人物Aとの間にお祭りの人混みの様に多くの人が居たり原生林の様に草木がたくさん茂っていても同様です。ですから、塀や家屋などに身を隠して小さな隙間から覗く以外は、相手からも容易に貴方が発見されてしまうことになります。
では、なぜ、一方からしか見えないカーテンやマジックミラーが作れるのか?というのがこのページの主題です。

マジックミラーで一方からしか見えないしくみ

貴方と人物Aを隔てるマジックミラーやカーテンが、半透明かつ適度の光を反射するもであり、かつ、貴方と人物Aが居る環境の明るさによって一方からしか見えない窓やカーテンが成立するのです。
下の図がマジックミラーの原理図です。
マジックミラーの原理図
明るい部屋に居る人物Aから出た光(赤線)は強い(光量が多い)ので半透明鏡(マジックミラー、ハーフミラー)でその多くが反射されても一部が暗い部屋に居る貴方に届きます。 暗い部屋に居る貴方からの光り(青線)も半透明鏡を通過して一部が人物Aに届きます。 しかし、貴方からの光は暗い部屋に居るために弱い(光量が少ない)、かつ、人物Aは明るい部屋に居るために半透明鏡から強い反射光を受けています。強い反射光に混じっている貴方からの弱い光は認識し難いので、人物Aからは貴方が見えないことになります。
たとえば、半透明鏡は反射率50%透過率50%、貴方からの光量10、人物Aからの光量は100とすると、 人物Aは半透明鏡で反射してくる邪魔な光量50の中から貴方から来る光量5を見なければなりません。 一方、貴方は人物Aから半透明鏡を通過して来る光量50を見ることが出来ます。半透明鏡からの反射してくる邪魔な光量5なので楽に見えます。

プライバシー保護用カーテンの場合

半透明鏡のようなカーテンを作ると、夜間は室内が明るく外は暗くなるので、外から室内が見えてしまいます。 遮光カーテンにしてしまえば外に光が漏れないので屋外から室内は見えませんが、遮光以外では、光を乱反射して散乱させるような糸を織り込むなどして室内の光をカーテン内で散乱させてしまえばよいことになります。 この場合は昼間の屋外の方が明るいときでも外は見えません。屋外からの光はそのまま通し、室内からの光は散乱させるような特殊構造の織り方をすれば別ですが

簾で屋外から室内を見えづらくする方法

夏に日除けに掛ける簾でもまっじくミラーと同じ理屈で一方からは見え難くなります。
下図の左側が屋内、中央に簾、右側が屋内です。屋内は屋外より暗いという前提です(昼間)
簾が目隠しに出来る仕組みの説明図
屋外から簾を見る人は、簾を通過してくる屋内からの弱い光より屋外の光が簾に反射した強い光を見てしまいます。
他方、屋内の人は、弱い屋内の光が簾に反射した光より屋外の強い光が簾を通り抜けてきた光りの方が強いので、簾を通過した屋外の光を見てしまいます。

簾を目隠しに使う場合の注意点は、夜間は昼間と逆になってしまうということです。すなわち、暗い屋外からは照明で明るい屋内がよく見えてしまいます。 簾は、光を通さない葦(または竹)を使っているので、マジックミラーで明暗が逆になったように完全に見えてしまうことは無いのですが、良く晴れた昼間とは違うことだけは知っておいた方がよいです。