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ダイポールアンテナとディスコーンアンテナの素子の長さとその構造

殆ど業務無線がデジタル化されている現在、広帯域受信機を手に入れても聴けるものは振幅変調(AM)を使っている航空無線ぐらいですが、 受信機を入手すれば屋外にアンテナを設置したくなります。
特定の局を聴きたい場合はその局の周波数に合わせたアンテナなので、下図のような簡単な2分の1波長のダイポールアンテナで足ります。
ダイポールアンテナの構造
アルミやステンレス、同、鉄などの金属パイプや板、線などを、聴きたい局の周波数の波長を2で割って短縮率(0.9から0.98ぐらい)を掛けた長さに切断し、 それを中央で切断して、片方を75オーム同軸ケーブルの芯線に接続、もう片方を同軸ケーブルの外皮網線に接続します。
短縮率は表面積の大きさや形状によって変わります。
パイプや丸棒などでは太いほど短縮率は大きくなり、使用できる帯域が広くなります。 ですから、受信したい周波数帯が広い場合やアマチュア無線のように使用できる周波数帯が広い場合には太いものを使います。

通信機用の50オーム同軸ケーブルに接続するときは、下図のように同軸ケーブルを繋いだ金属パイプなどを水平からV字のように120度の角度まで曲げます。
V字型ダイポールアンテナ
120度曲げると給電インピーダンスが下がって50Ωケーブルで効率が良くなります。
超短波帯以上になると、波長が短いので中央の給電部分(同軸ケーブルを繋ぐ部分)で金属棒を支えられますが、波長の長い短波帯では支えきれません。 そこで、上の左図ではAの部分を柱(図で黄色)で支え、右図ではBの部分を柱で支えてダイポールを作ります。
なお、平衡のダイポールアンテナを不平衡の同軸ケーブルに直接繋ぐと、同軸ケーブルの外皮網線に高周波電流が流れて利得や指向性を乱すので、 平衡ー不平衡を変換するバランを挿入しますが、小電力での送信で簡易にしたいとき、 特に受信用では同軸ケーブルから漏れた電波が他の通信機器に妨害することが無いのであまり気にしなくてもかまいません。
ダイポールアンテナには指向性(電波を強く放射あるいは強く受信する方向)があり、アンテナの金属棒の中央線上で金属棒に対して直角方向が強く放射或いは受信する方向です

さて、航空無線も聴きたい、アマチュア無線も聴きたいと欲張りだすと、ダイポールアンテナでは効率が悪くなります。
というのは、ダイポールアンテナはアンテナ線上で高周波電流を共振させて周囲に強い電界を作るものなので、工夫しても広い範囲の周波数には共振できないからです。
それでも、テレビがデジタル化される前に使われていたVHF帯八木アンテナで解るように工夫すれば、受信用ではVHF帯で50MHzぐらいは使えます。

ディスコーンアンテナ

「ディスコーンアンテナ」は広帯域で使えるので、航空無線用に空港でよく使われています。
ディスコーンアンテナは 下図のように、上に皿のような円盤、下は円錐の外面だけの形状で、円盤は50オーム同軸ケーブルの芯線に繋ぎ、円錐の方は同軸ケーブルの外皮網線に繋ぎます。
ディスコーンアンテナの構造
各部の寸法は使用する最低波長を元に計算し、10分の1波長まで使えます。
たとえば50MHzを最低周波数とすると、その波長は6mですから、使える波長はその10分の1の0.6mで500MHzまで使えることになります。
実際のディスコーンアンテナは、使用周波数は低いとサイズが大きくなり、 上の円盤や下の円錐を金属板で作ると強風に耐えられるように頑強に作る必要があり費用が嵩むので金属棒などで代用します。

ディスコーンアンテナは、ダイポールアンテナと異なって共振を利用していません。
形状から想像できると思いますが、アンテナに加えられた高周波電流で作られる電界を損失無く空間に放射する進行波形タイプです。
言い方を変えると、給電線のインピーダンスを空間のインピーダンスに徐々に合わせています。そのためにダイポールアンテナと比較して大きさの割りには効率が悪いアンテナになってしまいます。
指向性は水平方向ですが、円錐の頂角を変えることで指向性を変えることができます。