電子回路・デジタル回路からのノイズを防ぐ方法

1つの筐体はもちろん、1つの基板内にデジタル回路とアナログ回路が組まれていることは珍しくありません。そこで問題になるのが、デジタル回路からアナログ回路へのノイズの混入です。デジタル回路は、電圧が矩形波になっている電気で動いています。その矩形波は、高い周波数に渡っている正弦波の集まりなので対策を施さないと回路内に伝搬、空間には不要輻射をし、ノイズの発生源になります。
受信周波数をPLLで制御している市販の中波や短波帯の受信機(ラジオ)を弄っていると、デジタル回路からのノイズをよく防いでいると思ったり、これは内部ノイズだろうと思うことがあります。

ノイズを抑える方法で直ぐに思いつくのは、
  • コンデンサーで高周波のノイズ成分をGNDパターンに落とす
  • ノイズが電磁波の輻射となって空間を伝わる場合は金属板で遮蔽する
  • 電磁誘導で伝搬する場合は磁性体で遮蔽する
  • 電子部品の取り付け位置や方向を変える
などしますが、難しいのがGNDパターンや電源ラインからの混入です。

狭いGNDパターンと立ち上がりが早いデジタル信号はノイズ発生の原因になる

基板上の電源(マイナス)線にノイズが乗るのは、銅箔(銅線)に電気抵抗があり、その上、高い周波数ではコイルとして働くからです。
電子回路のアースにノイズが乗る理由
IC1からIC2に高い周波数のデジタル信号を伝達する回路では、電源マイナスラインに抵抗R1の他にコイルL1、IC2の入力とマイナスラインとの間にコンデンサーCを考えて上図の様になります。
デジタル信号は矩形波なので広帯域の周波数成分を含んでいます。その中で、 Inで示したループで作られた共振回路に同調した周波数が電源マイナスラインに多く流れ込んで他の回路にも伝搬してコモンノイズの原因になります。

このノイズを少なくするには、
  • 基本的には電源マイナスラインのL1を少なくすることで、そのためには電源マイナスラインの面積を出来るだけ広くとります。 多層基板にして1面全てをマイナスラインにするのが効果的です。
  • 上図の抵抗R0を大きくする。大きな抵抗を入れると、共振してもあまりインピーダンスが下がらないのでマイナスラインに流れ込む電流が少なくなります。
    大きな抵抗を入れると伝達する信号も小さくなってしまうので、抵抗の代わりに環に作ったフェライト(フェライト・ビーズ)を通して高い周波数成分だけ通り難くする。
    フェライトビーズによって高い周波数成分だけ小さくすると、矩形波に鋭さが無くなるので次に示す対策になる。
  • 伝達するデジタル信号の立ち上がり時間を長くする。
    デジタル回路のノイズ対策 矩形波の立ち上がり時間を遅くする
    マイナスラインのノイズを少なくするには上図のコイルL1の両端に生じるノイズ電圧を低くすればよいのですから、コイルの電気特性から解るようにコイルに流れる電流の変化を遅くすればL1の両端電圧は低くなります。ですから、必要も無い高スペックのデバイスを使うのも考え物ということになります。

デジタルデバイスへ供給電圧の変動を抑えるとノイズも抑えられる

改めて言うまでも無く、デジタル回路は出力電圧を、短い時間に、たとえば、0Vから5V、5Vから0Vと大きく変化させています。ということは、デジタル回路に供給する電源の電圧電流も短い時間に大きく変動しているということです。
電源ライン(パターン)にもコイルと同じ作用をするインダクターがあるので、前項と同じ、電源ラインに流れる電流が変化するとノイズの原因になります。
電源ラインからのノイズを抑える方法
このノイズを抑えるには、ICやLSIなどのデジタル素子の電源供給端子V+とV-間を最短でコンデンサーCを繋ぎます。こうすると、デジタル素子に十分な電流が供給されている時にはコンデンサーCが充電され、デジタル素子が大きな電流を必要とした時にはコンデンサーCが放電して不足分を賄うので、電源ラインに流れる電流の変動が少なくなり電源ラインのインダクターで発生するノイズが減ります。
コンデンサーの容量の最適値は、コンデンサーに蓄えられる電気量=コンデンサー容量×コンデンサーの両端の電圧 から、
C=(di/dt)/(dv/dt) になりますが、デジタルデバイスのV+とV-間にオシロスコープを接続して電圧の変動が少なくなる値にします。
また、V+端子直近にフェライト挿入して高い周波数成分が電源ラインに流入しづらくします。
パソコンのCPUが付いている基板裏側に付いているコンデンサーはこの例で、コンデンサーが不良になるとパソコンが不安定になり、最悪起動しなくなります。

下回路図は、NE555を使ったパルス発振器です。
NE555を使ったパルス発振器のノイズ対策
NE555のVccとGND端子間に1000μFのコンデンサーC(上図の赤字C)を接続して電源+パターンのL2に流れる電流をシュミレートしてみました。下図のとおり、大容量コンデンサーを接続すると、ノイズが小さくなっています。電源マイナスパターンのL1は逆相でL2と同じ状態になっています。
デジタル回路のノイズ対策電源端子に大容量コンデンサー
デジタルデバイスの電源端子間に接続するコンデンサーCは、ノイズをマイナスパターンに流すパスコンでは無くて、 デジタルデバイスに特有のスイッチング動作に伴う電気需要の急激な変化に近くで対応する電池になっています。コンデンサーCが無いと電源線(パターン)がノイズ放射アンテナになり、 また、電源を共有する他回路にノイズを与えます。