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DCモーター扇風機の構造とメリット・デメリット、従来型扇風機との消費電力比較

特別流行り物が好きという訳ではありませんが、DCモーター扇風機の消費電力の少なさに心惹かれて、近くの量販店で一番売価が安かった「RD-BDC3001W」というDCモーター式リビング扇風機を買ってきました。(2018年6月)
気になる消費電力は仕様書によると19Wです。消費電力が小さくても風が弱ければ意味は無いのですが、この事は後ほど検証します。

DCモーター(Direct Current Motor)というのは直流で動くモーターで、 従来からある扇風機はACモーター(Alternating Current Motor)、交流を使ったものです。
扇風機に直流モーターが使われるようになったのは、なぜでしょうか?
回転数を容易に変えられ、動き出し始めでも力があるなどの直流モーターのメリットは昔から知られていて、電車の走行用モーターや電気ドリルなどの工具には使われていました。
最近になって家庭用扇風機に? 答えは、電気使用量を気にする消費者心理と直流モーターを作動させるために必要な電子部品が安価になったことです。
電気モーターは周知の様に磁石の同極間の反発力と異極間の吸引力を利用しています。 これは従来からある交流モーターを使った扇風機も同様で、小学生の頃に理科の時間に作ったモーターもまったく同じ原理です。

従来型扇風機のモーターの原理・しくみ

従来型の扇風機用モーターは、誘導モーターを利用していることです。 これは、「変化する磁界の近くに置いた金属にはその磁界を妨げるように電流が誘起し(電磁誘導によって渦電流が生じます)、その電流によって磁界が生じる」という現象を利用しています。 変化する磁界を作るのは家庭のコンセントまで来ている交流100Vをそのまま利用しています。 交流を使った電磁石です。この電磁石の近くには金属で作られた円筒形の回転するものを置き、交流電磁石と円筒形金属の間で働く磁力の反発力と吸引力で羽根を回転させています。
交流誘導モーターの原理図
ただし、これだけでは回転しないので、磁力の方向を動かすために電磁石を流れる電流の位相を進めるコンデンサーが1個必要で、コンデンサーを通して電源に接続する電磁石によって回転方向が決まります。
この様に誘導モーターは、交流用電解コンデンサー1個と数個の交流電磁石と円筒形の金属だけしか必要ありません。
誘導モーターを使った従来型の扇風機は構造が簡単なので壊れるところは、モーターと羽根の軸受けとスイッチぐらいなものです。ですから、何十年も前の扇風機が未だに現役だったりします。
ところで、上図の回転する部分を電動子または電機子と呼んでいます。
誘導モーターは構造が簡単でよいのですが、電動子を磁石にするエネルギーは本を正せばモーターに接続している電源から得ているもので、 しかも、電磁石からの電磁誘導によっているので損失があります。

ブラシ付き直流電気モーターの原理・しくみ

扇風機にDCモーターが使われるようになった理由を考える意味から、直流電気モーターの原理を復習してみます。
小学生が理科の時間に作るモーターは下図のようなものです。
整流子付き直流モーターのしくみの説明図
直流電源からの電気はブラシを通って整流子に接続し、整流子に接続された電磁石のコイルを通り、整流子からブラシを通って電源に戻ります。
整流子は回転軸と一緒に回転し、ブラシは回転する整流子に接触して電気をコイルに流します。整流子とブラシは、電磁石が回転するとコイルに流れる電流の向きを反対にする役割を持つ、機械式の回転スイッチです。
今、上図の様な状態だとします。
電磁石と永久磁石の異極が向かい合っているので、電磁石と永久磁石は引き合っているので動きません。
そこで、手でちょっと電磁石を回してやると、

回転することによって整流子とブラシの接触する位置が変わるので、電磁石のコイルに流れる電流の向きが逆になり、電磁石のN極だったところがS極に、S極だったところがN極に変わって、電磁磁石の磁極を持った部分が永久磁石に引っ張られて回転します。動いている物は止まらないので(慣性の法則)、N-S極で引き合った部分を通り過ぎて、再び、整流子とブラシの接触位置が変わってコイルを流れる電流の向きが反対になって電磁石の極性が変わって回り続けます。
直流モーターの原理説明のために、外側の永久磁石と回転する電磁石にそれぞれ2極しかないモーターを使いましたが、 かなり無理な作りで、電磁石の角度によって回り始めなかったり、負荷が掛かれば止まってしまうことがあるので、 このような2極のモーターは動き出したら止まり難くするようなはずみ車を連結させないと玩具にもなりません。市販されている模型用モーターでも3極以上になっています。

