乾電池の内部抵抗を測る方法

電池は、電気を起こす部分と抵抗部分の和で表されます。
「電池に抵抗なんか付けていないぞ」と言われそうですが、電池は抵抗を含んでいると考えた方が思考に無理が無いのです。
抵抗分が無い電池(電圧E)があると仮定して、下図のような回路を考えて思考実験をしてみましょう。

乾電池に内部抵抗が無いと考えた場合

乾電池に内部抵抗が無い場合
まず、スイッチを開けた状態で A-B 間の電圧を測ってみます。
入力抵抗無限大の理想的な電圧計で測ると、A-B 間の電圧の値は電池の電圧値Eです。
次にスイッチを閉じて A-B 間を測ってみましょう。
値はやはりEになります。
なぜかというと、スイッチを閉じたときに負荷抵抗に流れる電流 I は、オームの法則を使って
I = E÷R
負荷抵抗 R の両端の電圧 E0は、オームの法則を使って
E0 = I × R = E÷R ×R = E
となるからです。

実際に乾電池と抵抗を接続して測る

では、今度は乾電池と抵抗、電圧計を使って実際に測ってみましょう。
1.5V乾電池と電圧計(テスター)、抵抗(50Ω程度)が手に入る方は実際に回路を組んで計測してみてください。
私も測ってみました。
電池は、USBフラッシュメモリー型のMP3プレイヤーに使って消耗してしまった単4アルカリ電池。
負荷抵抗は60Ωです。
測定結果は、スイッチを開けているときは1.18V
スイッチを閉じて負荷に電流を流しているときは1.07Vでした。
上述の思考実験では、スイッチを閉じても開けても同じ電圧を示すはずでしたが、実際に実験してみると違います。
なぜでしょう?
電池には抵抗が無いという仮定が間違っていたようです。

乾電池に内部抵抗がある場合

そこで、電池には抵抗 r(内部抵抗)があると考えてみます。
左図の回路でスイッチを開いた状態で A-B 間の電圧を測定してみると、入力抵抗無限大の理想的な電圧計では、電池の電圧値Eを示します。
乾電池の内部抵抗を考えた回路図
次にスイッチを閉じると負荷抵抗に電流が流れます。
この値はオームの法則から
I = E/( r + R ) となり、A-B間の電圧(負荷抵抗Rの両端)E0は
E0 = I × R = E/( r + R)× R
E0/E= R/( r + R )
となります。

この式から内部抵抗 r は
r = R ( E/E0 - 1)  ・・・式1
となります。
式1に、私の計測した結果を入れてみましょう。
r = 60 ×(1.18÷1.07 - 1)
 = 6.16
内部抵抗は約 6.2Ωと求まりました。
新品では無いのですが、まだ使える同型電池(単四アルカリ乾電池)の内部抵抗を同様の方法で求めると、約3.5Ωでした。

電池が消耗して使えなくなるというのは内部抵抗というものを仮定して考えた場合には内部抵抗が増えることと同じになります。
但し、負荷抵抗Rの大きさによって電源の内部抵抗が変わることがあります。
乾電池に接続する負荷抵抗Rの値を変えて上記の方法で単三アルカリ乾電池の内部抵抗を測ってみましょう。
負荷抵抗として使用する抵抗は、下写真の「セメント抵抗」と呼ばれるものです(東京秋葉原の秋月電子で購入)
セメント抵抗の写真―乾電池の内部抵抗を測る
セメント抵抗は電源回路などのように大きな電流が流れるところに使用するもので、精度より価格の安さで選ばれます。
使用した乾電池は、デジタル機器で使用中の単三アルカリ電池で、開放電圧値は、1.44V。
負荷抵抗50Ω(実測値49.8Ω)のとき、1.42V
負荷抵抗5Ω(実測値5.3Ω)のとき、1.28V
負荷抵抗1Ω(実測値1.3Ω)のとき、0.95V
でした。
式1で内部抵抗を計算すると、それぞれのときの内部抵抗は、0.70Ω、0.66Ω、0.51Ωとなりました。
電源の内部抵抗値と負荷抵抗値が等しいときに最大の電力が電源から負荷抵抗に供給されます。

自動車用鉛バッテリーの様にエンジン起動時に数十Aの電流を供給出来る電池の内部抵抗は、数mΩ(1Ωの百分の1)なので、普通のテスターでは内部抵抗は測れません。
テスターとバッテリーとの接続コードの抵抗、電池に繋いだときの接触抵抗が無視できないくらい内部抵抗が小さいのです。
この場合は、計算が難しくなりますが、四端子測定法を使います。
⇒ 電気抵抗値の四端子測定法の原理を簡単に説明

ところで、電圧計(テスター)は入力抵抗が大きいものが正確な値が測れます。
入力抵抗というのは、電圧計の電圧を加える端子間の抵抗です。
電圧を測る方法は色々ありますが、どのような方法を採っても測定対象回路から電流を奪うために、その回路の真の値を示しません。
しかし、電圧計の入力抵抗が大きければ大きいほど測定したい回路から電圧計に流れ込む電流が少なくなるので正確な値が得られます。
電圧計やテスターを選ぶときには、直流に対する抵抗(入力抵抗)や交流に対する抵抗(入力インピーダンス)が出来るだけ高いものにします。