塩水と砂糖水の分子原子での違い

塩水は少ししか水に溶けないのに、砂糖は溶媒の水を加熱すればいくらでも溶けるという対照的な違いがあります。
ところで、溶けるというのは溶媒(水)を構成している分子と結合することです。
水分子は酸素原子を中心にして二つの水素原子が104.5度を成すように位置しています。
そして、ここが肝心なのですが、水分子は水分子だけで電気的な中性になっていないということです。
酸素原子は両側で1個ずつ水素原子と手をつないでも、まだプラスの電気を帯びた原子と手を結べる手を持っている他、水素原子と酸素原子の電気陰性度(電子を引き付ける度合い)が異なるために、水素原子はプラスの電気を帯び、酸素原子はプラスの電気を帯びています。
純粋な液体状態の水は、酸素原子の空いている手と、他の水分子の水素原子が手を繋いでいます。水素結合と言います。

一方、塩(塩化ナトリウム)は、プラスの電気を帯びたナトリウム原子1個とマイナスの電気を帯びた塩素原子1個が結びついています。
しかし、ナトリウム原子と塩素原子ナトリウムが互いを引き付ける力は弱いため、外から最も強い力で引かれれば離れてしまいます。
この外部からの力が水分子の持っている力です。
水分子の水素分子は塩の塩素原子を引き付け、水分子の酸素分子は塩のナトリウム原子を引き付けます。
こうして、塩は水に溶けますが、水分子がナトリウムや塩素原子を引き寄せる数は限られているので、塩は水には少ししか溶けないのです。

砂糖が水に溶ける仕組みは塩とは違います。
砂糖(スクロース)は炭素原子12個、水素原子22個、酸素原子11個が結合して分子になっていますが、構造から見ると、酸素と水素原子が結合した −OH(ヒドロキシ基)が8個数多く含まれています。
酸素と水素の原子が結合しているところは、水分子の水素と酸素の原子の結合に似ています。
このため、砂糖のヒドロキシ基が水分子の一部と同じようになって水素結合します。
水分子から見れば、砂糖の分子でありながら水分子と同じように結合している訳です。
ですから、塩の場合と異なって、常温でも30%溶け、100度の水には質量比で水の5倍近く溶けます。
更に加熱すると、沸点が100度をはるかに超え、水とは思えなくなります。