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専用充電器を使わないでリチウムイオン電池の簡単な充電法

リサイクルショップのジャンク箱を漁っていたところ、Nikon Coolpix S5 というデジタルカメラを見つけました。
「電池の残量が無いため未チェック」とあったので、電池を入れて作動しなくても文句は言えない代物です。
右はリチウムイオン電池
Nikon Coolpix S5
当たり前ですが、このカメラに付いているリチウムイオン電池を充電するものがありません。
専用充電器は通販で購入できますが、充電器を購入してもカメラが壊れていたら泣きっ面に蜂です。
そこで、何とか手許にあるものだけを使って電池を充電しなければなりませんが・・・

リチウムという元素は反応しやすく、水と激しく反応するために電池に不可欠な電解液に水が使えずに燃えやすい有機溶媒を使っています。
このことは、過充電によって電池が加熱されると、電解液が揮発・膨張して容器が破裂する、 また、リチウム電池は大きな電流を発生させるために、過充電や外部からの衝撃によって電池内部で電気的な短絡が起きると、その火花が電解液に引火することもあることを意味しています。
その上、過充電になると、イオンになっていたリチウムが危険な金属リチウムとして析出します。

上記のような危険を避けるために、リチウムイオン電池は頑丈な容器に入れられ、一部の製品を除いては過充電防止のために制御用の半導体(IC)が組み込まれています。
(過放電によってリチウムイオンが正極に使われているコバルトと結合して電池の性能を落とすために、過放電にならないようにも制御されている)

リチウムイオン電池充電器では、電池の温度を監視しながら、1セルあたり4.2Vになるまで矩形波状の電圧を掛け、充電電流がゼロになったところで満充電として充電を止めるようになっています。(1セルあたりの公称電圧が3.6Vや3.7Vの電池の場合)
リチウムイオン電池の電極部分の写真
上写真はリチウムイオン電池の電極部(黄色っぽいところ)です。
左側がマイナス電極、 中央が温度によって抵抗値が変化するサーミスターに繋がっている電極で、マイナス電極との間で17KΩぐらいを示していました。
専用充電器では、この値が規定値より小さくなると電池の温度が上昇していると判断して充電を止めています。
右側がプラス電極です。 (抵抗に繋がっていずに負極との間に電圧を出す電池があります)

このカメラのリチウムイオン電池は、3.7V、730mAhなのでセルが直列接続されていないとみて、出力電圧4.2Vの直流安定化電源にリチウムイオン電池を接続し、温度上昇に気をつけながら、時折、電源を切り離して電池の出力電圧を監視すれば充電できそうです。
充電中の写真
ところが、4.2Vまで下がる安定化電源を持っていたのは昔のことで、しかたなく、出力電圧4.5V300mAと表示されているラジオ用のACアダプターに繋ぎました。
すると、電圧が安定化されていませんから負荷が掛かって3.7Vまで出力電圧が下がってしまいました。
目標の4.2Vより低いので、電池にアダプターを接続したまま電圧を測っていると、徐々に電圧が上がり始め、9時間後に4.1V、10時間後には4.2Vになりました。

この電池は専用充電器では満充電まで2時間となっていますからずいぶん時間がは掛かりましたが、電池が熱を持たずに無事に終了し、ジャンク購入のカメラも壊れていませんでした。

電池の状態を見ながらの充電では、安定化電源では無く、出力容量のあまり大きくないACアダプターで良かったかも知れません。
容量の大きいACアダプターでは最初から4.2V以上掛けてしまいますから要注意です。
私の場合は無事に充電が終わりましたが、 専用充電器を使わない場合には常に発火や爆発の可能性がありますから、実験されるときは燃えやすい物の傍を避ける、電界液が飛び散ってもかまわない場所等の十分な安全対策をした上で自己責任でお願いします。

ところで、リチウムイオン電池には、小型軽量で大電流を取り出せる、メモリー効果が無いという利点がありますが、満充電状態で保存しておくと、特に暑い時期には早く劣化するという欠点があります。
ですから、カメラや携帯電話などが電池切れを起こすのを心配するあまり頻繁に充電し、いつも満充電状態にしておくのは良くないわけです。
また、気温が高いのが良くないからといって、冷蔵庫で電池を保存した場合には電池内部に結露が生じ、内部で短絡が起きて発火する場合もあります。

リチウムイオン電池を使った携帯電話などの電池を長持ちさせる方法 は、人間と同じで腹八分目の充電として、なるべく気温の低い所に置くということです。
車内や陽だまり、暖房機の噴出し口、体温で温まる所は避けます。

*メモリー効果とは、電池を使い切らずに充電を繰り返すと、充電を始めた電圧値を使い切った値と記憶し、より低い電圧では電流を取り出すことが出来なくなり、次第に電池の容量が減る現象です。
デジタルカメラでは撮影時に大電力を必要とするためにまだ出力電圧が高い状態で充電を促すのでメモリー効果が問題になります。
メモリー効果を防ぐには、充電10回に1回ぐらいの割合で、電池の出力電圧が1V程度になるまで容量が少なくても動く電気製品で使い切ります。
メモリー効果が出てしまった電池の場合には、充電と出力電圧が1V程度になるまで使い切るの工程を2,3度繰り返します。
使い切るとき、懐中電灯に入れて電球が消えるまで放置していると過放電になって電池を傷めてしまいますから過放電にならないようにしてください。