半導体とは? 半導体と他の物質の違い

コンピューターを始め殆どの電子機器は半導体で作られています。
では、半導体となんでしょう? 読んで字の如く、「半分半導体」ではありません。
電気を通す良導体と通さない絶縁体の中間の物質でもありません。 実際の半導体の電気抵抗値は良導体と絶縁体の間にあるわけですが、 これだけで半導体と言ってしまったら食塩などが入っているスポーツ飲料も半導体になってしまって或る意味で幸せな世界になってしまいます。

半導体と呼ばれるには、最低でも以下の条件が必要です

  1. 電圧と電流の関係が非線形である
    この場合の非線形というのは、 オームの法則 が成り立たないということです。
    普通の物質ならこの電気抵抗をR,
    この物質に加える電圧をE、この物質を流れる電流 I とすると
    I=E÷R
    が成り立ちますが、半導体は成り立ちません。
  2. 電気抵抗の温度係数が負である
    これは温度が上がると抵抗値が下がる、すなわち電気をよく通すようになるということです。
    例えば、鉄は電気を通します。この鉄の温度が上がると鉄原子の電子の運動が活発になり、鉄の中を通る電子(電気)を邪魔して電子が通り難くなり、電気抵抗値が上がってしまいます。 ところが、半導体は逆で、温度が上がると抵抗値が下がるのです。
  3. 他の金属との接触面で整流作用を持つ
    整流作用と言うのは、時間の変化で電流の向きが変わる交流が一方向に流れる直流に変換されるということです。 逆方向に流れる電流は通さないので逆方向の電圧が掛かっている時間は電流が流れません
  4. 不純物を入れると導電率が大きくなる
  5. 光や温度、磁気などに反応して特有の性質を現す

実用化された半導体には、セレン、ゲルマニウム、シリコンなどがありますが、私の記憶では、セレンは整流に使われたぐらいで、ラジオに使われたのはゲルマニウムが最初だと思います。 ゲルマニウムは融点が低いので純粋なものが作りやすかったのです。私が初めて買ったラジオもゲルマニウム・トランジスターが使われていました。
しかし、ゲルマニウムは熱に弱く70度ぐらいになると使えなくなるので、150度ぐらいまで使えるシリコンが全盛になっています。

ゲルマニウムとシリコンの構造は良く似ています。双方とも原子の周囲を回っている電子の、一番外側の軌道には4個の電子が存在します。
電子は1個では不安定で、不安定な原子が2個くっついて分子になって安定するように電子も2個が安定状態です。 それで、ゲルマニウムとシリコンも隣の原子の電子を共有することによって安定しています。
このような純粋なゲルマニウムやシリコンを真性半導体と呼んでいますが、真性半導体を絶対温度0度にした場合には自由に動ける電子が無いために電気を通しません。

しかし、絶対温度0度はありえませんから、通常の温度では、隣の原子と共有結合していた電子(価電子)が外部から熱エネルギーをもらって動きやすくなるために飛び出し、 自由に動けるようになります。自由電子(自由に動ける電子)があるということは、このシリコン(ゲルマニウム)が電気を通しやすくなるということです。

半導体がおもしろいのは、価電子が飛び出した所が正の電気を持ち、そこに他の価電子が入り込むということです。
価電子が飛び出してしまって正の電気を持った所を「正孔(ポジティブ・ホール、またホール」と言います。 そして、正孔は価電子が飛び出した跡ですから、正孔と自由電子は同時に生じて、その数も同じです。
このような状態の半導体の導電率は、
導電率=電子の数×電子の電荷×電子の移動度-正孔の数×正孔の電荷×正孔の移動度
ここで電子が持っている電荷は電子の電荷と同量で符号が違うだけ、電子の数と正孔の数は同じ、という条件を考えると、
導電率=電子の数×電子の電荷×(電子の移動度+正孔の移動度)
となります。
(電子の移動度は正孔の移動度の約2.5倍)

このように半導体というのは他の物質と違うのです。