title-logo

ホーム > 科学系記事サイトマップ >

プラスチックレンズの曇りをとる方法

ニコン用マウントが付いた SIGMA 70-300mm F4.0-5.6 DL を入手しました。
この型の現行レンズは異常分散レンズを使ったデジタルカメラ用ですので、入手したのは銀塩フィルムカメラ用の古いものでメーカーサイトにも情報が無いものです。

古物レンズなので内部に少しゴミがあり、後玉(一眼レフボディに近いレンズ)に少し曇りがあります。
「まぁ、分解して中性洗剤でレンズを洗えば何とかなるか」と思ったのが甘かったです。
NIKON_ D40 に付けて撮ってみると、ソフトフィルターを付けて撮ったほどではないですが、コントラストが悪いです。
コントラストが悪い原因はやはり後玉の曇りか、ということでWeb検索してみると、この後玉の材質はプラスチックらしいのです。
軽量化を重んじている現行機種なら1枚や2枚プラス チックレンズが使われていても驚きませんが、大きなレンズを持っていることがステータスだった銀塩カメラ時代のレンズの、しかも、ユーザーが手に触れる最後尾が傷つきやすいプラスチックレンズとは・・・トホホ

プラスチックレンズが曇る原因を考えてみると、

  1. 空気に含まれている成分との化学反応(変質)
  2. 拭いたときに出きる細かい傷
  3. 温度変化によるコーティングのひび割れ

プラスチックの眼鏡レンズが曇る主な原因は、上記2,3です。
コーティングというのは、レンズに入射した光がレンズ面で反射しないようにレンズ表面に空気の屈折率とレンズの屈折率の中間の屈折率を持つ金属酸化膜などを蒸着させるものです。

近くのホームセンターでプラスチックレンズの曇り除去に使えそうな物を探すと、プラスチックの艶出し、貴金属の艶出し、読み取れなくなったCDやDVD表面を研磨する物ぐらいしかありません。
プラスチックや貴金属の曇りはその表面に出来た凸凹で光が乱反射するために起こりますから、艶出しを謳っている商品は表面を滑らかにするものです。
上手に使えばレンズの曇りとりにも使えそうな気はしますが、近くのホームセンターにあった艶出しは研磨剤に有機溶剤が入っていました。有機溶剤は少しぐらいは含有していた方が良い気はしますがプラスチックレンズ磨きに使用するには勇気が要ります。
貴金属の艶出しは薄い紙やすり状で2000番です。

残るはCDなどの研磨剤ですが、削り過ぎては本も子もないので、CDの表面磨きに使って大して削れないことが判っているペースト状の歯磨き粉を使うことにしました。
歯を歯磨き粉で磨くと小さな傷が出来て細菌繁殖の温床になどというコマーシャルがありますからなお曇ってしまう?
という不安はありますが・・・

この最後尾のレンズは後玉ユニットに接着剤で貼り付けてあるらしく取れないので、水で湿らしたキッチンペーパーに少量の歯磨き粉を付け、それを人差し指で後玉ユニットに入れて回しながら磨きます。
部分的に磨かないで、レンズ端から中央に掛け、広い範囲に均等に力が加わるように磨きます。
力任せに無造作に磨くとレンズの形状が変わってしまいますから、全ての面を均等に磨くように注意します。
水分が無くなると研磨が荒くなるので少し水を含ませて磨きます。
レンズ表面が濡れていると曇りが見えなくなりますから少し乾かしては曇りのとれ具合を観察して磨く量を少しでも少なくします。
磨き終えたらよく水洗いをし、十分乾かします。
プラスチックレンズは水を吸うのでよく乾かさないで後玉ユニットを組み立てると、気温が上がったときに蒸発してレンズが曇ります。
こうして曇りを除いたレンズが下記です。
綺麗に見えますが、ガラスレンズの透明度と比べればかなり落ちます。
磨いて曇りを取ったプラスチックレンズ
下写真はレンズを組み立てて撮ったものです。
磨いたプラスッチクレンズで撮った風景
星空も撮ってみました。磨く前は広角端70mmではISO1600 露出10秒間で2等星以上の明るい星しか写りませんでしたが、磨いた後は7等星ぐらいまで写るようになりました。
プラスチックレンズの曇りを除去した成果です。
しかし、レンズを斜めから覗くと見える曇りが気になります。
曇りが見えるプラスチックレンズの写真
もっと強力に磨けるものは・・・と思いついたのが、ステンレス製キッチン用品を磨くときに使うクリームクレンザーです。
(スーパーや100円均で売られている安物です)
プラスチック製品に使うと傷が付くことがあると 注意書きがありましたが、一抹の不安を抱きながら磨きました。
結果は、レンズに傷が付かなかったのですが、気になった曇りも取れませんでした。
斜めから見えるくもりは内部に食い込んでいるようなのでこれ以上のくもり取りは諦めましたが、このまま組み立てても再び曇るだろうと案じ、溶剤を含んでいないシリコンスプレーをレンズに吹きかけました。
こちらの方が余計にレンズを曇らせたりして(笑)
で、下写真のようにレンズの筐体にはめ込みました。
(マウントはこの上につけます)

下写真は、最後にシリコンスプレーまで掛けたレンズで、薄暮の空の雲間に浮かぶ木星を撮ったものです。
磨いたプラスッチクレンズで撮った木星が写った夜空の写真
NIKON D40 SIGMA 70-300mm F4.0-5.6 DL
広角端 70mm F4.0 ISO1600 露出1秒
どんな方法を使うにしても磨けばコーティングが剥がれるので元のようにはなりませんし、曇りが酷くなる可能性もあります。レンズ磨きは自己責任です。
カメラのプラスチックレンズを磨くのは私ぐらいでしょうが、旅先で眼鏡レンズのコーティングをひび割らせて使用に堪えないほど曇らせてしまったときには歯磨き粉で磨く方法は使えるかも、です。

追補
記録面に傷を付けて再生不能になってしまったDVDの修復に自動車のボディーを磨くコンパウンドを使って成功したので、鏡面磨きと謳っているコンパウンドを使うのも方法かも知れません。