⇒ 自然・科学系記事一覧

落雷が起きる理由

空気は私たちが日常使っている電気では電気を伝え難い良い絶縁物ですが、雷は電気が空気中を伝わる現象です
ところが、高電圧になると、電気は空気の中を無理やり伝わるようになります。
これを放電と呼びますが、1000ボルトあればプラスマイナスの電極間1cmを放電します。 このために、高電圧を扱っている電力会社や鉄道会社の変電所にある大きなスイッチ(電力切断機)や、 電柱などに付いているスイッチは空気より電気を伝え難い鉱油や窒素ガスで満たされた容器の中に設置されています。

話を雷に戻すと、雷の時には数十億ボルトという 想像が付かない超高電圧が雲と雲の間、雲と地表の間に掛かります。
電気はプラスはマイナスに、マイナスはプラスに引かれる性質を持っているので、 この超高電圧の電気は電気を通しやすいところを探しながら空気中を伝わります。それで、雷は直線的に落ちないで曲がることがあるのです。 絵本などに描かれる雷のようにギザギザ状になるのは誇張だと思いますが。

では、なぜ、雲と雲の間、雲と地表の間に超高電圧が掛かるのでしょうか?
まず、地表付近の湿った空気が上昇します。高い所は温度が低いので湿っている空気は含んでいる水蒸気を小さな水粒として放出します。 水蒸気は見えませんが、水粒は光を反射したり屈折させるので私たちが雲として見ています。
小さな水粒は周囲の水粒とくっついて大きな水粒になりますが、大きくなると重くなるので上昇している空気に乗れずに下に落ちます。
下は上より温かいので大きな水粒から小さな水粒や水蒸気となりますが、軽くなるので再び上昇気流に乗って上に上がります。 そして、再び上空の冷たい空気に冷やされて水粒になります。
背の高い雲の中で氷粒や雨粒が上昇下降を繰り返すメカニズムの説明図
上記の繰り返しが、雨を降らせない雲の中で起こっていますが、次から次に地表付近の空気が上昇すると、 上昇した空気はどんどん高い所まで上がって行くことになり、雲は高い所まで伸びていきます。 これを私たちは雷雲とか入道雲と呼んでいます。

水粒が激しく上昇下降を繰り返していると、水粒の表面にあるマイナスの電荷(電気)が雲の下層に溜まっていきます。
というのは、酸素原子1個と水素原子2個で作られている水分子の水素原子がマイナスの電荷を持っているからで(電気双極子)、大きな水粒が小さくなるときにマイナスの電荷を離すと考えられています。
雲の下層がマイナスの電気を持つと、下層のマイナスの電気に引かれてプラスの電気が雲の上層に集まってきます(静電誘導)。 雲の上層がプラス、下層がマイナスなので、上層と下層の間で放電が起きます。これが雲の中や雲と雲の間で起こる雷です。
雲と大地の帯電を説明する図
雲の下層がマイナスの電気を持つようになると、雲のマイナスの電気に引かれてプラスの電気が地表に集まります。
すると、地表に集まったプラスの電気目掛けて雲の下層にあるマイナスの電気(電子)が地表に引かれて放電します。これが落雷です。

話が戻りますが、地表付近の湿った空気が上昇する原因は、真夏のときのように、太陽によって地面が熱せられてその熱が地表付近の空気を温めるもの。
また、地表付近の空気が温められるのとは逆に、上空にマイナス数十度という寒気が入り込んで、相対的に地表付近の空気の温度が高くなるものがあります。
後者は、前線通過時によく発生します。

ゴロゴロという雷鳴は、電気(電子)が空気中を伝わるときに、その周囲の空気を一瞬に超高温に熱し、その結果、一瞬で膨張するために起こります。
音は空気の分子が近くの空気の分子を動かすことによって(圧力を加える)伝わるものですから、一瞬の空気の膨張がその周囲の膨張していない空気を圧し、圧された空気がまたその周囲の空気を圧し、の繰り返しが音になります。
そして、大きな音は、電気が空気の絶縁を破って伝わるところで発生し、地面や山、雲、大きな建物などにぶつかって反射、を繰り返すために山彦のようになり、ゴロゴロと聞こえる訳です。