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3極真空管を使った簡単なアンプ

2極真空管 は陰極から出た電子がプラス電圧が掛けられた陽極に突入して電気が流れます。
次に、下図のように、二極真空管の陰極と陽極の間に格子電極を入れ、格子電極に陰極に対して負電圧をかけてみます。
三極真空管の原理説明回路
すると、陰極から出た電子は格子電極に邪魔されて一部しか陽極に辿り着けなくなります。
陰極から出た電子は負電荷で格子電極にも負電荷があるので跳ね返される電子が出てくるのです。
格子電極によって跳ね返される電子の数は、格子電極に掛けられたプラス電圧が大きくなるほど多くなります。
具体的には陽極を流れる電流は、陽極電圧と格子電圧を合成した値の2分の3乗に比例します。
また、格子電極は陰極に近いところに設置されているので、陽極電流に対する影響が強く、 このため、格子電極に掛かっている電圧の僅かな変化が陽極電流の大きな変化となります。これが増幅の原理です。
なお、格子電極には負の電圧が掛かっているために格子には殆ど電流が流れません。格子電極に掛かっている電圧だけで陽極電流を制御できるため、真空管は電圧制御素子と言われます。
また、格子電極側から見たインピーダンス(位相持った電圧÷位相を持った電流)は電流が極めて小さいために非常に高くなります。

三極真空管を使った低周波増幅器

三極真空管によるアンプ回路
図の左側の「信号・信号源の内部抵抗」というのは、マイクを接続する場合なら、マイクが信号源でマイクの出力インピーダンスが信号源の内部抵抗です。

格子電極にマイナス電圧を掛ける方法

乾電池などでマイナス電圧を掛ける方法もありますが、乾電池が消耗したら取り替えなければならないので合理的ではありません。
そこで、抵抗RkとコンデンサーCkを真空管のカソードとアース(主電池のマイナス)に入れます。
真空管に電子が流れると抵抗Rkの両端にVrの電位差が生まれます(Vr=陽極電流×抵抗Rk)
電圧の向きはP2点がプラス、P3点がマイナスです。
P3とP1は抵抗Riで繋がっていますから同じ電位(電圧)です。
ですから、真空管の陰極の電位より格子電極の電位の方が低く(マイナス)になります。
コンデンサーCkは陽極電流に含まれる交流分(増幅された信号)が抵抗Rkに邪魔されずに-側に戻るためのバイパス用です。
このコンデンサーが無いと抵抗Rkの両端には交流分の電圧が入力されている信号と逆相に発生して増幅率を下げてしまいます。
これを負帰還と言い、増幅器の特性(歪みなど)を改善し、また発振に繋がる不必要な高い周波数での増幅率を下げることが出来るので大切なものです。

こんな簡単な回路でも巧く設計されたものは良いオーディオアンプになります。 
3極真空管の他にも4極真空管、5極真空管など、陰極と陽極の間に幾つかの格子電極を入れたものがありますが、これらは3極真空管の特性を改善したものです。