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使わないで充電出来なくなったリチウムイオン充電池を復活させる方法はあるのか

スマホやパソコンなどに多用されているリチウムイオン充電池も、ニッケル水素充電池などと同じ様に使わないで放置して置くと、いつの間にか電圧が0Vになってしまいます。
リチウムイオン充電池は他の充電池に比べて自然放電が少ないと言われていますが、長期間充電しなければ電気は失われます。
電池の自然放電というのは、電池をスマホなど、電気を消費するものに繋いで置かなくても失われてしまう電気のことを言います。
自然放電の多くは電池内のプラス電極とマイナス電極の間で電子が動くことによります(電流は電子の流れです)
電池の自然放電より多いのが、スマホやカメラにリチウムイオン充電池を入れたままにしておいて過放電になり、 終には電池の電圧が0Vになってしまうことです。
スマホやカメラなどの電子機器には時計が内蔵されている事が多い他、 機器の電源ボタンのON/OFFを検知するために常時微弱な電力を消費続けています。

「電圧が0Vになってしまったリチウム充電池は電池に内蔵されている電子回路によってロックされて充電出来なくなる」 などとネット上では見受けられますが、幸いなことに、私はそんな複雑な回路を持ったリチウム充電池に当たったことがありません。
リチウムイオン充電池は容易に燃える物質を使っているので、過充電と大容量の放電は発熱・短絡による発火原因になります。そのために電池の温度管理が必要になります。
5月の暖かい日、冷房をつけていない車内でスマホをカーナビ代わりに使っていたところ、スマホが「電源を切って電池を取り出せ」というメッセージを表示して止まってしまいました。
スマホが熱くなっていてリチウムイオン充電地も非常に熱くなっていました。冬季には無かったことです。

電池の温度管理をして電流を遮断する機能を電池側でするか電池を使用する側や充電器側でするか?
リチウムイオン充電池は高価ですが、経済合理性から考えれば製造数が少ない使用する側や充電器側でする方が良いでしょう。
また、電流を遮断するのは簡単でも使用時に電流を流す素子は少なからず発熱するので電池の小さな筐体、しかも容易に燃える物質と同じ筐体に入れるのは極めて危険です。
(素子が熱くなると流れる電流を極端に減らして冷めると電流を流す、自動復帰式ヒューズの代用になる素子はありますが、電子回路で細かく制御するようなものではありません)

多くのリチウムイオン充電池には[T]と表記された電極があります。
リチウムイオン充電池の電極部の写真
Nikon のデジタルカメラ Coolpix S620 用リチウムイオン充電池の [T]電極とマイナス電極の間の抵抗を測ってみました。

13.83kΩでした
電池を握って温めてから同様に抵抗を測ってみると

10.29kΩと抵抗値が下がりました。
電池を使用するスマホやカメラ、充電器側で[T]電極とマイナス電極間の抵抗値を測っていて、 この抵抗値が或る値を超えたら電池の温度が高くなりすぎたと判断して、電池とスマホ・カメラや充電器を切断すれば事故は防げます。
リチウムイオン充電池や充電器の中にはプラス極とマイナス極しかないものがあります。 この場合は電池を収納する側に温度検知を付けるか、少ない電流しか使わない、少くない電流でしか充電しなければ問題は起きません。

ということで、電圧が0Vになったリチウムイオン充電池が充電できるかどうか、 パナソニックのデジタルカメラ Lumix DMC-TZ5 を充電してみようと思います。
このカメラは忘れるぐらい昔にハードオフのジャンク箱から救出したもので、正常に使えるのを確認してから何年間もお蔵入りしていました。
で、電圧(開放電圧)を測ってみると、期待に応えてくれて0Vでした。

この電池には[T]電極がありますが、プラスとマイナス2極のリチウムイオン充電器(出力電流 Max150mA)があったので、 [T]電極を無視して、電池のプラス極と充電器のプラス極、電池のマイナス極と充電器のマイナス極をコードで繋ぎました。
電池の方は、キッチン用アルミ箔を紙縒り状にしてその一端を電池の電極に押し付け、その紙縒り状の他端をワニ口クリップ付きコードで接続します。

紙縒り状にしたアルミ箔を電池の電極に押し付けておくには、百円ショップのダイソーで購入した「クイックバークランプ」税込み108円で挟みました。 これは固定する部分がプラスッチク製なので強く押さえることは出来ませんが、強く押さえて電池を変形させては本も子も無いのでちょうどよいです

充電完了には約3時間掛かりました。

リチウムイオン充電器にプラスマイナスの2電極の他に[T]電極が有る場合は、マイナス極と[T]電極の間に15kΩぐらいの抵抗を接続してください。 抵抗を接続しないとプラスとマイナス電極間に電流が流れません。 ただし、[T]電極がある充電器は充電電流が大きいのでリチウムイオン電池が熱くなったら直ぐに充電を止めて下さい。
この様な面倒なことはしたく無い、かつ、充電したい電池に合う充電器が無い場合には、薄型(箱型)ならリチウムイオン充電池の種類を問わず充電できる「マルチ充電器」を使うのがお勧めです。
マルチ充電器
この充電器は、電池の電極に接続する部分がスライドで動くようになっていて、正負電極間の幅が変えられます。届くまでの日数を厭わなければ安価な品もあります。
アマゾンで マルチ充電器
ただ、このマルチ充電器は電池のプラスマイナスの電極の極性を自動的に識別するタイプなので、 完全に0Vになった充電地の場合には極性を間違って電圧を掛ける可能性があります。
完全に0Vになっている電池の場合は、先に書いたアルミ箔を紙縒り状にして電池の極板に押し付けて充電する方法で少し充電してからの方がよいです。

結論、電圧が0Vになってしまったリチウム充電池でも充電できるのです。
しかし、色々な方法で、充電出来なくなったリチウムイオン充電池が充電出来るようになったという事例が散見されるのはどういうことでしょう?
充電池は、等価的には起電力を持ったコンデンサーです。コンデンサーはプラス極とマイナス極が向かい合い、その間には絶縁物質があります。
電池の場合はプラス極とマイナス極の間には電解質がある訳ですが、当然、プラス極とマイナス極の間では電流は流れませんから電解コンデンサーです。
電解コンデンサーは電圧を加えないと寿命が短くなり、過電圧、或いは長時間の加電圧によって機能が回復する場合があります。 使わないで放置し、充電できなくなったリチウムイオン電池が何らかの方法で充電できるようになったという事例は、上記の理由での回復だと推察します。
コンデンサーを回復させる方法と同じ様に、通常の充電電圧より1,2V高い5~6Vぐらいの電圧を長時間掛けたり、パルスのような過電圧を掛けたら回復するものがあるかも、というのが最終結論です。
もちろん、電解コンデンサーが電界液の消失(蒸発や漏れ)や電極の腐食によって壊れるように、リチウムイオン電池が同様の理由で壊れた場合には充電できません。

カメラ本体まで長時間の通電で直りました

リチウムイオン充電池の充電実験をするために昔中古店で買い漁ったデジタルカメラを出して来たのですが、Nikon Coolpix S5 が撮影できなくなっていました。
ところが、充電した電池を入れて電源ON/OFFを繰り返し、丸1日そのままにして置いたところ、撮影出来るようになっていました。
電子部品、特にコンデンサー類は電圧を掛けていないと機能を失い、電圧を掛けると回復するものです。
パソコンやカメラ、テレビ、オーディオアンプなどの電子機器はたまには電源を入れて置くものだと改めて実感しました