身近な自然と科学

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闘魚ベタの飼い方:餌は? 産卵から稚魚が成魚になるまで親魚と同じ水槽で飼育する

ベタは空気中の酸素を呼吸に利用できる特殊な魚

ベタという淡水魚は、オスのヒレが色が鮮やかで長いために日本では専ら観賞魚扱いですが、雄魚の縄張り意識が強い習性を利用してタイ国では闘魚になっています。

初夏を思わせる気候になる5月中頃になると、ホームセンターの観賞魚売り場で小さな容器に入れられたベタを見ることが出来ます。
下の写真はべたが売られていたときの様子です。
市販時のケース内のベタ
この小さな容器の蓋には小さな孔が幾つも開いていて外部とは空気が出入りできるようになっていますが、 メダカや金魚、熱帯魚では購入時に水と酸素を入れたビニール袋に入れてくれるか、酸素と水が入ったビニール袋に入れて売られているので、ベタの販売方法には驚きます。
このような販売方法が出来るのは、ベタが鰓蓋に空気中から酸素を取り入れる毛細血管がある「ラビリンス器官」を持っていることによります。因みに、ラビリンス(labyrinth)は、迷路・迷宮という意味です。
ベタの生物学的分類は、スズキ目キノボリウオ亜目オスフロネムス科で、 おもしろいのは「キノボリウオ」が入っていることで、飼育環境でも濡れている水草の上に乗るようです。これもラビリンス器官によって空気中の酸素を利用できるからですね。

水槽をネットで区切ってオスとメスのベタを飼う

先に書きましたが、 ベタが闘魚として利用されるのは雄の縄張り意識の強い性質を利用してですが、観賞魚として飼うときには、この強い縄張り意識が禍し、オスは必ず1水槽に1匹だけで飼わなければなりません。
コップの様な超ミニ容器で飼えると言っても身動き出来ないような小さな住環境では可哀想ですから小さないながらも水槽に、また、水温が20度より下がる季節がある日本で飼うとなると、初夏に気軽に買えるにしてはかなり贅沢な環境を必要とする魚です。

さて、2017年5月25日、繁殖にも挑戦するつもりで、オスとメスをそれぞれ1匹購入し、幅30cm奥行き15cmの水槽に水深10cmほどにし、オスとメスでも混泳させない方がよいというので、百円ショップで購入した園芸用鉢底ネットで区切りました。(水深を10cmにしたのは単に水槽を重くしたくなかっただけです。)
鉢底用ネットで区切られた水槽で向かい合うベタの雌雄

ところが、です。園芸用鉢底ネットで雌雄別々に区切ったはずが、数時間後に見たときにはオスがメス側に、メスがオス側に移っていました。
区切ったはずが隙間を見逃したようです。
改めて文字通り仕切り直しました。
ところが、今度はオスがメス側に入り込んで、メスは水槽の隅で縮こまっているのではないですか。
幸いなことに、オス・メスどちらにも傷が見当たりませんでした。
気を取り直し、鉢底ネットも切り直し、お飾り程度ですが障害物にと、手許にあった水草アナカリス( オオカナダモ)を入れました。

ベタの餌は?

ベタは自然界ではボウフラや水生昆虫の幼虫などを食べる肉食性なので、飼育環境では冷凍や乾燥した赤虫(ユスリカの幼虫)を食べさせるのが向いているようです。
鑑賞魚用の配合人工乾燥餌も食べるようなので、手許にあるメダカの餌を与えてみると、オスは直ぐに食べましたが、メスが食べたのを確認できたのは翌朝でした。
ベタに昼食に食べた白す干し(鰯の稚魚を加工したもの)を与えてみました。
魚の飼料には魚肉が入っているので驚くことは無いですが、メス魚はシラス干しが気に入ったようです。
白す干しを食べるベタのメス
オス魚の方は口に合わないようであまり興味を示しません。
シラス干しは塩分が強いので常食には向きませんが、たまに与える分にはよいかも・・・
(水に晒せば塩分は抜けますが、水溶性の栄養分も抜けてしまいます)