ブラシ付き直流モーターのデメリット

今まで説明してきた直流モーターのデメリットは、電動子のコイルに流す電流の向きを変える整流子とブラシにあります。 モーターが回転中は、整流子とブラシは接触して回転し続け、家庭用扇風機に使えば数百ミリアンペアーの電流が流れ続けます。
整流子とブラシは整流子が回転するために完全に密着させることは出来ないので、 電気の流れを邪魔する接触抵抗が大きく、流す電流の二乗に比例して発熱、放電によって高温になり、で劣化が早くなるので整流子とブラシの定期的交換が必要です。
また、 コイルに流れる電流を切るときには電波の不要輻射がありラジオテレビにノイズを与え、整流子とブラシの間に埃が入り込めば発火することも考えられます。
メンテナンスをしない家庭用扇風機では都合の悪いことばかりです。
そこで、発想を変えます。回転する電動子に永久磁石を使い、永久磁石だったところに電磁石を使います。

上図の左右の 電磁石に直流電流を流しただけでは動かないので、電磁石のコイルに流す電流の向きを、左右が逆になるように周期的に変えます。 電流の向きを切り替えるには大電力を流せるトランジスターなどの半導体デバイスをスイッチとして使います。
こうすると、整流子とブラシという機械的なスイッチが必要無くなるので耐久性が増して使いやすくなります。 その代わりに、スイッチの役割をさせるトランジスターなどの半導体素子、 それを制御する電子回路、モーターと電子回路動かすために商用100V交流を直流にする回路などが必要になってコスト高になってしまいます。

「RD-BDC3001W」DCモーター式リビング扇風機の筐体を外してみた

羽根を回すDCモーター部分は
DCモーター扇風機モーター部分
中央の金属筒状の物が羽根を回すモーターでDC24V、その右側には首振り用モーターAC100V4Wがあります。
羽用モーターから黒線と赤線、青線の三本のコードが出ていました。赤線と黒線はモーター駆動用電源に接続し、青線からはモーターの回転数に比例した信号が出るのでしょう。
交流100Vを直流低電圧に変換する部分は扇風機の台部分にありました、下写真の左、制御回路は右部分。
DCモーター扇風機の台部分の電子回路部分

従来型の扇風機とDCモーター扇風機の風力と消費電力

それぞれの扇風機の風量を最強にし、扇風機の正面から50cmの距離で一番強い位置での風速と消費電力です。
風速消費電力
従来型3.7m/s39.5W
DCモーター4.9m/s15.1~15.7W

風速計は、URCERI MT-915 。消費電力計は、SANWA SUPPLY TAP-TST5
風速・風量は羽根の形状によっても変わりますが、DCモーター扇風機は消費電力が少なくて風速は従来型以上にあります。

DCモーター扇風機の最大のメリットとデメリット

DCモーター扇風機と誘導モーターを使った従来型の扇風機を比較していておもしろいことに気づきました。
DCモーター扇風機のメリットは消費電力が少ないことですが、このメリットをもっとも享受出来るのは風量が少ないときです。
手許にある従来型の扇風機の風量「弱」のときの消費電力は29Wですが、DCモーター扇風機では3Wでした。 弱でも風量は従来型の方が多いですが、風が僅かに当たっているだけでよいときにはDCモーターの消費電力の少なさが生きます。 首を振らせると、首振り用モーターの消費電力が加算されて5.5Wになってしまいますが、従来型の5分の1の消費電力ですみます。
しかし、 従来型扇風機はリモコン付きでも3千円台で買えるので、消費電力の差からくる電気代で元を取るのは難しいです。
DCモーター扇風機のデメリットは言うまでも無く高価な事ですが、部品点数が多いので故障する確率が高く、故障したら直し難いことです。DCモーターが故障しただけで直せないかもしれません。
に対して、安価で購入できる、電源スイッチまで機械式の扇風機なら半田鏝とドライバーだけで直せてしまうことが多いですから