水が沸騰する理由と 真空乾燥と圧力鍋の原理

お湯を沸かす時に水から泡が出て来ます。(湯を沸かすのか?という言葉の話は横に置いて)
液体の中からその液体が気体になって出て来ることを「沸騰」と言います。そして、気体になった水を水蒸気と言います。
空気と接している面から気体になる現象は気化です。
沸騰は、水に限らず、液体なら起きる現象です。

では、なぜ沸騰という現象が起きるのでしょうか?
やかんや鍋に水を入れて、ガスや電気で水を加熱すると、熱エネルギーを貰った水分子の動きが活発になります。液体の水という安定した状態のところに熱エネルギーを貰うのでそのエネルギーを運動エネルギーに変えて消費する訳です。
ところで、液体の水は、水分子同士の結合が弱い状態です。結合が弱いので、どんな形の容器にも隙間なく入れることが出来ます。
水分子が熱エネルギーを貰って動きが活発になると、水分子同士の結合が切れて、各々の水分子は、四方八方ランダムに動き回り、周囲の、まだ、液体の水分子を押して激しく動き回る水分子だけの空間を作ります。
気体になった水は水蒸気です。
これが、湯を沸かしているときに見える水中の泡です。

この泡が出来るためには、周囲の液体の水から受ける圧力に打ち勝つ力が必要です。
周囲の液体の水には、その部分より上の水の重さと大気圧が掛かっているので、これらの力より強くなければ泡を作ることは出来ません。
今回の説明では、やかんや鍋は水が入る部分の高さが小さいので水の重さを無視して、大気圧だけが掛かっているとします。
沸騰の説明図2
すると、水中で水が気体になるには(沸騰するには)大気圧より圧力が高ければよいことになります。
1気圧では、摂氏100度が沸騰する温度になります。
温度というのは、分子がたくさんあるときの分子が持つエネルギーの平均値の目安です。

真空乾燥の原理

液体の水が沸騰するには大気圧より高い圧力が液体の水中で発生すればよいです。
ということは、大気圧を小さくすれば温度が低くても沸騰することになります。
大気圧を小さくすることは出来ませんが、頑丈な密閉容器に水を入れて、この容器の中の空気を抜いて行けば大気圧が小さくなったのと同じになり、水を加熱しなくても沸騰します。
沸騰は液体が液体中から気体になることですから、水の代わりに果物にすれば、果物に含まれている水分が低温のまま気化して果物は乾燥します。
真空乾燥の利点は、食品では加熱しないので高温に弱い栄養素が失われないことです。

圧力釜の原理

調理器具の一つに圧力釜とか圧力鍋と呼ばれるものがあります。
これは、頑丈な密閉した容器に食材と水を入れ、ガスコンロなどで加熱するものです。
密閉容器の中の液体の水分子は、加熱によって熱エネルギーを貰い、気体になって液体の水から出て行きます。
しかし、容器は密閉されているので気体の水分子は容器の空間内に増えて行きますが加熱は続くので、容器内部の気圧は大気の1気圧を超えます。この時の気圧は、水蒸気圧です。
気圧が高くなると、液体の水分子が気体になるには更に熱エネルギーを必要としますが、加熱は続くので液体の水分子は気体になって容器内部の気圧は高くなり続けます。
気体の水分子の平均温度は100度以上の高温になります。
高温と高圧によって食材の細胞が壊れるために、普通の鍋や釜を使うより調理時間が短縮される上に硬い食材でも柔らかくなります。

圧力鍋や釜の欠点は、圧力が高くなり過ぎると危険なことです。
ですから、圧力鍋や釜には圧力が設計値以上に高くなったら気体の水分子(水蒸気)を外に出して内部の圧力を下げる安全弁が付いています。
最も簡単で安全性が高いのは、蓋の一部に小さな孔を開け、その孔を塞ぐように錘を置くものです。
圧力鍋の安全弁のイメージ
内部の水蒸気圧が高くなると蓋の小さな穴を塞いでいる錘を押し上げようとします。設計した気圧で上がってしまう重さの錘にして置けば、内部の水蒸気圧が上がり過ぎれば錘が上がって水蒸気を逃がして内部の気圧が下がり、内部の気圧が下がり過ぎれば錘が自身の重みで下がって孔を塞いで気圧を高くします。
家庭用の製品では、内部の圧力は高いもので1.7気圧ぐらいで、1.2気圧ぐらいのものもあります。

電気を熱源として加熱時間を制御している電気圧力鍋(釜)は、加熱し過ぎることが無いので更に安全に使うことが出来ます。