泡巣の中に卵が

関東地方の2017年7月は7月とは思えないほど暑い日が続き、ベタの飼育水も軽く30度を超えていましたが、オスが泡巣を作るので、7月23日半日ほど雌雄を分けている網を除きました。
その翌日の24日、泡巣の泡に異変が・・・。
闘魚ベタの卵が付いた泡巣
昨日までは透明な泡だったのですが、多くの泡の中に白い物が入っています。
この白い物がベタの卵なのでしょう。
昨日までは、泡の全てが上写真右下の透明な泡でした。

その翌々日の26日早朝、泡巣の泡から稚魚が孵り始めました。
下方中の紫の魚影はオスです。
泡巣から孵る闘魚ベタの稚魚と見守るオス
透明な身体の、小さくて細い稚魚が泡にぶら下がっています。
泡巣から孵る闘魚ベタの稚魚

孵った翌日の27日、稚魚の大きさを確認するために楊枝の先と一緒に撮りました。
闘魚ベタの稚魚の大きさ
緑色のものは水草のアナカリスです
その翌日の28日には
闘魚ベタの稚魚孵って2日後
水草は、上はアナカリス、下はマツモです。
左上にたくさん写っている小さな魚が26日に孵ったもので、 大きな魚影は今年2017年6月30日に孵った稚魚です、水草に隠れて育ちました。

オス魚は昨日までは餌を食べませんでしたが、稚魚が孵った2日後には餌を食べ始めました。
しかし、稚魚を追うようなことをせず、稚魚を無視しています。
対してメス魚は稚魚を追う時があります。メスには自分が産んだ卵や孵った稚魚でも食べてしまう習性があるようです。
オス魚はメス魚をいつも追い掛け回しているのは、メス魚から卵や稚魚を守る行動かも、です。
そうだとしたら、ベタのオスは縄張り争いでオスを追い払い、卵や稚魚を守るためにメスも追い払い、と因果な習性ですね。

オス魚は稚魚に危害を加えないのですが、稚魚だけ別の水槽で育てた方が安全だと思い稚魚を取り出す方法を考えてみました。
水換え時、水槽用手動ポンプでは気をつけていても一緒に吸い込みますし、 水の表面張力にも逆らえない大きさなのでネットで掬っただけでも命取りです。 メダカの稚魚の方がはるかに扱いやすいです。

ベタの稚魚の餌は?

ベタの稚魚はプランクトンしか食べられないようです。
日本産メダカの稚魚用餌や茹で卵の黄身では水が汚れるだけで上手く育ちません。
結局のところ、8月8日現在まで生き残っているのは成魚(親魚)と同じ水槽の2尾だけでした。
親魚と同じ水槽で大きくなったベタの子供
上写真は親魚2匹と一緒のものです
下写真はその内の成長の良い1尾(生後39日)
ベタの稚魚生後39日目
確かめては居ませんが、魚を長期間飼育している水槽にはワムシなどのプランクトンが生息しているので、 生き残った稚魚は水草の間に潜んで成魚から逃れ、プランクトンを食べていたのでしょう。


追記

ベタは空気呼吸が出来、水草を大量に入れたので、 飼育水の残存酸素量を増やすための俗にいう「ぶくぶく」や濾過器を入れ無かったのですが、 プランクトンを増やすには溶存酸素量を増やす必要があるだろうと考え、エアーリフト式濾過器「GEX ロカボーイS」を入れてみました。
エアーリフト式というのは、水槽下部の水をエアーポンプからの空気で上に上げるもので、簡易な底面濾過器具でも使われています。
ベタは溜まり水を好むので水流を抑えるためにロカボーイに送る空気量を調節するエアー分岐器具を入れて最小にしましたが、オスが毎日の様に作ってい た泡巣を作らなくなってしまいました。 僅かな水の動きで作るそばから消えてしまうのか、水流によって体力を消耗して泡を作るどころでは無いのか、或いは他の事が原因かは判りません。
そこで、8月7日夕方から濾過器を止めてみました。
翌8日早朝確認すると、水槽のガラス内面に泡が付いていました。
ベタのオスと泡