身近な自然と科学

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焼き物用の土

身近な自然と科学 Vol.93【 焼き物用の土 】から

そこらに転がっている土や粘土では焼き物は出来ないのか?
という疑問から調べてみたので陶芸書よりは科学的に書くつもりですが
陶芸ファンにはおもしろく無いことを始めにお断わりしておきます。

焼き物には、“土器”“b器”“陶器”“磁器”があります。

冒頭に述べた疑問の答えですが、土器・b器は良質な粘土・土を必要としないので
身近にある土や粘土で焼ける可能性が高いです。
ここで言う 良質な土・粘土とは

  1. 茶碗などの形が作れること。これを可塑性(かそせい)と言います
  2. 均一に乾燥し、焼いたときには収縮率が均一なこと
    均一でないとひび・割れにつながります
    鉱物“石英”が含まれているとひび・割れが少なくなります
  3. 高温で焼いても融けて形が崩れないこと。耐火度と言います
  4. 焼いたときにガラス質が出来て固まること
    “長石”や“石英”がガラス質になります

ということで、長石、長石類が風化してできた“ カオリン鉱物 ”が多く含まれているものほど良質と言われます


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カオリン(kaolin)とは、中国江西省景徳鎮産陶器の原料産地、高嶺(Kaoling)に由来し、日本では高嶺土と珍重され、世界中で似たような粘土が探され広まった為にkaolinに、焼き物の世界では“ カオリン粘土

“カオリナイト”“ディッカイト”“ナクライト”“ハロイサイト”という4種の鉱物からなっているために、鉱物学的には“カオリン鉱物”と言われる歴史があります。

この4種の鉱物の内、“カオリナイト”“ディッカイト”“ナクライト”の化学組成は同じで、二酸化珪素、酸化アルミニウム、水です。

ハロイサイトも二酸化珪素、酸化アルミニウム、水で出来ていますが、珪素やアルミニウムの結合相手としての水では無く、水そのものを含んでいます。

カオリン粘土が焼き物用に優れている理由を考察してみます。
先ず、可塑性です。
粘土と書くぐらいですから粘り気があることが重要です。
この粘り気の原因は“水”にあります。
カオリン粘土に限らず、粘土の粘り気は、それを構成する鉱物或いは微粒子同士の間に水が入り、鉱物にまとい付いている水同士が引き合うことによっています。
この引き合う力は水分子の、水素原子はプラス、酸素原子はマイナスの電荷(電気)を帯びているので、水分子同士の間に適度な力でくっ付きやすい性質によります。
(完全にくっ付いたら“氷”です)

水があっても鉱物や粒子の形が球では粘り気は出ません。
ピンポン玉同士では濡れていてもくっ付きませんが、同じ材質・体積でも平べったい直方体で、広い面同士の間に水が入ればくっ付きやすいのと同じです。
   ┃水 水┃
 鉱 ┃水 水┃ 鉱
 物 ┃水 水┃ 物
   ┃水 水┃
   ┃水 水┃
    ↑
  ここの面積が広いことが重要

カオリン粘土の場合、含まれる鉱物が、アルミニウム、珪素、水酸基(水素原子1個+酸素原子1個)によって板のようにシート状に層を作って結合して出来ているので、鉱物の結晶も板状になって、水に触れる表面積を多くしています。
粘土の場合はカオリンに限らず、板状の微粒子が多いことが粘り気の点から重要です。

次にカオリン粘土は焼くと固くなるということです。
焼き物の手順で説明すると、茶碗などの形を作り乾燥させ、窯に入れ、徐々に窯内の温度を上げ200度以内で数時間置きます。
この間に、鉱物同士の間に挟まっていた水分子(粘り気の元)が蒸発します。
技術的にはこの水抜きが重要なようです。
急激に蒸発させると水の膨張(水蒸気なって)によりひび・割れを作ります。

この後、窯内の温度を上げ、500度を超える頃からアルミニウムや珪素と結合していた水酸基が2個くっ付いて(水酸基が2個なので水素原子2個、酸素原子2個)酸素原子1個を残し、残りは水となって蒸発します。

ですが、カオリンを構成する鉱物の原形はほぼ保たれています。
土器やb器を焼く場合の温度はこの位なので、粘土に含まれていた水や有機物(動植物の遺骸など)、気孔が無くなり、収縮した分だけ強度が増したに留まります。

陶器や磁器を焼く場合は、この後900〜1500度まで窯内の温度を上げます。
800度ぐらいまで鉱物の原形が保たれますが、これ以上になると鉱物の結晶が壊れ再結晶化し始めます。

カオリン粘土の場合はアルミニウムが含まれているので、ムライト(二酸化珪素と
酸化アルミニウムからなる針状結晶)クリストバライト(高温で出来る二酸化珪素の結晶)が作られます。

一方、粘土に含まれている長石が溶けてガラス質になります。

焼き上げりのイメージとしては、金網入りのガラスという感じで、ただのガラスより強度が増しています。
金網に相当するのは、ムライトの針状結晶。
ガラスは長石と石英によって作られます。
このように、同じ焼き物と言っても、土器・b器と陶器・磁器は全く違うものなのです。

日本では白色のカオリン粘土が採れる所は限られていたので、陶器用粘土を作る方法が発達しました。
カオリン粘土の主成分は、アルミニウム、珪素なので、これと同じ成分を持つ“石(ろう石など)”を扁平な微粒子にして、長石を混ぜれば陶器用の粘土になります。
扁平な微粒子にするのは、前述したように粘り気を出すためです。

粘り気を出す為に有機物を使う方法もあります。
採掘された土或いは粘土は、水で洗われ、ゴミ、動植物の遺骸などが取り除かれ、粒子を細かくする必要があれば扁平に砕かれます。
その後、むしろなどを掛けて 1週間から1年間放置します。
このように放置することを“寝かし”と呼びます。
寝ねかしの間に粘土に付いている有機物が細菌によって分解され、細菌の遺骸、放出物などで粘土の粘り気が増すと言われます。

寝かしは科学的には曖昧な手法のようですが、陶芸の教科書では、寝かしてない粘土は使うなというほど重要視されています。
昔の中国では、動物の尿をかけて寝かせる方法が採られたこともあるようです。
(むしろは稲藁などをシート状に編んだもの)






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