霧の出来る条件と霧の種類

ご存知の通り、空に浮かぶ“雲”と“霧”は同一の物ですですから、「雲の中に入りたい」とお子さんにせがまれたら、霧が出来る早朝を選んで散歩させれば良いわけです。
霧と似ている物に“もや”がありますが、“もや”も霧の一部です。
直径数十マイクロメートル(注5)以下の水滴(或いは氷粒)が地表近くに浮遊し、水平方向1キロメール未満にある物しか見えなければ(視程1km)、“霧(或いは氷霧)”1キロメートル以上遠くの物が見えても霞んでいれば、“もや”と言います。

霧の中は、相対湿度(注1)は100%近く、“もや”に近くなるほど湿度は低くなります。
霧は水滴の粒で見通しが悪くなる現象ですから、水が蒸発しないで存在できるまで湿度が高いのは当然ですが、空気中に微小、且つ、水分を吸収する微粒子が浮遊していた場合は、水分が粒子の表面に膜を作り、湿度がもっと低くても水として存在できます。
この時の微小粒子を“凝結核”と言います。
“凝結核”は、人工的な大気汚染物質、火山からの噴出物質などです。

凝結核があると、水蒸気が水滴として存在しやすくなる理由ですが、凝結核は一般的に化学物質を含み、(一般的に)水溶性の化学物質は水分を吸収しやすいという性質があるからです。
身近では、食塩を空気中に放置すると湿ってしまうのがこの例です。

余談ですが、凝結核によって低い湿度で小さな水滴が出来、その水滴がぶつかり合って大きな水滴になれば雨となるので凝結核になるような物質を、湿度の高い空に撒けば人工降雨となります。
凝結核にはヨウ化銀やドライアイスが使われます。

“凝結核”の影響もありますが、霧が出来る条件は
  1. 湿った空気の温度が“露点(注2)”まで下がる
  2. 空気中に含むことが出来る水蒸気量を超えて水蒸気が供給された
  3. 前述(1)、(2)の双方
    となります。
霧の種類ですが
  • 放射霧
    良く晴れた夜間、地面の熱は赤外放射(注3)により失われます。その為、地面の温度が下がり、地表付近の空気の温度も下がり、その空気が含んでいられる水蒸気量が減ります。
    その結果、余った水蒸気が水滴となって霧になります。放射霧は、発生過程から解るように、地表付近の空気が拡散されてしまってはダメなので、良く晴れた夜間或いは明け方、且つ、風が無い事が条件です。
    また、水蒸気を多く含んだ空気は重いので盆地に溜まる傾向があり、放射霧の発生も盆地が多いです。
    この種の霧で有名なのは、広島県の三次盆地です。
  • 移流霧
    移流とは、空気の塊が水平方向に移動することを言います。
    冷たい地面或いは海面、水面の上に暖かい空気が移流してくると、暖かい空気が冷やされて水滴が出来、霧となります。
    典型的な例は、暖かい黒潮上の空気が冷たい親潮の上に移流した場合です。
  • 蒸気霧
    空気がその空気より高温の水面に接する時に発生する霧。
    北極南極地方の秋・冬に発生する海霧。
    (海水は零度近いですが、空気はもっと温度が低いので海水は相対的に高温)
    身近な例では、寒い戸外で吐いた息が白くなることや、温かい飲み物や湯船から立ち上る湯気なども蒸気霧です。
  • 前線霧 温暖前線(注4)の影響で雨が降り続き、湿度が高い状態の時に上空の暖気から比較的高温の雨が降ると、この雨が蒸発して空気中の水蒸気量が空気が保持できる量を超えて水滴となるもの。
    身近な例では、多湿の浴室で温かいシャワーを使った時に出る霧
  • 上昇霧
    空気が山肌にそって上昇すると、空気は断熱膨張(注6)するために温度が下がります。
    温度が下がると、空気が保持できる水蒸気量が減るので湿度が高かった場合は余った水蒸気が水滴となって現れます。
    この現象は、山に雲がかかっているように見えますが、山に居る人には霧です。

注1: 相対湿度
空気中の単位容積あたりに含まれる水分の量とその時点の温度に対応する空気中に含むことが出来る水分の量の比。
注2: 露点
空気の温度を下げると、その空気が含むことができる水蒸気量が減ります。
すると、水蒸気として空気中に保持されなくなった分が水として現れます。
この時の温度を露点温度と言います。
夏、冷たい飲み物を入れたコップの外側に水滴が付くのは、コップの周りの空気が冷やされ、その空気中に保持できなくなった水蒸気が水となったものです。
注3: 赤外放射
夜間、地面は赤外線としてエネルギーを放出します。
曇があると、赤外線は雲で反射されて地面に戻るために地面が失うエネルギーは少ないため、雲の無い日より地面温度は下がり難い。
注4: 温暖前線
冷たい空気の上に温かい空気が乗り上げた状態で寒気と暖気が接する地上の線
注5:マイクロメートル
100万分の1メートル
注6:断熱膨張
空気の塊がその外部と熱の出入りが無い状態で膨張すること。

*空気中に含むことが出来る水蒸気量は、その空気の温度が低いほど少なくなり、その空気の温度が高いほど多くなります。
含むことが出来る水蒸気量を超えた時、過飽和状態と言います。
過飽和状態になると、水蒸気は水として現れます。
この現象は、お湯に砂糖を溶けるだけ溶かし、そのお湯の温度が低くなると、砂糖が固体として現れるのと同じです。