安価なパルス バッテリー修復器の効果は

(2020年12月28日作成 2021年8月8日更新)

2020年の晩秋、アマゾンを覗いていたら
「kawish KF-2C 充電器 - フルオートカーバッテリー充電器12V/24V10Aのインテリジェントパルス修理バッテリーチャージャートラックオートバイ充電器」
に目が留まりました。私が購入したものは売り切れですが、12月末時点では「インテリジェント バッテリー パルス修復」をキーワードでアマゾンで検索すると、ブランドや筐体に書かれた文字は違いますが、筐体、電圧等の表示、スイッチやランプの数と配置がそっくりな物が幾つか見つかりました。廉価な製品にはブランドが違っても筐体や電子回路基板は同じというのがよくありますから、私が購入した物と同じかも知れません。
Kawish KF-2c外観写真
スマホでの近接撮影なので歪んで写っていますが、金属製の四角い筐体です。
左側の赤い物はマニュアルとオートを切り替えるスイッチ、その右側は電圧値と電流値、バッテリーの容量をパーセントで表しています。
この充電器で示される容量は、サルフェーションが生じていない新品のバッテリーの電極間開放電圧と容量の相関関係から割り出したものと思われます。ですから、サルフェーションがたくさん生じていて電流が取れない状態でも開放電圧が13V以上あれば容量100%になります。
右側にある9つの白い物は、一見するとボタンの様に見えますが、作動状態を表示するLEDランプです。

早速、自動車から外したまま放置していたバッテリー(40B19)で試してみました。
実験用バッテリーを普通の充電器で一晩充電して内部抵抗を測ってみると、
202012281730バッテリー内部抵抗計測写真
電圧は12.81V、内部抵抗は約40mΩ、容量は40%ありません。

マニュアルでの充電(2020/12/28 17:30)

この実験用バッテリーにkawish の充電器を接続してみました。
先ず、オートにしてみましたが、容量100%で、充電電圧14.1V、充電電流1Aを示してトリクル充電状態を示すランプが点灯しました。 これでは、普通の充電器と変わらず、バッテリーが回復する見込みがないように思えたので、マニュアル充電に切り替えました。
容量95%、電圧16.1V、電流1.5Aを示して充電中のランプが点滅し出しました。しかし、数分後、トリクル充電に切り替わってしまいました。
「買ったのは失敗だったかな?」と思いながら、オシロスコープでトリクル充電中のバッテリーの電極間を測ってみました。
Kawish充電器の出力波形
マニュアル充電ではトリクル充電中でも、約16Vの電圧に加えて、約150kHz尖頭値が4~5Vのパルスが出ていました。
私が自作したパルス充電器より充電電圧は高く、パルスの周期も短いです。自作したものはスイッチング用MOS-FETの耐電圧や損失電力が小さいので、 電圧を上げたり、パルスの周期を短くすると冷却フィンを付けないと焼けてしまいます。その代わり、自作したパルス充電器は、 車に載せたままで使えるので乗らないときはバッテリー端子にワニ口クリップで挟んで置くだけで劣化を防止できます。

30分ぐらいしてふと見ると、充電中のランプが点滅しているではないですか!? ランプは、赤・青・黄の3色が不規則に発光します。
そして、容量値が減りだし、逆に充電電流が増えだしました。
充電開始から3時間後、容量81%まで下がり、充電電流は2.4Aまで増加しました。実際の容量は40%も無いのですから、真値に近づいているのかも知れません。

2020/12/28 20:30

電解液が不足してきたので充電を中断しました。
翌朝6時40分に内部抵抗を測ると、約28mΩでした。普通の充電器でも充電した直後では20mΩ台の内部抵抗値になりましたが、室温が10度以下に一晩放置しての20mΩ台は驚きました。パルス充電の効果でしょう。

2020/12/29 10:00

バッテリーに補充液を足してマニュアルで充電開始。
10分間ぐらいは充電ランプが点いていましたが、その後はトリクル充電に変わりました。容量93% 充電電流1.2A 充電電圧16.1Vを示しています。このまま充電器に接続しておきます。
外出から帰宅した13時過ぎ、充電中を表すランプが点滅していました。充電電流2.1A 充電電圧16.1V 容量83% バッテリーの筐体表面温度は室温より10度高い23度でした。単純計算してもバッテリーは30W以上消費しているのですから発熱して当然です。

