沿面放電を利用した小型オゾン消臭機を分解してみた(FT61)

2022年7月12日作成

FT61という小型のオゾン脱臭機の筐体を開けて分解してみました。
市販されて居るオゾン発生機には、無声放電を利用した物と沿面放電を利用した物があります。
もっとも、無声放電というのは放電中に音を発生しない放電のことなので、沿面放電も無声放電の一種です。
簡単な蛍光灯に使われているグーロ管に見える青紫色の放電は無声放電ですが、雷は音を立てるので無声放電ではありません。

オゾン発生での無声放電と沿面放電の違い

オゾン発生に於いて、無声放電と沿面放電の違いは、無声放電では放電が起きている空間に酸素を含んだ空気を通すのに対し、沿面放電では酸素を含んだ空気が放電に触れるということです。
下図は。無声放電によるオゾン発生器と沿面放電によるオゾン発生器の仕組みです。
無声放電と沿面放電によるオゾン発生の仕組みを表した圖
放電に必要な電源は、沿面放電で1kV以上、無声放電ではもっと高電圧が必要です。交流の周波数は、沿面放電で1~10kHz、無声放電では沿面放電より低いです。(パルスが使われることもあります)
電極には金属が使われますが、周波数が高い電流は電極表面を流れる性質があるので導電率が良い金属が適しています。
誘電体は、簡単に言うと絶縁物ですが、ガラスやセラミックが使われています。
上の無声放電の図では上の電極だけに誘電体を貼っていますが、放電による電極の損傷を防ぐために下の電極にも誘電体を貼ることがあります。

無声放電式では、放電は電極に挟まれた広い部分(上図の水色部分)に生じ、この部分に酸素を含んだ空気を通すので単位時間あたり多くのオゾンが発生します。
沿面方式では、放電は線状電極の周囲に生じるだけで、この部分に酸素を含んだ空気を通しても単位時間あたり少しのオゾンしか発生しません。

無声放電式オゾン発生器は、オゾン発生量は多い、電極を誘電体で覆ってしまえば電極の劣化が少ない、オゾン発生量が周囲の湿度の影響を受け難いというメリットがありますが、高い電圧が必要で放電部分が複雑なので製作費用が高くなるというデメリットがあります。
他方、沿面放電式オゾン発生器は、オゾンの発生量が少ない、放電と副生物の影響で線状電極が使用時間に連れて劣化してオゾン発生量が少なくなって寿命が短い、周囲の湿度が高くなるとオゾン発生量が少なくなるというデメリットがありますが、放電部分が簡単なので製作費用が安いというメリットがあります。

メンテナンスについては、無声放電式は放電部分を水で洗浄すればオゾン発生量が復活します。
沿面放電式は、歯ブラシなどで線状電極周囲に出来た副生物を取り除くことしか出来ません。

FT61というオゾン脱臭機を分解

F体を剥いでみると、
オゾン脱臭機FT61の内部写真
制御部、高圧交流発生器 、沿面放電部、送風機、リチウム充電池(制御基板の下)が入っています。
制御部は、オゾンを発生する時間の制御、リチウム充電池の充電、リチウム充電池から5Vを作っています。

高電圧発生器には下写真のように「Ozone Generator」、入力が直流5Vと判るだけで型番等がありません。
高電圧発生ユニットの写真
エナメル線を巻いたコイルが見えるので、圧電トランスによってある程度の高電圧を作ってから電磁誘導を利用したトランスで更に電圧を上げているか、テスラコイル(テスラ変圧器)によって高電圧を作っているのかもしれません。
圧電トランスというのは、電圧を加えると歪が生じる物質と歪が生じると電圧を生じる物質を貼り合わせて作った電圧変換器です。液晶ディスプレイのバックライトに使われていた陰極線管の電源などにはよく使われています。
テスラコイルは、1次コイルと2次コイルを持つ電磁誘導を利用した変圧器の1次コイルを共振させて2次コイルに高い電圧を発生させるものです。
高電圧発生器は通販で買えますから、オゾン発生器を自作する方は購入した方が簡単です。

実際の沿面電極について

さて、オゾンを発生させるのに最も重要な部分、沿面放電部分です。
外観は呆気ないほどシンプルです。
下写真で判るように、セラミックの薄い板の中に幅の少し広い電極が埋め込まれ、セラミックの表面に線状の電極が貼られているだけです。(埋め込まれている電極がよく写るようにカメラの反対側から照明を当てています)
沿面放電式オゾン発生電極の写真
この電極に交流高電圧を印加すると、下写真の様に沿面放電が起きます。
暗くして撮影しましたが、薄暗い程度の明るさでも放電を確認出来ました。
沿面放電が起きている写真
今回、筐体を開けたオゾン消臭機(FT61)では、送風機でこの放電部分に空気を当てています。

沿面放電が線状電極の周囲に起きるのは、電極の周囲の電圧が内部より高いからです。電極が空気と接する部分では電流が流れることが出来ないので電圧が高くなります。
川をせき止めると水が溜まって水位が上昇するのと同じです。
電圧が高くなって放電が始まると電流が流れるので電圧が下がり、電圧が下がると放電を維持出来なくなって放電が止まります。
放電が止まると電流が流れなくなるので電圧が高くなって放電が始まります。
沿面放電を利用したオゾン発生器は、放電部分の電極の劣化が早いので、電極部分だけ購入できれば良いのですが。
ガラス板に銅板を貼って電極を自作出来ないだろうか、などと考えています。
オゾン発生器を自作するときには、無声放電式、沿面放電式共に放電部分が最も難しいと思います。
放電時の電流が大き過ぎたり、実験中に電極間を短絡してしまえば高電圧発生器が壊れますから、この点も要注意です。