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電子が持っているエネルギー

物質を作っている原子は、プラスの電気を帯びた陽子と電気を帯びていない中性子が作る原子核と、原子核の周りにある電子で作られています。 ここでは、電子の持っているエネルギーの特徴について考えてみましょう。

子供の頃、原子と太陽系が似ていると思っていました。原子の中心にあるのが原子核で、太陽系の中心にあるのが太陽。 原子核の周りを回っているのが電子で、太陽の周りを回っているのが惑星というように。
解りやすくするために原子を太陽系に喩えてみます。
原子核の電子殻軌道イメージ図
太陽に一番近い所を回っている水星の軌道を、原子ではK殻、 金星の軌道を、原子ではL殻、 地球の軌道を、 原子ではM殻、次はN殻、・・・・
というように原子では原子核から近い順にLからアルファベット順に名前が 付けられています。
そして、これらの殻には量子数nがついています。
量子数nというのは「量」を表す数で、 K殻はn=1、L殻はn=2、M殻は3、N殻はn=4、・・・
となっていて、1.5とか、2.1という数はとりません。
このように半端の数をとらないという点が重要です。
また、「量子」というものが存在する訳ではありません。考えるのに都合の良いように「量」で区切っているだけです。
現実の電子は惑星のように原子核の周りを回っているのではなく、原子核を包むような雲になっていて、 その雲を電子雲と呼びますが、雲に濃淡はあってもその何処に電子があるとはっきりしている訳ではありません

電子が持っているエネルギーは、原子核と電子の間に働いている静電エネルギーと電子の運動エネルギーの和です。
このエネルギーを考えるときには、静止している自由電子(どの原子にも属していないで自由に移動できる電子)が持っているエネルギーを E=0 として基準にします。
電子殻(K殻、L殻、M殻、・・・)に入っている電子が持つエネルギーEnは
En = -E/n/n
で表されます。
nは1,2,3,4、・・・という自然数なので、原子核から遠い電子ほど大きなエネルギーを持っています。
それぞれの電子殻に入ることが出来る電子の数Nも量子化されて表され、 N=2×n×n となっています。
K殻には2個、L殻には8個、M殻には18個、・・・となります。

話はそれますが、例えばM殻には18個の電子が入れるのに電子が10個しかない原子の場合は不安定なので隣に存在する原子の電子を共有したがります。
この働きは原子同士を結合させますが、接着剤に使われたり、物と物とを密着させたときに生じる摩擦の大きさにも関係します。
電子が持つ静電エネルギーは万有引力よりはるかに大きいものです。

それから、電子は En = -E/n/n で示される値しか持つことが出来ないので、例えば、K殻にある電子がよりエネルギー値の大きいL殻に移動するとき(励起)には、L殻とK殻の持つエネルギーの差だけ外部からエネルギーをもらわなければなりません。
光などの電磁波からエネルギーをもらう場合には、電磁波は波長によって持っているエネルギーの大きさが決まっているので、電子を励起したエネルギーに等しい波長の電磁波が吸収されます。
可視光領域にあったなら吸収された波長(色)が反射されないので、その色の補色がその物質の色として影響を与えます。
逆に例えばL殻からエネルギー値の小さいM殻に移動するときには、余分なエネルギーを放出します。
自然界では流星の光などに見られますが、人為的に電子を励起させて可視光として放出させると発光ダイオード(LED)などになります。