2020/12/29 20:00

充電電圧16.2V 充電電流3.5A 容量70%になりました。
軽く締めて置いたバッテリーの蓋の隙間から電解液が少し噴き出ていたので、今日の充電はやめました。
普通の充電器では、16Vで充電を始めても直ぐに1A程度しか流れなくなってしまうので、充電電流が増えて行くのはパルスを掛けている効果だと思います。

2020/12/30 06:30

昨日20時に充電を止めて放置しておいたバッテリーの内部抵抗を測ってみました。
202012300630バッテリー内部抵抗計測写真
内部抵抗25.8mΩ 電圧13.21V 容量50%
バッテリーに注ぎ込んだ電力の割には残念という気はしますが、1日前と比べると、内部抵抗、容量ともによくなっています。
そこで、マニュアル充電からオート充電に変えてみました。トリクル充電中でもパルスは出ています。
kawish 充電器 トリクル充電中のパルス波形
しかし、3時間経ってもトリクル充電のままでした。
容量が50%でトリクル充電では使い物になりません。トリクル充電中のバッテリー電極間の電圧は13.9Vでした。若干高めの電圧ですが、繋ぎっぱなしに出来る電圧で、パルスが加わっているのでサルフェーションがゆっくりと除去されると思います。

「押して駄目なら引いてみな」といわれますが、バッテリーを放電させることにしました、無駄に放電させるのは勿体ないのでDC-ACインバーターを介して電気アンカに繋ぎました。電気アンカは、コンバーターの出力が正弦波では無いので昔ながらの機械式温度調節の安物です。
同日16時30分、電気アンカで放電を止めて、オートで充電を開始しました。充電電圧13.9Vで一定でしたが、充電電流は5Aぐらいから徐々に減り始め、 1時間ほどでトリクル充電に変わったのでそのまま充電器に接続しておきました。

2020/12/31 06:30

昨日の16時30分から充電器にトリクル充電で接続したままのバッテリー内部抵抗を測ってみました。
202012310630バッテリー内部抵抗計測写真
31日の朝は冷え込んでいてバッテリーの筐体表面温度は、トリクル充電を止めた直後でも6.5度でした。
容量は増えていませんが、内部抵抗が25.8mΩから23.7mΩに下がりました。内部抵抗は、このパルス修復器と謳う充電器に接続する前は40mΩ台だったので約半分まで下がったことになります。
このバッテリーはエンジンが始動する状態で実験用に下したのですが、この時の内部抵抗は10mΩ台だったのでエンジン始動用に復活させるにはまだまだ時間が掛かるのか、それとも無理なのか、実験を続けます。

マニュアルでの充電で失敗 2021/01/01

電気アンカで放電させてからオートの充電でトリクル充電に入った後、マニュアル充電を24時間もしてしまいました。
充電電圧は15.9Vで数秒間は充電電流2A程度流れましたがその後は1.5Aになり殆どの時間は1Aでしたので、蓋の隙間から電解液が噴き出ることはありませんでした。最終の充電電圧は16.2V、充電電流は1Aでした。
24時間充電後、3時間放置して、大幅に内部抵抗が減り、容量も増えているだろう、と期待して測ったのですが・・・
2021101011600バッテリー内部抵抗計測写真
測定写真のとおり、内部抵抗は増し、容量は減ってしまいました。測定器とバッテリーとの接続をやり直しても大して変わらなかったので悪くなったのは確かです。(充電器の容量表示値は95%)
マニュアルのトリクル充電ではパルスが出ているので、悪化した原因は16Vという高い充電電圧だと思います。鉛バッテリーの適正なトリクル充電電圧は13.6Vといわれています。16Vはやはり過電圧でした。

オート充電でも失敗か? 2021/01/06

電気アンカで6時間放電させてから、昼間外出していた為にオートで29時間充電してしまいました。
オートの充電ではトリクル充電に入ると、充電器の計測表示では、充電電圧は約14V、充電電流は0Aでした。もちろん、パルスの電圧と電流が掛かっているので電力消費が0ということはありません。
29時間充電後、3時間放置してから内部抵抗を測りました。バッテリーの筐体表面温度は8.5度
2021101031915バッテリー内部抵抗計測写真
計測写真で判るように、若干ですが、マニュアル充電より容量は増して内部抵抗は26.79mΩから25.87mΩに下がり、開放電極間電圧は高くなっています。
やはり、オート充電がよい、と思ったいたのですが、放電させてから連続して2度目のオート充電では24時間充電しても内部抵抗は下がっていますが、容量はこの充電器を示す値は充電する前と同じになってしまいました。
実際、電気アンカで放電させると直ぐに1時間ぐらいでアンカを温める電力が取り出せなくなってしまいました。

オート充電と放電の繰り返し

内部抵抗が40mΩ以上あったバッテリー(40B19)ですが、一時20mΩ台まで下がりましたが、その後は気温の低下が影響してか30mΩに戻ってしまいました。
オートで充電、電気アンカで放電、そして、オートでの充電を繰り返し、充電後の内部抵抗を測ってみました。バッテリー修復器と謳われている製品ですが、40mΩ台まで内部抵抗が上がってしまったバッテリーは回復しないかな?

