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磁界成分だけを受信してノイズに強いというマグネチックアンテナの試作

電波は、アンテナに供給された高周波電流が電界を作り、この電界が磁界を作り、この磁界が電界を作るという繰り返しで空間を伝わっていきますが、マグネチック・ループアンテナ(シールド・ループアンテナ)は電波の磁界成分だけを捉えるものです。
この型のアンテナの売り文句は、電気機器(蛍光灯やモーター、自動車など)から発生する電波は電界成分が強いので、磁界成分だけ受信すれば妨害電波の少ない受信が出来るというものです。
しかし、電波は上記したように電気エネルギーと磁界エネルギーが交互に変換されながら伝わるものですから、妨害電波だけ電界成分が磁界成分より強いというのは奇妙ですから、妨害電波を発生する機器や妨害になる高周波電流がのっている電灯線近傍という条件付きなのでしょう。
とにかく、ラジオ受信に用いれば、信号と雑音の比 (S/N)が大きくなって明瞭度が増すはずです。
手許にテレビ受信用の同軸ケーブルが3mほどあったので環にして下図のように結線しました。
マグネチック・ループアンテナの構造
ポイントは、下写真のようにラジオのアンテナ端子のアース線に繋がる線を同軸ケーブルの外皮網線だけでなく同軸ケーブルの芯線にまで結合させることです。

確実に機能させるには、マグネチック・ループアンテナとラジオ(受信機)にまで高周波電流を導く給電線とのインピーダンス整合をしなければなりませんが、受信用ということで省きました。

通常のループアンテナは、電気を通す線を環にしてラジオ(受信機)に導く給電線を引き出します。
上図および左写真で言えば、環にした同軸ケーブルの左右の芯線から高周波電流を引き出します。
この電流は平衡しているので、平衡給電線でラジオ(受信機)まで導くか、平衡ー不平衡バランで不平衡に変換して同軸ケーブルで受信機に導きます。
ところが、マグネチック・ループアンテナの場合には、ループに電波の電界成分が誘起するのを防ぐために、ループを電気良導体で覆って、覆った電気良導体をアースします。
このために、多くの製作例では、ループとこれを覆う電気良導体が簡単に構成できる同軸ケーブルを使っています。

受信実験に使ったラジオは中国製短波ラジオ(DE1103)です。このラジオは、裏技を使うと中波受信でも内蔵バーアンテナを切り離して外部アンテナが使えます。
で、結果はというと、給電線とアンテナとのインピーダンス整合をとらなかったためか期待はずれでした。
中波帯では、指向性(アンテナの向きによって受信強度が変化する)があるので放送電波の到来方向と妨害電波発生方向が異なる場合には威力を発揮しますが、受信能力が低いために弱い放送電波は受信できませんでした。
私の実験で実用になると思ったのは、遠洋上の航空機に空港の天候を伝えるボルメット放送(2.863Mhz)を受信したときで、 同軸ケーブルを使わずに屋内に引き込んだ屋外アンテナを使ったときより雑音がはるかに少なく明瞭に聞こえました。
結論としては、中波から短波の低い放送局を受信するのには適しているかも、というアンテナです。
この種のアンテナは、GPSが無かった時代に船舶がラジオ放送を受信して自船の位置を求めるために使ったものなので、BCLには向きません。