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ループアンテナと電波の波長

ループアンテナは下図のように電流をよく流すアルミや銅などの金属線を環にしたものです。
ループアンテナ
最も身近にあるものでは、MWラジオ(中波放送)の内部に入っているバーアンテナ です。
UHF帯テレビ受信アンテナに用いられていることが稀にありますが、テレビやFM放送送信用アンテナには広く用いられています。
ところが、中波ラジオ受信用とFMやテレビ放送受信用・送信用とは原理がまったく異なっています。
電波は電界と磁界が交互に発生することによって空間中を伝播していきますから、電波をとらえるためには、電界をつかまえるか、 磁界をつかまえるか、あるいは両方をつかまえるかの3通りが考えられます。
AMラジオのバーアンテナは磁界をつかまえ、テレビ放送の送受アンテナは電界を放出、あるいはつかまえています。
磁界をつかまえるアンテナを磁流アンテナ、電界をつかまえるアンテナを電流アンテナと呼ぶことがあります。

磁界をつかまえるループアンテナ

磁界をつかまえるのは、発電機と同じ電磁誘導 です。エナメル線などで作られたコイル中で磁界を変化させればコイルに電気が誘起されます。
この型のループアンテナは、中を電波の磁束が通る必要があるので、ループアンテナの面に平行方向(上図のXとマイナスX方向)からの電波を強く受信します( 指向性 )
1回巻きのループアンテナの入力インピーダンスは非常に低く、また、誘起される電気の量を多くするためにコイルの巻き数を数を多くします。
ですから、中波ラジオ受信用のバーアンテナは巻き数が数十に及びます。
ただ、電流がよく通る銅線でコイルを作っても、銅にも電気抵抗があるのでせっかく誘起された電力が抵抗によって熱として消費されてしまいますし、 浮遊容量(巻いた銅線同士の間でコンデンサーが形成されてしまう)が大きくなってしまうので自ずと最適な巻き数が決まります。
誘起される電力を多くするためには、コイルの大きくして中を通る磁束を多くすればよいのですが、銅線が長くなり、またラジオを小型にできなくなります。
そこで、中波ラジオではコイルの中に磁束を集めるフェライト棒を入れて、巻き数の少なさと大きさを補っています。
ループアンテナが磁界をとらえる機能になるのは、ループ長が使用波長の0.3以下と言われています。

電界をつかまえるループアンテナ

ループ長が使用波長と同じくらいになると、様相が一変して2分の1波長ダイポールアンテナを2本並列接続したのと同じに考えられるようになります。
ループアンテナとダイポールアンテナ
つかまえるのは磁界ではなく電界です。
ダイポールアンテナ2本分ですからアンテナ利得も2倍になりそうですが、ダイポールアンテナがとらえる面が重なっているので2倍にはなりませんが、 高利得で、しかも、2本を並列に繋いだのと同じなので、アンテナ素子に太い金属棒を使ったのと同じになり、ダイポールアンテナより使える帯域が広くなります。
入力インピーダンスは約100オームになります。
指向性(電波強く受信、放出する方向)は、ループ面に直角方向です。

電界をつかまえる型のループアンテナは、八木アンテナのようにループを並べて高利得なアンテナにすることができます。
アマチュア無線バンドの430MHz帯では作るのが面倒ですが、アマチュア無線の2.4GHz帯(因みにこの周波数帯は無線LANや電子レンジなどが使用)になると 下写真のようにアルミ箔を丸めて適当に支えただけで作れてしまいます。(もちろん、調整は必要です)
2.4GHz帯自作ループアンテナ
ループの大きさ(周囲長)は、 反射器が使用波長の1.1倍
導波器が使用波長の0.9から0.95倍ぐらいが適当です。
電波の波長は、300(m)÷周波数(MHz)で求めます。
ループの大きさが1波長を超えると、指向性が乱れて利得が落ちます。