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10円硬貨と銀のジュエリーを綺麗にする方法

財布の中に銅色に輝いている10円硬貨が入っていると幸運に思い、その硬貨を使いたくないと思うのは私だけでしょうか。
逆に、赤黒っぽくなっている上に一部が緑色になった効果が巡ってくると、買い物に出すのが嫌になります。

赤黒っぽくなるのは銅が空気中の酸素によって酸化 された為です。酸化されるというのは、自分が不安定なので電子をもらって安定したい酸素分子が銅原子から電子を奪うことです。

銅と酸素が結びついた物には、 酸化銅(Ⅰ)Cu 2 O =酸化第一銅
酸化銅(Ⅱ)CuO =酸化第二銅=亜酸化銅があります。

  • 酸化銅(Ⅰ) は色は赤褐色
    赤銅鉱として自然界に存在し、酸化銅(Ⅱ)を熱分解しても得られます。
    ガラスや陶磁器の赤色着色剤として用いられます。
  • 酸化銅(Ⅱ) は色は黒です。
    黒銅鉱として自然界に存在し、 ガラスや陶磁器の青色着色剤・酸化剤・触媒などに用いられます。

10円硬貨につく緑色のものは、緑青(ろくしょう) と呼ばれるもので、空気中の二酸化炭素と水分によって生じる塩基性炭酸銅 です。
緑青はお寺の銅張りの屋根に見ることがあります。
毒性が強いと言われましたが、現在ではほとんど無害とされています。

また、赤黒っぽい色になるのは、酸化銅(Ⅰ)と酸化銅(Ⅱ)が混在するからで、 赤褐色の酸化銅(Ⅰ)は水分によって更に酸化されて黒の酸化銅(Ⅱ)に変化します。

黒ずんだ10円硬貨を幸運を呼ぶ(?)綺麗な硬貨に戻す手軽な方法は、台所にある食酢の中に10円効果を浸けることです。
食酢の主成分は酢酸CH 3 COOHで、酸化された銅に電子を与えます。
これを還元 すると言いますが、酢酸は酸化した銅に電子を与えて自分は電子を失うので酸化されたことになります。
ですから、酸化と還元は同時に起こるので、酸化還元反応 と言います。

酢酸から電子をもらった酸化銅は元の銅に戻るものと、水分子と結合して溶けてしまうものに分かれます。
これで、硬貨に付いた錆び(酸化物)はとれますが、酢の中に食塩(塩化ナトリウム)が入っていると、水の中に溶け出た銅イオンが塩素イオンと結合して
 [CuCl 2 ] - , [CuCl 3 ] - , [CuCl 4 ] - という錯イオン を作ります。
錯イオンというのは、一つに原子や分子に複数の原子、原子団、分子などが結合( 錯体 )してイオンになっているものです。
上記の例では、銅原子に複数の塩素原子が結合して、マイナスの電気を帯びてイオンとなっています。

このため、水の中の銅イオンが少なくなるので、水が銅イオンを取り込む余裕が出来るために、硬貨に付いた酸化銅が更に溶けます。
ですから、10円硬貨をきれいにしたいときは、食酢に食塩を溶かした中に硬貨を入れた方が早くきれいになります。
銅硬貨よりずっと価値がある銀製の指輪やネックレスなどのジュエリーや銀食器がくすむのは空気中に存在する硫化水素(H 2 S) 銀(Ag) と反応して硫化銀(Ag 2 S) になったものです。
この場合は、硫化銀からイオウ(S)をとってやれば元の輝きを取り戻します。
ここでも電子の力を借ります。
銀はイオウに電子をとられて結合していますから、銀に電子を与えればイオウが離れて銀に戻ります。
この場合も銀は電子をもらうので還元されたと言いますが、銀に与える電子を供給するもの、すなわち酸化される物を見つけなければなりませんが、やはり身近にあるアルミにしましょう。
銀とアルミを比べると、アルミの方が酸化されやすいのです。
この関係を、銀よりアルミの方が イオン化傾向 が大きいと言います。

それから、電子が移動するために電子が動ける溶液を用意します。
この溶液を電解質 と言い、ここでは炭酸水素ナトリウム(重曹)の水溶液を使います。
そして、化学反応が早く進むようにお湯に 重曹を溶かし、その中にアルミ箔を敷いて、指輪などの銀製品を入れます。

すると、アルミニウムから電子が流れ出て、重曹の水溶液を通って銀に入ります。
酸素がどこにも出てきませんが、酸化は電子を失うこと、還元は電子を得ることという定義に従えば、銀製のジュエリーのくすみをとる化学反応も酸化還元反応 です。