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自動車で曲がる時に外側に押し付けられる理由、遠心力とは

自動車に乗っている時に右或いは左に曲がる時に曲がる方向とは逆方向に身体が押し付けられるのを経験した方は多いと思います。
自動車の速度が速く、曲がる角度が大きいほど強く押し付けられます。
この曲がる方向とは逆方向に押し付けられる力を「遠心力」と言っていますが、・・・
遠心力の説明には、円上を等速運動する物体には円の中心に向かう力(向心力)があり、向心力との釣り合いで見かけの力(遠心力)があると説明します。遠心力は自動車に乗っている人が感じる見かけの力です。

ところで、5円や50円硬貨に縫い糸を結びつけて円を描くように振り回したときは円の中心(糸を持った指先)と硬貨の間に力が働いていて、それとは逆方向にも力(遠心力)が働いているのは容易に推測できますが、自動車を運転している時は曲がる方向に自動車を動かしている自覚はありますが、身体が押し付けられている逆方向、すなわち自動車を真横に動かしている気はしません。自動車の進路変更具合を見ながらハンドルを動かしているだけです。自転車でも同様です。
下図のように、位置P1で速度v1、位置p2で速度v2、という感じです。
カーブを曲がる時の速度の方向図
この様に判らないときは数学の力を借りることにします。

曲がっているときに自動車の進行方向に直角に力が働く理由

上図では解析しづらいので、速度図(ホドグラフ)を作ります。ホドグラフは、速度を表すベクトルのP1,P2,...Pnという位置を1点に集めて描いたものです。速度の向きや大きさは変えません。
隣接した位置2点だけで描くと、
ベクトルで表した速度のほどグラフ
或る時刻の速度を$v$として、それから極々短い時間$Δt$が経っての速度を$v + Δv$とします。速度の変化は$Δv$で、ベクトルで図示すると上図になります。
自動車がS字運転やジグザグ運転しても極々短い時間変化で考えれば、完全に直進していない限りはどこかに中心Oを持った円の一部(円弧)になっています。中心Oまでの距離$R$が何メール何百メートル有るか判りませんが、円の一部で、その円弧が中心と為す角度は$Δθ$です。

$Δθ$になる理由は下図を見てください。
遠心力と向心力を解説する図
速度の向きは必ず円の接線方向ですから、
∠OAC=∠OBC=90度 ・・・式1
四角形O-A-C-Bの内角の和は360度ですから、
∠AOB+∠OBC+∠BCA+∠OAC=360度 ・・・式2
式2に式1を代入すると、
∠AOB+∠ACB=180度 ・・・式3
一方、∠DCB+∠ACB=180度 ・・・式4
式3から式4を引くと、
∠AOBー∠DCB=0
故に、∠AOB=∠DCB

変化した速度$⊿v$を円弧状の接線方向の速度$Δvt$と、接線と直角の法線方向の速度$Δvn$に分解します。(円弧上を走る自動車は円弧の接線方向に走っています)

$Δθ$は極々小さい値なので、ラジアンで表した$Δθ$を三角関数の引数に入れて計算しても$Δθ$とほぼ同じなので、
$$ Δvn = vΔθ \tag{式5} $$ 2点間の距離$Δs$ は、$Δθ$が極々小さいので $$Δs = RΔθ \tag{式6} $$ 式5に式6を代入して $$ Δvn = Δs \frac{v}{R} \tag{式7} $$ 法線方向の加速度$αn$は、$Δvn$を時間$t$で微分して $$ αn= \frac{Δs}{Δt} \frac{v}{R} \tag{式8} $$ 距離$Δs$を時間$t$で微分すれば速度$v$になるので、式8は $$ αn= \frac{Δs}{Δt} \frac{v}{R} = \frac{v^{2}}{R} /tag{式9} $$
$R$は曲率半径なので、自動車が曲がるときには、自動車の速度$v$の二乗に比例し曲率半径に逆比例した加速度が円の中心に向かって掛かることになります。速度方向とは直角方向なので、自動車に乗っている人から見れば曲がる方向の真横向きです。
遠心力は中心に向かって働いている加速度と釣り合って働くので、自動車に乗っている人は曲がる方向とは逆の真横に力を受けます。(自動車は円弧上を走っているので、それとは直角の法線方向上で、向心力と遠心力が釣り合っている)