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心理学者が唱える好きな夢を見る方法

その昔、好きな夢が見られる装置なるものが売り出されたことがあります。
私が知っているものは睡眠中に好きな夢に導く音が流れるという簡単なものですが、 タイマーが付いたオーディオプレイヤーで間単に試せるものですが、「好きな夢を見られる」などという冠が付くと夢のような価格になっていたものです。

ここで紹介する方法は一切の装置を必要としません。心理学者のパトリシア・ガーフィルドは自己暗示を掛ければ自分の意思でコントロールできる夢(明晰夢)を見られると言っています。
  1. 早朝に自然に夢から目覚めるようにする
  2. 目覚めた後、見た夢を思い出して記憶する
  3. 「夢を見たときは夢を見ていることに気づきたい」と自分に言い聞かせる
  4. 目を閉じて夢を見ているときの様に目を動かす
うまくいけば、数分以内に明晰夢を見ることが出き、 夢を見ているときに夢を見ていると自覚できるようになれば、自分の好きなように夢を変えられると言います。
夢が好きなように変えられるとなると、夢判断や夢占いの信憑性がますます無くなりますね。

ところで、夢を見る理由については諸説あります。
  • 精神力動説
    精神的な抑圧を夢を見ることによって解消している。
    精神的に抑圧されているものが夢に出るというフロイドの考えに似ています。
  • ホメオスタシス説
    ホメオスタシスというのは人体の機能を一定に保つことで、覚醒時には外界からの刺激によって脳神経細胞が緊張を強いられているのでその緊張を解かないと壊れてしまうと考えます。
    そこで、レム睡眠の間は外界からの刺激を遮断して神経細胞の緊張を解きます、夢はこのときに見ます。
  • 記憶・学習過程説
    レム睡眠中に記憶を整理する。
  • 回復説
    脳を休養させて精神力などを回復させる。
と色々な説がありますが、夢に過大な期待を抱いているような気がします。

夢の殆どがレム睡眠時に見られています。
レム睡眠(Rapid Eye Movement sleep) とは、目がキョロキョロと速く動いているときの睡眠で、20分間ぐらい続き肉体にとっては最も深い睡眠ですが右脳は活動しています。
覚醒時には脳は肉体に対して命令を出し、肉体はその命令を受けて身体を動かしますが、動かした量などを脳に返しています。
レム睡眠時には肉体を休ませるために脳からの信号は抑制され、肉体からの信号も少なくなっていると考えられるので、非論理的な事を扱う右脳の神経細胞は頼る刺激が少なすぎての乱れているのでは無いでしょうか。
脳手術の際、右脳の表面に電気刺激を与えると夢と同じような感覚が生じることからも夢は右脳神経細胞の乱れでは無いかと考えられています。

殆どの人は「見る夢」を見ますが、音を聞く、においを嗅ぐ、触る、味わうという五感の夢を見る人も少数ですが居ます。
しかし、生まれつき感覚を持っていない夢は見ません。
例えば、生まれつき視覚を損なっている方は「見る夢」は見ない代わりに、聞く夢や触る夢を見るようです。

好きな夢を見る方法のところで、夢を見ているときに夢を見ていると自覚できるようになれば夢を変えられると書きましたが、夢だと気づかないで急に身体を動かそうとしたらどうなるでしょうか。
殆どの場合、夢はレム睡眠中なので肉体は休んでいますから突然の命令では動けません。
動こうとして動けない、これが俗に言う「 金縛り 」現象です。

金縛りと同じですが、大声を上げたり、驚いたりした直後にレム睡眠に入って全身の力が抜けてしまう 情動脱力発作 という病気があります。この病気は覚醒中に起こります。
健常人では、レム睡眠は、深い眠りに入る前段階、深い眠り、深い眠りと70分間ぐらい眠った後にやってきます。
長く深い眠りの後にやってくるので意識と肉体の関係が疎で、夢もおぼろげな記憶で済んでいるのでしょう。
しかし、 情動脱力発作は覚醒中に起こるためこの発作が起きやすい人の夢は生々しいそうです。

最後は、ノンレム睡眠中に夢を見る人です。
ノンレム睡眠中は肉体と脳神経の関係が疎では無いので夢と肉体が結びつくことがあり、その場合には、本人は寝ていると思っていながら実際は歩き回っているなどの奇怪行動をする 夢遊病 になります。
また、精神疾患の一つである 統合失調症 の方はノンレム睡眠中に夢を見ることが多く、夢が覚醒時の行動に現れることがあります。