梅酒づくりに粉砂糖を使わないで氷砂糖を使う理由

梅花は春を告げる花のひとつですが、果実をとる梅は遅咲き品種です。 遅咲き品種なのは、蕾は寒さに強いのですが、開花してからの受粉、幼果実は寒さに弱く、花の後で寒気に襲われると実成りが悪くなるからです。すると、需要と供給のバランスが崩れて梅の実の価格は高くなります。
いくら高値になっても自家製の梅酒や梅干をつくるのが楽しみだという方も多いかと思います。
特に梅干の場合は、市販されているものは梅干風で、梅干ではありませんから。
安い梅干風は、中国本土や台湾から塩漬けにされたものを輸入し、塩を抜いて調味液に漬けたものです。 国産の価格が高い梅干も減塩の高まりでほとんどが調味漬けですが

ところで、梅干は日本の伝統の味のように思われていますが、庶民に広まったのは江戸末期から明治に掛けてです。
それまでは、梅は花を楽しみ、果実は若い実を燻した烏梅で、腫れ物や下痢に 効く生薬、染料として使われていました。
庶民に広まるのが意外に遅いのは茶に似ています。
茶木は、植え替えると育ちが悪くなるので、出戻らないようにという結婚に掛けた縁起物でした。これは、関係ないですね(笑)

梅酒作りは浸透圧が重要

梅酒用には青梅が売られていますが、黄色く熟す直前の方が香りの良いものがつくれるようです。
分量は梅350グラムに対して、35度のホワイトリカー650ccを密閉できるガラス容器に入れて4ヶ月以上漬け込みます。
その後も、実は漬けたままです。

問題は梅を漬けるときの砂糖です。
梅や梅酒瓶売り場に氷砂糖が並んでいることがありますが、甘み付けは梅酒が出来上がってからの方が理に適っています。
粉砂糖を一緒に入れて漬けると、砂糖がホワイトリカーに溶けてホワイトリカーの糖濃度が高くなり、濃度を薄めようとして梅から水分が出てきます。
このため、梅は有用なエキス分を出す前に硬くなってしまいます。
直ぐに溶けてしまう粉砂糖ではなく、ゆっくり溶ける氷砂糖を使うのはこの点を考慮したものですが、 ホワイトリカーの糖度を高めるには違いありません。

この現象を説明するのには浸透圧が使われます。
たとえば、真水と砂糖水を接すると、混ざり合ってちょっと薄い砂糖水になります。
自然界は溶液の濃度についても偏っているのが嫌いです。
ここで、真水と砂糖水の接する面に、分子の大きさが小さな水分子だけ通れる膜を設けてみます。 それでも、砂糖水の濃度を薄くするために真水の水分子は膜を通って砂糖水に移ります。 このときに、砂糖水に水分子が入ってくるのを阻止しようとする力を「浸透圧」と言います。
真水が砂糖水に入る圧力ではありません。