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雲や霧を作る簡単な実験方法

NHKテレビ・首都圏ネットワーク(2000/08/22)の中で、「ひらいの自由研究」というちょっとしたコーナーがありました。 時季的に小中学生の自由研究を意識したものでしょう。「ひらい」といのは、気象予報士の平井信行さんです。今(2019年8月10日)、200年8月に書いたものに加筆していますが、平井さんはお元気で活躍中です。
観ていなかった人もいたと思うので、補足を加えて書いておきます。

まず、雲の出来る仕組みから、下の図のような装置を作ります。
フラスコの中に霧を作る実験装置の概要図
フラスコ内 A と、注射器内 B の空間は、ゴム管でつながっていますが、周りの空気とはつながっていません。
最初、注射器は最後まで押した状態にしておきます。注射をするなら薬を身体に入れる方向です。
フラスコ内 A には、湿った空気と線香の煙を少し入れておきます。このときのフラスコ内 A は、私たちが住んでいる地上と同じです。 私たちが住んでいる空間内の空気は湿気を含み、意識しなくても塵が舞っています
次に、注射器を赤い矢印方向に引きます。すると、フラスコ内 A の気圧は低くなり、気温が下がります。

私の補足・・・ 注射器が引かれると、注射器内の空間 B が広くなります。
最初に、フラスコ内 A と注射器内の空間 B はゴム管を通してつながっていると説明しました。
ということは、空間 A は、拡がったということですね。
どういうことになるかというと、フラスコ内の分子の運動できる所が広くなったということですから、 分子同士のぶつかり合いが減り、熱が出難くなるということです。圧力的には、フラスコ内の気圧は低くなります。( 断熱膨張) このため、外気圧によって注射器を引くには大きな力が必要になり、それでも引くことが出来ればゴム管が大気圧で潰れます。・・・補足終わり

気温が下がると、フラスコ内 A の水蒸気は水になろうとしますが、フラスコ内には線香の煙の小さな粒があるために、より簡単に水滴になり空中をただよって雲になります。空に浮かんでいませんから霧でしょうか。 
テレビの画面では、見事に雲になりました。

私の補足・・・気温が低くなると、なぜ水蒸気が水になろうとするかですが、 気温が低いと、空気中に含ませておける水蒸気量が少なくなるからです。水蒸気が水として現れた時の温度を露点といいます。
これは、お湯には砂糖はたくさん溶けるが、これを冷やすと砂糖の結晶が沈んでくるのと同じです。
冬、乾燥するのも気温が低いためです。・・・・補足終わり

番組は、自由研究として、雲の写真を撮ったり、雲の流れる方向を観察することで終わりました

ところで、テレビで放映していた装置は学校でしたら簡単ですが、家庭で個人的に実験してみようとすると大変です。 この実験で必要なのは容積が変えられる密閉容器ですから、化粧品などの液体を小瓶に移し変えるときに使う、 或いは狭い所に液体を注ぎ込むときに使う注入器の出口をゴム板などで塞いでしまえば、観察し難いですが実験は出来ます。
市販の注入器だけで雲を作る実験の説明図
もちろん、この実験に使う注入器は出来るだけ透明で大きなものがよいです
空気が存在する空間の容積を大きくしたときに温度が下がる現象の逆、 すなわち、空気を詰め込むと温度が上がる現象は自転車のタイヤに空気を入れるときに「空気入れ」が温かくなることで判ります。 空気を詰め込む(圧縮する)と温度が上がるのは気象ではフェーン現象として山越えの風によって気温上昇になります。(断熱圧縮)