日時 容量 内部抵抗 表面温度 開放電圧
2021/01/08 16:00 50% 33.68 10.3 14.49
2021/01/09 07:30 50% 31.26 5.3 13.96
2021/01/09 16:00  50% 30.42 8.6 13.73
2021/01/10 08:00 40% 32.99 4.3 13.62

充電と放電の繰り返しを止めました

上記の様に充電放電の繰り返しでも良くならないので、トリクル充電でもパルスが出ているので、トリクル充電を約5日間継続してみました。

日時 容量 内部抵抗 表面温度 開放電圧
2021/01/10 17:43 40% 32.30 5.0 13.66
2021/01/15 16:04 40% 34.08 8.9 13.79

上記の様に5日間でも好転の兆しが見られません。この充電器では内部抵抗が40mオームを超えたバッテリーは回復しないようです

内部抵抗10mΩ台の鉛バッテリーの場合

カインズホームで購入して一度も車載しないまま劣化したバッテリー(地球1周バッテリー)で、バッテリー修復器を謳うKF-2C充電器を試してみます。計測結果から判断すると、エンジン起動用に使えますが、今、自動車で使っているバッテリーの内部抵抗は4mΩ台なので5mΩより小さくしたいです。
20210115カインズバッテリーの内部抵抗計測写真
充電を開始後、しばらくすると、Idle Mode のランプが点きました。説明書のIdle Mode の説明がありません。

日時 週目 容量 内部抵抗 表面温度 開放電圧
2021/01/15 16:07 0 100% 10.70 8.3 13.03
2021/02/05 16:09 3 100% 10.23 9.4 13.85
2021/02/12 16:34 4 100% 9.93 9.9 13.84
2021/02/19 17:06 5 100% 9.75 9.5 13.85
2021/02/26 17:20 6 100% 10.22 9.7 13.85
2021/03/19 19:49 9 100% 9.87 14.1 13.81
2021/04/09 17:40 12 100% 9.24 14.4 13.81
2021/04/30 18:10 15 100% 9.63 18.8 13.78
2021/07/23 18:00 27 100% 10.13 29.8 13.65

27週に渡って接続し続けました大した変化なしでした。内部抵抗が10mΩぐらいならエンジンは始動しますが、これがこのバッテリーの回復限界なのかも知れません。もう少し、低くなることを期待したのですが、、、

 

もしかして、Idle だからパルスが止まっているかも? と思って充電を止める前にバッテリーに接続した状態でオシロスコープで測っておきました。
20210117トリクル充電中のパルス波形
上のオシロのキャプチャーのとおり、電圧14Vに尖頭値約17Vのパルスが載っています。
dle Mode状態の充電器から切り離して1時間ぐらい放置してから測ると直ぐに測った値より内部抵抗は若干小さくなります。この時はバッテリーの電極間開放電圧は13.5Vに下がっています。
内部抵抗は気持ち小さくなりつつありますが、バッテリー修復器と謳っていますが、なかなか内部抵抗が減らないのは私が自作したパルス充電器と変わらない?I
しかし、12V10Aの出力が取れる電源+簡単なパルス充電回路+逆接続防止付き は、2980円では自作できませんから、もう少し充電を続けてみましょう・・・

内部抵抗5mΩのバッテリーには効果があった

自作パルス充電器を接続したまま2か月近く走らせていないミライースのバッテリの内部抵抗を測ったら、なんと!5mΩになって居ました。
8月の気温ですから4mΩ前半ぐらいだと思っていたので愕然としました。
もしや、と思い、オシロスコープで自作パルス充電器の出力波形を見てみると、数10mVのパルスが出ているだけ、青空駐車のボンネットの中で出力用MOS-FETが飛んでようです。
去年は大丈夫だったのですが、温度が上がると抵抗値が増すポリマPTCのポリスイッチをかませないと駄目なようです。
自作パルス充電器が壊れてしまったので、kawish KF-2C 充電器に12時間ぐらい接続して置いてから内部抵抗を測ると3.3mΩまで下がっていました。