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コードレス電話は防災には使えません?

携帯電話が一般的になる前、テレビの影響でコードレス電話が流行りました。
当時のコードレス電話は400MHz帯前後の電波を使い、音声を周波数変調しただけだったので広帯域受信機と称されるもので簡単に通話内容が聞けました。
コードレス電話を使っていると、半径2,300m内の受信者、受信者が外部アンテナを屋根の上に上げていれば1kmぐらい離れても通話内容が筒抜けでした。
その後、コードレス電話の傍受が問題になり、また、電子部品が廉価になったこともあって、現在のコードレス電話の多くは、無線LANと同じ周波数帯を使った,、通話中に周波数を変えるポッピング方式やスペクトラム拡散方式になり、秘話性が格段に増して使いかって良くなっています。
しかし、残念ながら携帯電話全盛 になり、コードレス電話そのものの需要も減っていますが。
UCT-002
Uniden のデジタルコードレス電話UCT-002(親機と子機)
中央・右:親機を支柱にぶら下げて、地上高約8mの位置に

さて、上写真のコードレス電話機の取り扱い説明書に、子機同士でトランシーバーになる機能が載っていました。
無資格無申請で使えるトランシーバーには「特定小電力トランシーバー」がありますが、1台1万円ぐらいのものは周波数変調なので、通話内容は傍受者に筒抜けです。
と言って、条件が良くても1kmぐらいしか届かないトランシーバー1台に数万円を出してデジタルにするのも、遊びでは抵抗があります。
そこで、デジタルコードレス電話のトランシーバー機能が目に留まった訳です。
そして、防災グッズにもなるのでは? と思いました。
この電話の増設用子機は比較的安いですし。

こんな想定です。
災害で携帯電話の基地局が壊滅。
家族の各々がデジタルコードレス電話の子機を持って避難。
そして、各々が子機で別の子機を呼び出します。
避難先が人で溢れていても数百メートル内に居れば呼び出せ、めでたく家族が再会出来る。
避難場所でも秘話なのでちょっとした連絡に使える。 

子機の電源が手に入りやすい乾電池では無くニッケル水素充電池、子機が大きいという欠点はとりあえず置いておき、子機を購入する前に通話距離がどのくらいか確かめてみることにしました。
上写真のように支柱に電話の親機を括り付け、地上高約8mに上げました。
そして、子機を持って周囲を歩いてみました。
木造2階建てが多い住宅街で、 アナログの特定小電力トランシーバーでは、5,600mの通話距離を稼げる電波環境です。
結果は、家を数件飛び越し、100~150mがやっとでした。
デジタルコードレス電話が使っている電波は2.4GHz、特定小電力トランシーバーの電波の430Mhz帯よりはるかに高いので光のように建物などの陰には届き難くなります。

そこで、アナログの特定小電力トランシーバーでは軽がる届く、600mほど離れている建物の屋上で試してみましたが、繋がりませんでした。
この機種はデジタルと言っても通話中に 周波数を変えるポッピング方式で、受信帯域を広く取る必要があり、帯域が広くなると雑音が多くなってしまいます。
また、デジタルの場合には通信の相手方と信号の同期を取らないと音声にならないのでアナログ方式と比べると受信する電波が強い必要があります。
(余談ですが、デジタル特定小電力トランシーバーの場合には、アナログの通話距離の7,8割らしいです)

デジタルコードレス電話のトランシーバー機能は避難先で家族を捜すぐらいには使えるかも知れませんが、たかだか100m内しか届かないには大きすぎますし、電池に汎用性が無いので災害用には使えないでしょう。

追記
同型機を入手したので子機同士をトランシーバーモードにして実験してみましたが、親機子機間の通信距離と大差ありませんでした。
通話を傍受されるリスクは大きいですが、2台1セットで1万円以下で売られている格安の特定小電力トランシーバーの方がまだ実用性があります。