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弱い雨の時に酸性雨になる理由

10年ひと昔と言いますから、2019年になった今では昔の話になりますが、 NHKテレビ・首都圏ネットワーク(2000/08/23)の中で、気象予報士の平井信行さんの「ひらいの自由研究」というちょっとしたコーナーがあり、 酸性雨を話題にしていました。当時は、酸性雨はほっとな話題だったのです。
酸性雨とは、雨が酸性になることです。簡単に言えば、雨がお酢のようにすっぱくなるということです。 雨が雲から地表に落ちる間に車や工場から出る排気ガス(酸化イオウや酸化窒素など)が、雨に溶け込んでなると言われています。

番組では、雨が酸性かどうか調べるために、紫色のアサガオの花びらと紫キャベツの葉を使っていました。
番組中の実験では、レモンを花びらやキャベツの葉にたらし、花びらなどがピンク色に変わっていました。
番組は、自由研究として、雨の降った日時と、大雨の時の雨水、弱い雨の時の雨水を調べることで終わりました。

弱い雨の時に酸性が強くなる

弱い雨というのは雨粒の直径が小さい雨のことを言っていますが、弱い雨の方がどうして酸性なのか考えてみましょう。
先ず、この問題を考えるために幾つかの条件を仮定しておきましょう。
  1. 弱い雨の雨粒の直径を1、強い雨の雨粒の直径を2とする。
  2. 雨粒は完全に丸い球体となって落ちてくる(実際の雨は上下方向に潰れた形)
  3. 弱い雨、強い雨とも、酸化硫黄や酸化窒素などの濃度が同じ大気中を同じ高さから落ちてくる
  4. 雨粒に溶け込む酸化硫黄や酸化窒素などの分子の量は雨粒の表面積の大きさに比例する
  5. 酸性度は、酸化硫黄や酸化窒素などの分子の量と雨粒を作っている水の量の比に比例する
上記のように仮定すると、酸性度は雨粒の表面積と雨粒に含まれる水の量を考えればよいことになります。
先ず、雨粒の表面積です。
完全な球体の表面積は、4×円周率×半径の二乗 ですから
弱い雨粒の表面積は、4×円周率
強い雨粒の表面積は、4×円周率×2×2
となって、弱い雨粒の表面積1に対して強い雨粒の表面積は4となります。
表面積だけ考えると、強い雨粒の方が4倍酸性になるはずです。

次に、雨粒に含まれる水の量を考えます。
球の体積は、4÷3×円周率×半径の3乗なので
弱い雨粒に含まれる水の量は、4÷3×円周率×1
強い雨粒に含まれる水の量は、4÷3×円周率×2×2×2
となって、その比は1対8

酸性度は、雨粒に含まれる酸化硫黄や酸化窒素などの分子の量と水の量に比例するから、
その比は、弱い雨 1÷1=1   強い雨 4÷8=0.5
となって、雨粒の半径が2倍大きい雨は単位体積あたりの酸化硫黄や酸化窒素などが半分になって酸性度は弱くなります。
大気汚染が問題なのですから、薄まって酸性度が弱くなれば(PHが大きくなる)よいというものではありませんが。
水が酸性かアルカリ性かを調べるには、PH測定器を使いますが高価なので、正確性には欠けると思いますが、 観賞魚の水質や農業・園芸用の土を検査する検査キットが手軽です。