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西欧古代社会と静電気

人類と電気の付き合いは当然ながら非常に古く、神話以前の世界にも出てきます。
自然界で最大の電気と言えば“雷”です。
落電すれば時に大樹を引き裂き、時には石を磁石に変えます。
このように偉大な力を持った雷は“神の仕業”と考えられ、ギリシャ神話上最高位の神・ゼウスの武器となりました。

神話より真実味がある話は、紀元74年『 Historia naturalis (Plinius著)』に雷雲が漂っている暗い夜、行進するローマ軍兵士の槍先が転々と光を放ちました、 これをPliniusは「天から降りてきた星」と書き残しています。
槍先が光を放ったのはもちろん“落電”では無く、大地に溜まった電気が尖った槍先から空気中に放電したためで、“避雷針”と同じです。

ところで、私たちが電気の不思議に最初に触れたのは、下敷きを擦って起こした静電気では無いでしょうか。
ただ残念な事に私の場合、擦って起こした静電気と玩具を動かす電気が結びつきませんでした。
ギリシャ時代の人が最初に触れた電気の不思議も擦って起こす静電気でした。現代人の下敷きの代わりになったのは、装飾品として身に付けていた“琥珀”でした。
琥珀というのは、樹の樹脂(松脂など)の化石で電気を通しません。
この時代の哲学者ターレスは、琥珀の装飾品が衣服で擦れると埃を吸い付けると記録しています。
電気[electricity]がギリシャ語の琥珀[electron]を語源とするのは有名な話ですが、 これは、擦ることによって埃などを吸い付ける現象は“琥珀”だけと思われていたからです。

静電気に科学的なメスを入れることになるのは、イタリアを中心としたルネッサンス時代以降になります。
Cardano が琥珀と磁石の吸引力の違いを著し(1550年)、Gilbert が琥珀と磁石の違いを体系的に研究し、1600年には静電気検知器を考案しています。
これ以降、Volta が化学的な電池を発明(1800年)し、動電気が注目を浴びるまでの間は静電気起電機が作られるようになります。 初期の起電機は、硫黄の球のような絶縁物を擦って、その摩擦によって高い電圧を得るというものです。 静電気発電機は電気を蓄える部分を持っているだけで、私たちが下敷きを擦るのと変わりはありません。