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気圧計の原理

通常、気象関係で言う気圧は「大気圧」のことです。
大気圧は単位面積あたりの空気の重さと等しいものです。

空気の重さなら体重計のようなもので量れそうなものですが、気体や液体の場合は一箇所に掛かった力は全ての方向に等しく掛かるという性質があるので大気の中では量れません。
下の右図のように大気の重さが体重計に掛かったときには、同じ大きさの力が上向きにもかかって打ち消しあってしまいます
気圧計の原理 体重計では気圧が測れない理由の説明図

そこで、大気圧が掛かっている部分以外は大気から隔離してしまえばよいのです。
下の左図は一端を塞いだ細いガラス管の中に水銀をいっぱい入れて水銀の入った器の中にガラス管の開いている方を入れて立てます。
このとき、ガラス管の中に空気が入らないようにします。
すると、水銀は重いのでガラス管の中を落ちて、ガラス管の上部に隙間が空きます。
この部分は真空です。
このとき、器の中に入れられている水銀には大気圧が掛かっているので、この水銀と繋がっているガラス管の中の水銀を押し上げています。
ガラス管の上部の空間は真空で大気と繋がっていないので、大気によって押し返されることはありません。
ガラス管の中の水銀の重さだけが大気を押し返しています。
ですから、管の中の水銀柱の高さを知れば気圧が判ります。
この型の水銀柱気圧計は簡単で正確なのでよく使われます。
気圧の変わりに血圧を測るようにしたものが、病院などで使われていた水銀血圧計です。
水銀の代わりに水を使うと、ガラス管は10mぐらい必要になります。
水の重さは水銀の14分の1ぐらいしかないので、水の重さと大気圧とつり合わせるには10m近く必要なのです。
水銀柱気圧計とアネロイド気圧計の説明図
上の右図は内部を真空にした缶を使った気圧計です。
頑丈な缶の一面だけを薄い板(図の缶の上部)で作ってあります。
この缶の内部の真空にすると、大気圧は缶の外からしか掛かりませんから、薄い板は大気圧によって凹まされます。そこで缶の内部にバネを置いて、バネが元に戻ろうとする力を利用して薄い板を外側に押し返します。
バネの元に戻ろうとする力と大気圧が板を凹ませようとする力をつり合わせる訳です。
この状態で大気圧が大きくなるとバネの力に勝って板を凹ませ、図のP点が下側に動きます。
大気圧が小さくなるとバネの力が勝ってP点は上側に動きます。
大気圧の変動幅は小さいのでP点の動きは小さいですから、図の方式では梃子でP点の動きを大きくして目盛りを示させています。

電子式気圧計のしくみ

電子基板に埋め込むような電子式の気圧計では、圧力によって極板の距離が変化するコンデンサーや水晶発振子を使い、 これらのコンデンサーや水晶発振子を発振回路の周波数を決める部分に使って、気圧の変化を周波数の変化として捉えています。
電子機器に組み込まれているコンデンサー式の気圧計の説明図
例えば、小さな真空空間を作り、その2面に電極板を貼り付ければ、気圧変化によって電極板の間隔dが変化するので、 コンデンサーの容量は、電極板の面積S、電極間の誘電率εとすれば、C=εS/dとなります。
コイルとコンデンサーで作られた共振回路にトランジスターなどでエネルギーを供給して振動を続けさせる自励発振回路のコンデンサーに 気圧変化によって容量が変わる(電極間の間隔が変わる)コンデンサーを利用すると、 この発振回路の周波数fは、f=1/2π√(LC)になり、このfを周波数カウンターで測れば気圧変化が判ります。

機械的な気圧計は「アネロイド気圧計」と呼ばれ、電子式気圧計が一般に使われる以前は簡便で持ち運びが出来る気圧計でしたので 携帯用気圧計や、高所になるほど大気圧が下がるので、大気圧からその土地の海抜値を知る高度計として登山に利用されてきました。
「アネロイド」というのはギリシャ語由来のaneroid「液体では無い」という意味です。